2012年04月25日
刊行された生島の植生調査報告書
つる性植物の繁茂によって壊滅の恐れがあった坂越の国天然記念物「生島」の貴重な照葉樹林が、市民ボランティアの植生管理によって再生傾向にあることが兵庫県立大学自然・環境科学研究所の服部保教授らの調査で明らかになり、このほど報告書にまとめられた。
坂越湾に浮かぶ無人島の生島(面積8・1ヘクタール)は古来より秦河勝を祭神とする大避神社の禁足地だったため、スダジイ、アラカシといった高木からベニシダなどの草本類まで約190樹種あると言われる多様な植生が守られてきた。大正13年に国天然記念物、昭和32年には国立公園特別保護区となった。
しかし、昭和40年代半ば以降、ムベが急激に繁茂。平成12年ごろには、つるに巻き付かれた樹木の枯死が確認された。服部教授ら専門家が「放置は樹林を壊滅させる」と警鐘を鳴らしたのを受け、14年に市民ボランティア約250人が島へ渡り、約1万5000本のムベを伐採。昨年11月に行った調査で、ムベの繁茂は完全に停止し、植生が復活していることがわかった。
発刊された「生島の植生調査報告−植生管理10年後の現状−」(A4判、カラー16ページ)は、島の南西部に設定した永久調査区のうち5カ所(1区画100平方メートル)について、除伐作業の実施前と昨年調査時との植生変化を比較。林内の光環境が大きく改善されて種の多様性も増加したことを挙げ、「市民参加によるムベの除去が生島の照葉樹林を保全する上で正しい方法と確認できた」と結論。再繁茂を防ぐために、調査の定期継続と範囲拡大を提案している。
報告書は一部300円。市教委と公立文化施設で限定200部を販売している。
[ 文化・歴史 ]
掲載紙面(PDF):
2012年4月28日(1989号)3面 (7,216,921byte)
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