2014年08月02日
自ら志願して始まった木曜日のマフィン作り。いつもはにこやかな井上さんも、このときばかりは真剣だ
夢を追いかけるうちにたどり着いた赤穂の地。風に乗って地上に降り立った冠毛のように、花を咲かせようと頑張る人たちを紹介します。第5回はパン職人になりたいと神戸市西区から移り住み、憧れのベーカリーで働いている「あこうぱん」の従業員、井上美智子さん(22)です。
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パンが大好物なんです。どうやったら、こんなにおいしいパンが作れるんだろうって中学1年のころに思いました。自分で作ってみたいなって。高校になってからは先生や友達に「私はパン屋になりたい」って、ずっと言い続けてました。
大学3年で卒業後の進路を決める段階になって、両親にも「パン屋になりたい」って伝えました。「そんなんやったら、今すぐ大学やめろ」「パン屋になれるんやったら、大学辞める」とか言い合いになって。最終的には「卒業だけはちゃんとしなさい」ということで、無理矢理納得してもらいました。
パンの製造が一から出来て、正社員採用があるところを探しました。気になるお店があれば、実際にそこのパンを買って食べてみて。たまたま、小学時代からのとても仲の良い友達が関西福祉大学に通ってて、赤穂のパン屋さんをネットで調べたんです。それで出てきたのが「あこうぱん」だったんです。
今年の1月に電車に乗って来ました。お店に入った瞬間に、「あーっ! ここだっ!」。見たこともないようなおもしろいパンがたくさん並んでいて、お店の雰囲気も良くて。一目ぼれ。しかも、ハローワークに行ったら、求人が出ていると。「よしっ!」と思いました。
でも、採用人数は1名で、すでに決まってしまっていたんです。なのに、ハローワークの方が「一応、聞いてみるだけ聞いてみたげよか」と確認していただいて。面接してもらえることになったんです。「何が何でも、ここを通ってみせる」と気合いを入れました。
面接日は2月の寒い日でした。黒のスーツを着て、履歴書を持って。志望動機と自己PR、部活やアルバイトのこととかを話しました。鈴木社長からは「うちに入って、あなたは何を頑張ってくれますか」ということを聴かれました。
いやー、もうぐだぐだでしたね。数日前に、面接を受けている夢を見たんですが、なんか訳のわからんことばかり繰り返し言ってて。こんな面接だけにはしたらあかん、と思ってたのに、気付いたら夢と同じような展開になってしまってて。その後、パンの生地を丸める実技テストもあったんですが、あせればあせるほど丸まらないんです。あきらめたくなくて、「もう一回させてください!」って何度もお願いして、1時間くらい粘ったんですけど、正直、「あかんかな」と思いました。
帰りは駅まで社長が車で送ってくれました。車の中で、「ホントにあこうぱんに入りたいんです。ここがいいんです」と食い下がりました。そのときの勢いは自分自身でもすごかったと思います。採用の場合は翌日昼ごろに電話連絡、不採用なら履歴書を後日郵便で返送、と言われたので、次の日はずっと携帯を見つめてました。(つづく)
[ 瀬戸の風に誘われて ]
掲載紙面(PDF):
2014年8月2日(2098号)3面 (9,403,043byte)
コメント
体に気をつけて、おいしいパン作ってね。
投稿:おいしいパン 2014年08月03日
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