関福大リレーコラム・日本の良さ
2020年04月04日
日本の良さって何でしょうか。こう尋ねられた私たち日本人は「それは四季があることです」と答えそうになります。
しかし四季は赤道近くや北極圏、南極圏以外なら世界中のほぼどこにでもあります。四季をモチーフとする音楽、絵画、文学、映画なども世界中には数多くあります。ヴィヴァルディ、ミレー、そしてムーミン……。
ただ日本の四季は、夏の間は平均してずっと暑い日が続き、冬は寒い日が続くという特徴を持っています。南北に長い日本列島は、温帯湿潤気候か冷帯湿潤気候に属しています。ですから、感じやすい区切りがあり、四季それぞれの特徴が際立っています。
さらに四季を感じる日本人のセンサーは「春夏秋冬」の四つだけではありません。一年を二十四等分して約十五日ごとに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」、より細分化された「七十二候(しちじゅうにこう)」というフィルターを持っています。
だから細やかな気候の影響を日本人は素朴に受け入れ堪能することができます。日本では四季の移ろいと日々の暮らしや暮らし方、ものの見方や考え方とが強く結びついています。これが日本の良さ、強みです。
NHKのユニークなクイズ番組「チコちゃんに叱られる!」で、「風鈴の音を聞くと涼しく感じるのはなぜ?」という問題が出されたことがあります。日本人は風鈴の音を言語脳で受け止めるという解説でした。風鈴だけではありません。虫の「音」は機械音や雑音のような物理音ではなく「声」として受け取ります。日本の良さのなせるワザです。
四季の移ろいは、単なる季節の変化にとどまることなく、誰しもが経験するであろう人生の喜怒哀楽によってふとわき上がるしみじみとした情趣と結びつきます。「あわれ」は「かわいそうに思う気持ち」にとどまらず「もののあわれ」として日本のDNAになっています。
我が国や郷土は四季の移ろいと共生できるものの見方や感じ方を日本の良さとして育んできました。学校教育は「伝統や文化に関する教育」として日本の良さを伝えます。(教育学部児童教育学科教授・伊崎一夫)
掲載紙面(PDF):
2020年4月4日号(2366号) 2面 (7,259,384byte)
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しかし四季は赤道近くや北極圏、南極圏以外なら世界中のほぼどこにでもあります。四季をモチーフとする音楽、絵画、文学、映画なども世界中には数多くあります。ヴィヴァルディ、ミレー、そしてムーミン……。
ただ日本の四季は、夏の間は平均してずっと暑い日が続き、冬は寒い日が続くという特徴を持っています。南北に長い日本列島は、温帯湿潤気候か冷帯湿潤気候に属しています。ですから、感じやすい区切りがあり、四季それぞれの特徴が際立っています。
さらに四季を感じる日本人のセンサーは「春夏秋冬」の四つだけではありません。一年を二十四等分して約十五日ごとに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」、より細分化された「七十二候(しちじゅうにこう)」というフィルターを持っています。
だから細やかな気候の影響を日本人は素朴に受け入れ堪能することができます。日本では四季の移ろいと日々の暮らしや暮らし方、ものの見方や考え方とが強く結びついています。これが日本の良さ、強みです。
NHKのユニークなクイズ番組「チコちゃんに叱られる!」で、「風鈴の音を聞くと涼しく感じるのはなぜ?」という問題が出されたことがあります。日本人は風鈴の音を言語脳で受け止めるという解説でした。風鈴だけではありません。虫の「音」は機械音や雑音のような物理音ではなく「声」として受け取ります。日本の良さのなせるワザです。
四季の移ろいは、単なる季節の変化にとどまることなく、誰しもが経験するであろう人生の喜怒哀楽によってふとわき上がるしみじみとした情趣と結びつきます。「あわれ」は「かわいそうに思う気持ち」にとどまらず「もののあわれ」として日本のDNAになっています。
我が国や郷土は四季の移ろいと共生できるものの見方や感じ方を日本の良さとして育んできました。学校教育は「伝統や文化に関する教育」として日本の良さを伝えます。(教育学部児童教育学科教授・伊崎一夫)
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