2015年04月18日
【子どもを信じて、言い分をきくことから】
小さい女の子が、めんどりとひよこが寝ているそのまわりをはねまわり、父親に叱られました。
次の夜、女の子は、また、にわとり小屋に入り、にわとりを追い回しました。そこへ父親が来て、昨夜よりひどく女の子を叱りつけました。女の子の目には、大粒の涙が光っていました。
「おまえはいったい何をしようとしているんだ」と父親に聞かれた女の子は、泣きながらこう答えました。
「めんどりにキスをして、昨日のおわびをしようと思ったの」
これはアンデルセンの「絵のない絵本」という本に書かれているお話です。
叱りつける前に「何をしようとしているの」と聞いてやれば、もっとよかったのにと思われるでしょう。でも、その場になったらなかなかできないものです。不用意な一言が、子どもを傷つけてしまいます。
その逆に、ことばによって癒やされるし、元気を与えられることもあるのです。やさしい言葉はやさしい心から、きれいな言葉はきれいな心から出るものですが、やさしい言葉をつかうことがやさしい心を育てるし、きれいな言葉づかいがきれいな心を育てるものでもあるのです。穏やかな言葉づかいもそうです。
まず、何があってもわが子はいい子と信じることが出発点です。そして子どもの言い分や思いを聞いて、受け止めてやる。いい子だと信じれば、その期待に添うように育っていきます。
その際、うなずきながら聞いてやること。私は、教室では「なるほど」とうなづいて受け止めていました。「なるほど、そう思ったの」これは受け止めたというサインです。その後、「でもね、だったらこれはどうなるのかな」と切り返すこともあります。
子どもが嘘をつく場合は、つかせた大人の側にも責任があるものです。「正直に言ったら許してあげるから」の口車に乗って、正直に言って怒られた子は、それからは大人を信用しなくなります。信じること、信じられること、人間関係の原点です。(関西福祉大学・学長)
[ かしこい子育て ]
掲載紙面(PDF):
2015年4月18日(2132号)3面 (12,799,477byte)
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