2011年04月29日
身体障害者野球の全国大会へ出場する枝川哲也さん。車いすに乗ったピッチャーは現役選手では国内唯一だ
「ドリーム・リーグ」の愛称を持つ日本身体障害者野球連盟の「第19回選抜全国大会」(5月14・15日、ほっともっとフィールド神戸)に南野中の会社員、枝川哲也さん(28)=新日鉄広畑=が出場する。二分脊椎症で両足に障害がある枝川さんは車いすを使ってプレーし、ポジションはピッチャー。関係者によると、車いすに乗った投手は「現役選手では全国でただ一人」で、彼の存在が多くの人に勇気と感動を与えている。
西武などで活躍した清原和博選手のファンで、「自分もあんな風にプレーしてみたい」と子どものころから憧れた枝川さん。関西福祉大1年のとき、同級生らと野球サークルを立ち上げ、夢だった白球を握った。その同じ年に龍野の障害者野球チーム「アルカディア」へ入団。月2回の練習が一番の楽しみになった。
陸上のフライングディスク競技で通算3度の全国優勝を誇る強肩を活かそうと、投手に抜てき。本人は「球が遅いのでコーナーワークに頼るしかない」と話すが、ストレートは球速100キロを超える。2種類のカーブを巧みに組み合わせ、打者に的を絞らせないピッチングが持ち味だ。
枝川さん自身は野球での全国大会出場は4度目。2年前の大会では念願の初勝利を挙げたものの、打線の援護による白星で「納得のいくマウンドではなかった」。大会後、自宅にウエイトトレーニングのマシンを購入。実業団で活躍する会社の野球部、柔道部に練習方法のアドバイスを求め、1日1時間の筋トレを欠かさず実践してきた。手首、胸の筋力強化により試合終盤でも球威が落ちなくなり、昨年9月の西近畿大会は全国大会出場の権利がかかった試合で完投勝ちを収めた。
「今年こそ自分の役目を果たして勝利したい」と語る枝川さんにとって、もう一つの大きな夢は4年に一度開かれる世界大会(次回は平成26年予定)に出場すること。毎年の全国大会がその選考材料となる。
「JAPAN」のユニフォームを目指す車いすのエースは「グラウンドでプレーできることが何よりの喜び。夢をあきらめることなく、全力で投げる」と大会を心待ちにしている。
同連盟には東北から九州まで全国31チームが加盟。約800人の選手が登録している。打者代走の許可、盗塁・バントの禁止以外は公認野球規則とほぼ同じルールで競技する。世界大会は平成18年に始まり、「不死鳥JAPAN」の愛称で呼ばれる日本が2連覇中。
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2011年4月29日(1942号)1面 (15,179,884byte)
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