災害から命守る「安全ゾーン」「近助」
2019年07月13日
市民福祉講座で講演した山村武彦氏
講演要旨は次のとおり。
* * *
日本では5〜6年に一度は大規模な地震に見舞われている。その度に大騒ぎし、その度に忘れている。
南海トラフ巨大地震が30年以内に発生する確率は70〜80%と言われている。「30年以内」というのは「30年後」ではなく、今夜起こるかも知れないということ。もし、天気予報で雨が降る確率が7〜8割と言われたら、みんな傘を持つはず。なのに、地震への備えをしている人は少ない。
それは、自分に都合のよいように考える「正常化バイアス」がかかっているからだ。正常化バイアスがかかると、緊急事態なのに体が固まってしまう「凍り付き症候群」になる。そういう人は避難のスイッチが入らないため、命を落とすことになる。
昨夏に豪雨災害があった岡山県真備町では死者の8割は自力で避難できない要支援者だった。要支援者の名簿を作成しただけではだめ。誰がどのように助けるか、個別計画を作らないと意味がない。先日は鹿児島市で市内全域に避難指示が出たが、例えばマンションの4階以上だとそこにとどまったほうが安全な場合もある。実際の危険度は「地域」ではなく、「家」ごとに異なる。避難情報は危険な場所を特定して出されるべきだ。
防災訓練では、避難、消火、救助など災害が起きた後の対処についての訓練が多い。命を守る、火を出さない、閉じ込められないといった「災害予防訓練」が大事だ。形式的な訓練ではなく、命を守るための訓練をしてほしい。
家庭での防災の取り組みも形式的になっていないか。例えば、家具や冷蔵庫の転倒を防止する突っ張り棒は天井が弱いとめり込んでしまって機能しない。当て板をつけて取り付けてこそ実践的な防災になる。
在宅避難生活訓練も体験してほしい。電気、ガス、水道、電話を止めて一日暮らしてみる。そうすれば、必要な対策や準備が見えてくる。日常備蓄は少なくとも1週間分は用意しておきたい。私は水と食料は約3か月分を備蓄している。
家庭で「安全ゾーン」を決め、小さな揺れを感じたり、緊急地震速報が出たら、そこへ待避する習慣をつけてほしい。大きな揺れが来てからでは逃げられない。「安全ゾーン」には、ガラスや転倒落下物がなく閉じ込められる恐れのない場所を選ぶ。昔はトイレは太い柱が四方にあって安全だったが、今のユニットタイプはそうとも言えない。玄関を安全ゾーンにして、夜寝るときも家族全員の靴を用意しておくというのが、地震列島に住む作法だ。
阪神淡路大震災では犠牲者の92%は地震発生から14分以内に亡くなったとのデータがある。助けられるのは近くにいる人。役所や消防も被災する。自分の命は自分で守り、さらに自分の命を守れた元気な人は近所の人を助けてほしい。私は「自助」「共助」の他に近所同士で助け合う「近助」を提唱している。向こう三軒両隣で助け合う「防災隣組」を広めたい。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年7月20日号(2333号) 3面 (9,976,627byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 社会 ]
給水車も支援、郡山市へ派遣 赤穂高全日制は254人受験 [ 社会 ] 2011年03月14日第2次緊援隊が出発、宮城県山元町へ 赤穂市の災害警戒体制を解除 [ 社会 ] 2011年03月12日笠間市へ義士友好都市から支援物資 災害派遣医療チームは岩手方面へ 笠間市は「死者、火災なし」2000人が避難 [ 社会 ] 2011年03月12日“一時退所”で医療費負担を付替え [ 社会 ] 2011年03月12日赤穂市の緊急消防援助隊は郡山市へ 笠間市は震度6強、ほぼ全域で停電 [ 社会 ] 2011年03月11日市連合婦人会が今年度で解散へ [ 社会 ] 2011年03月10日2年分まとめて「千種川の生態」 恵比寿大黒舞クラブに村尾育英会賞 インフルエンザ臨時休業(3月8日決定分) [ 社会 ] 2011年03月08日ロッキングハムから公式訪問団 [ 社会 ] 2011年03月07日
コメントを書く