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《市民病院医療事故多発》「膿出し切る必要」現役医師が提言

2024年12月21日

 「赤穂市民病院に関する記事を読むたび、心が痛い」と語るのは、2019年4月から2020年3月まで赤穂市民病院に病理医として勤務した榎木英介医師(53)だ。


「膿を出し切らないと赤穂市民病院の先はない」と警告する榎木英介医師

「膿を出し切らないと赤穂市民病院の先はない」と警告する榎木英介医師


 一般社団法人全国医師連盟代表で『医者ムラの真実』『フリーランス病理医はつらいよ』などの著書があり、現在も非常勤で週1回、赤穂市民病院で働く同氏が赤穂民報のインタビュー取材に応じた。
 
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組織守ろうとして事態悪化

 赤穂市民病院の脳神経外科で多発した医療事故は、もちろん起こした医師にも問題があるのでしょうが、最初の事故が発生したときにきちんと調査が行われていれば、次の事故は防げた可能性がある。それが防げなかったのが非常に大きな問題だと思っています。

 赤穂民報の報道によると、医療事故が起こってからの対応がむちゃくちゃですよね。ちゃんと調査をしていないとか、隠蔽しようとしていたとか。組織を守ろうとしたことが、事態をより悪化させているように思います。

 脳神経外科の医療事故に関わったとされる医師が着任したのが2019年7月なので、私が常勤医として勤務していた時期と重なっていましたが、たまに病理診断の依頼を受けるときに顔を合わせるくらいで、あまり会話したことはありません。医療事故のことも報道されるまで知りませんでしたが、職員同士の雑談の中で「手術が下手らしい」「臨床工学技士がボイコットしたらしい」という噂は聞きました。

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夜間急患は帰さず入院

 赤穂市民病院には2009年からも2年間勤務したことがありました。その当時は赤字もそこまで深刻ではなかったように記憶しています。医師同士のコミュニケーションや連携もうまくとれていて、職場の雰囲気も良好だった印象があります。だからもう一度勤務したいと思い、異動したのですが2019年に再び着任してみると、経営改善ということで医療コンサルが入っていて、とにかく患者を集めろ、病院の存続が第一だ、と。

 例えば、各診療科の科長が集まる会議があるのですが、夜間に急患で来た患者さんについては、とりあえず入院を勧めましょう、帰してはいけません、みたいな呼び掛けがありました。夜間の急患に入院を勧めるというのは経過観察などで本当に必要な場合もあります。それは赤穂市民病院に限ったことではないかも知れません。しかし、病院を守るために「売り上げ」をアップしなければならない、という圧力は強く、10年前とは同じ病院とは思えないくらいギスギスした雰囲気に変わっていました。

 こういう病院は危ない、勤められないと思い、抗議の意味もこめて一年で退職しましたが、その予感は悪い意味で当たってしまいました。ただ、全国的な病理医不足もあり、病理診断の業務のすべてを別の病理医に引き継ぐことができず、今も非常勤で週1日勤務しています。

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医師の業績評価 ボーナスに反映

 さらに私がショックを受けたのは医師の業績評価制度です。それぞれの医師が担当した診察や手術などがどれだけ病院の収益につながったかを算出して前年度と比較し、診療実績の高い医師のボーナスを増やすというものなんですが、私が担当する病理診断(診療科の医師が患者から採取した組織や細胞から病気の進行程度などを診断するほか、亡くなった患者の死因や治療効果などを検証して今後の医療に生かすための診断)は他の診療科から持ち込まれる検体を診断するのが仕事で、自分で仕事を増やしたり減らしたりできないんですね。

 評価は「A」から「F」まで6段階あり、私は最低評価のFで、しかも偏差値も記載されていて「44」でした。成果を報酬に反映する制度は以前に務めていた病院でもありましたが、評価は3段階でした。6段階まで細分化して、なおかつ偏差値までつけるというのは聞いたことがありません。病理医にまで成果を求めるのは、医療安全とか検証というものを軽視しているあらわれではないかと感じました。

 この業績評価は、赤穂市民病院が成果主義に傾倒し始めたことを示しており、こうした前のめりの姿勢が、医療事故への対応のまずさにつながっているのではないかとも思います。(※業績評価制度は2016年度に導入。病院は「22年度以降は点数化による評価は実施していない」としている)

 常勤医を辞め、非常勤医になってからも、病院の「売り上げ」に貢献する手術のスケジュールの変更により、来院の曜日を一方的に変更されたり、本来は病院として対処しなければならないことを非常勤である私に押し付けるようなことがありました。こうした経験から、一連の医療事故を教訓に、果たして赤穂市民病院が医療安全体制を見直し、より安全な病院になったのか、疑問を抱かざるを得ません。

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安全への努力と被害者へ補償を

 一連の医療事故を起こした医師は、病院のガバナンスが機能しているかどうかを表す「リトマス試験紙」だったように感じています。リピーター医師(医療事故を繰り返す医師)を採用するかしないか、医療事故を起こさせない体制が整っているか、事故が起きてしまったときに適切に対処できるか、などです。

 日本の医療の体制が背景にあるので、全国に赤穂市民病院のような病院は多いでしょう。しかし、問題が明らかになった以上、真摯に向き合い病院の体制を改善していく必要があります。

 赤穂市民病院には、「医療事故を起こした医師のせいで巻き込まれた」という被害者意識が強く、同じような事故を今後起こさないためにどうすればよいかという教訓がまったく得られていない可能性があります。医療安全の理解不足や認識の不一致などを問題視した検証委員会の指摘を真摯に受け止めているのだろうかと思います。「リピーター医師のせい」で止まっているなら、これからも医療事故は減らないでしょう。今からでも医療安全の課題を洗い出し、より安全な病院を作る努力をすべきです。また、被害に遭われた患者さんへの補償をしっかりすべきです。

 約400人ものスタッフが勤務する赤穂市民病院は、地元にとって重要な雇用先の一つです。しかし、「雇用を守る=組織を守る」ことが最優先になってしまってはよくありません。もし、このまま医療安全より組織の維持が第一の姿勢が変わらないのであれば、解体的立て直しが避けられないと言わざるを得ません。膿を出し切らないと先はないのではないでしょうか。

 ▽全国医師連盟=2008年に発足した勤務医による団体。「患者と医療従事者の権利の確立と適正な診療環境を実現」などを理念に医療のあり方を提言する活動に取り組んでいる。(写真は「膿を出し切らないと赤穂市民病院の先はない」と語る榎木英介医師)


社会 ]

掲載紙面(PDF):

2024年12月21日号(2580号)1面 (6,885,586byte)


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コメント

コンサルが主導して、「成果主義に傾倒」していない「病院」がどこにあるのでしょうか。

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投稿:病院も経営 2024年12月29日


ボーナスの査定の話いらんわ。自分が正当な評価受けてないからに聞こえるわ

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投稿:赤穂市民 2024年12月28日


医療事故の記者会見の時、赤穂市長の「黒字になる見込みです!」みたいな挨拶から始まったのが凄い違和感あったの思い出しました。医療事故の謝罪より先にそれ言う必要あるんか?みたいな。今回の記事読んで、あーなるほどなーって思いました。こんな市長や幹部の下で働く医療者もかわいそうだし、被害に遭った患者が救われてないのも酷い。もしこれが自分の家族だったら怒り狂うと思います。

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投稿:一般人 2024年12月22日


物事を語らないことで風化させようとする集団の論理(村社会的な圧力)がある一方で、それに負けずに、実名を出して取材に応じる榎木医師のような医療者がいらっしゃることに感謝します。

過去の記事では、2018年度と2019年度の比較で、脳外科の外来患者数に大きな変化は見られないのに、入院患者数が166人→241人に、手術件数も43件→100件に爆増しており、2021年に手術禁止命令を受けた医師が退職すると入院・手術数ともに激減しているとあります。医療事故が多発したのは2019年度です。

榎木医師が告白された、厳格な成果主義の導入の部分は、医療事故事件の背景を解き明かす重要なお話だと思います。

《市民病院医療事故多発》科長が治療実績の不正付け替え提案
https://www.ako-minpo.jp/news/18386.html

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投稿:勇気ある医療者に感謝 2024年12月21日


この医師の仰る通りです。

現在も赤穂市民病院は本気で病院の改善を図るなど、患者と真摯に向き合っていないのは明らか。

この医師を批判しているのは「膿」である非常識な病院関係者だけでしょう。今もなお患者と真摯に向き合わず、自分たちの保身だけを考え現実を見ようともせず、こんなところで正義感のある医師を誹謗中傷しているのですから(嘲笑)

やはり今のこの膿を出し切らないと先はないのではないでしょうか。

54 21

投稿:庶民 2024年12月21日


この医者は何様のつもりなのだろうか。

記事の冒頭に「赤穂市民病院の記事が出るたびに心が痛い」とあるが、この記事が掲載される事で、現在本気で病院の改善を図り、患者と真摯に向き合っている現役職員がどれほど心を痛める事になるのか、想像がつかないのだろうか。そして今現在も市民病院を頼って通院している患者に不安を与えると思わないのだろうか。

確かに赤穂市民病院は過去に該当医師だけでなく、幹部や医療安全に関わった者たちを中心に大きな過ちを犯したと思う。それは法に則って裁きを受け、病院として厳正に受け止めて改善していくべきだと思う。患者に対する補償も同様である。

ただし、市民病院を憂いているふりをしながら批判を続けているかのように感じてしまう、この医者の言葉は全く信用がならない(流石に違うと信じたいが、まるで自分が過去に「F」評価を突きつけられた腹いせなのかとさえ疑ってしまう)。
何なら自分も非常勤とは言え今も勤務している身なのだから、少しでも改善策を病院に提示すべきではないのか。

記事の最後に「膿は出し切らないと先はない」とあるので、市民病院はさっさとこのような非常識な医者を「膿」として切り捨て、常識ある病理医を雇う必要があるのだと思う。それだけでも市民病院に通う人たちにとっては安心材料に感じるだろう。

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投稿:赤穂よくなれ 2024年12月21日


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