2014年03月21日
自分の店で念願の歌声喫茶を開くことになった木戸冨久子さん=左から3人目
歌で楽しく交流できる場を提供しようと、木津にオープンした喫茶店が月1回定例の「歌声喫茶」を今月から始める。子どものころから歌が好きで、「歌声喫茶を開くことが長年の夢だった」という店主の木戸冨久子さん(71)=北野中=は「歌を通して、人と人の輪がどんどん広がれば」と、ようやくかなった念願に幸せを感じている。
歌声喫茶はアコーディオンやピアノの伴奏で客同士が合唱を楽しむ形態で昭和30年代以降、全国的に流行した。高校で音楽部だった木戸さんは、社会人時代は休日に友達を誘って神戸や大阪の歌声喫茶へ出掛けるのが何よりの楽しみだったという。
その後、カラオケブームの到来と入れ替わるように歌声喫茶は姿を消した。木戸さんも結婚後は土木会社を経営する夫を支えながら3人の息子を育てる毎日。歌を楽しむ時間的ゆとりはなかったが、「いつかは自分で歌声喫茶を開きたい」との思いは持ち続けていた。
夢が形になったのは昨年8月。成人した息子たちに経営の大半を任せられるようになり、会社事務所のそばに2階建て店舗をオープンした。ところが、その矢先に夫の孝夫さんががんで入院。看病に専念するため、わずか2日営業しただけで一旦店を閉じた。
およそ1カ月後、孝夫さんは帰らぬ人となった。失意のあまり、店を再開する意欲を持てないまま過ごしていた1月のある日、遺品を整理していると一枚のメモが見つかった。そこには、歌声喫茶の開店を後押しするメッセージ。孝夫さんは生前、店のことについて何も口出ししなかったが、「主人も応援してくれていたんだ」(木戸さん)と元気付けられた。
店名は「木津なカフェPARADA(パラダ)」。歩いてすぐに路線バスの停留所(木津宮前)があることから、スペイン語で「バス停」を意味する名前とし、地名と「絆」を掛け合わせた言葉を頭につけた。「乗り合いバスのように、知らない人同士でも隣に座って親しくなれる店でありたい」との願いを込めた。
普段の営業時間は午前7時〜11時半(月曜、第2・4日曜休み)だが、毎月最終火曜日のみ約20人入れる2階で午後1時から会費1000円(飲み物、ケーキ付き)の歌声喫茶を開く。友人のピアノ講師、末井冴美さん(63)=北野中=が電子ピアノで生伴奏。リクエストにも応じながら、みんなで唱歌や懐メロを合唱する。
初回は3月25日。木戸さんは「一番楽しみにしているのは私自身。思う存分、歌いたい」と心待ちにしている。Tel48・7115。
[ 街ネタ ]
掲載紙面(PDF):
2014年3月21日(2080号)1面 (8,903,086byte)
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