2014年04月05日
赤穂緞通の作家を目指して制作に励む阪上梨恵さん
夢を追いかけるうちに、たどり着いた赤穂の地。風に乗って地上に降り立った冠毛のように、花を咲かせようと頑張る人たちを紹介します。
第1回は赤穂緞通の作家を目指して神戸市から移り住んだ古浜町の阪上梨恵さん(30)です。
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初めて赤穂緞通を見たのは一昨年の12月です。たまたま御崎温泉に来たときにガイドブックに載ってた雑貨屋さんをのぞいたら、緞通がどんっと掛かってて。網利剣っていう柄なんですけど、「こんなきれいな色の絨毯が兵庫県で作られてるのか」と、すごくびっくりしました。
実はそのとき、前の仕事を退職して2カ月くらい経ってたのかな、無職だったんです。その先、何をするかも決まっていない状態で。ただ、ものを作るのが好きだったので、何かものづくりを生業にできたら幸せだなと、やんわりと思いながらぶらぶらしてた時期でした。だから、お店の人から織り手が少ない状態って聞いて、「それ、やりたい」って、すぐに結びついたんだと思います。
加里屋工房というところで機織り体験が出来ると聞いて、すぐに予約して、年明けに体験させてもらったんです。通常は一日のコースらしいんですけど、私、作業がすごく遅くて、一日では終わりませんでした。お手伝いして一日で終わらせることもできますよって言われたんですけど、「自分でやります。申し訳ないですけど明日も来ていいですか」と、2日間体験させてもらいました。
その次の週も同じ体験を受講しました。何かとっかかりというか、つながりを作りたい、ほんまにやりたいんですっていう思いを伝えたい、という気持ちでした。でも、残念ながら当面は講習生受け入れの予定がないことがわかって。年末から年明けにかけて、赤穂で緞通をすることばかり考えて、体験に行ってたので、がっかりして家に帰りました。
あきらめられずに、次の週にもう一度、赤穂に行ったんです。自分が惹かれた赤穂緞通を両親にも見せたいと思って、最初に赤穂緞通と出会った御崎の雑貨店へ一緒に。そのとき、たまたまオーナーがいらっしゃって、それまでの経緯を話しました。ほんまにやりたいんやったら、個人的な弟子入りという道もあるから先輩を紹介するって言われたんですよ。それからはオーナーが色々な人を紹介してくれて、2月の初めには、師匠となる根来(節子)さんに面会させてもらいました。
「緞通やりたいんです」とお願いしました。とにかくやりたいんですと。赤穂に引っ越してくることもできるし、家庭とか所帯とか持ってる訳じゃないんで、単身赤穂に来て専念できますと。すると、「やってみたらいいじゃない」と、すぐに受け入れの話を決めてくださって。そのときは本当にうれしかった。自分だけが行動しても物事が進まないけど、人との出会いで動いていくことって多いじゃないですか。その流れが来てる、もうこれはやるしかない、とすごくワクワクしました。
その日のうちに、今の工房になっている新田の民家を見せていただきました。何年も人が住んでいなかったので1階の床が全部抜けてて、土壁もぼろぼろだったんですけど、お家とかリノベーションするのが好きだったので、ここがいいです、自分で改装して工房にしますって。大学時代に演劇サークルで大道具やっていたので、大工道具も使えるし、ペンキ塗りなんかも得意です。父も手伝ってくれて、3月にはこちらに引っ越しました。(つづく)
[ 瀬戸の風に誘われて ]
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掲載紙面(PDF):
2014年4月5日(2082号)3面 (9,189,908byte)
コメント
神戸は、おしゃれで、なんでも新しい物を取り込む先進的な街。赤穂も先進的にしてほしいです。頑張ってください。
投稿:先進的な街 2014年04月05日
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