「変更」から一転「存続」不可解な協議過程
2022年02月05日
外部有識者を交えた4回の会議を経て出された結論は意外にも「公立病院としての存続」を提言するものだった。どのような話し合いが行われたのか。委員会の議事録をたどった。
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10億円をめぐる「赤字」と「黒字」
コロナ第5波が拡大する中、昨年8月23日にオンライン会議で行われた第1回委員会。牟礼正稔市長が「現在の赤穂市内の医療水準を落とさないことを基本に、まずその確保を」とあいさつして始まった。
序盤は「県としては、赤穂市民病院は播磨姫路準圏域(赤穂市、相生市、上郡町)の中核病院と位置付けている。準圏域全体の民間病院を含めた役割分担は必要」との発言を受け、「赤穂中央病院との連携が改革の鍵」「今まで通りの経営形態では維持できない。病院は毎年10億円程度の資金不足が生じる。赤穂市も一緒に沈む結果になりかねない」「将来を見据えた中で厳しい判断が必要」などと抜本的な改革を求める声が相次いだ。委員長は「経営形態や病院規模をこのまま維持すると資金不足の解消は困難との認識でよいか」とまとめ、早々に方向性が定まったかに見える。
しかし、この後の発言から混沌が生じる。
「赤穂中央病院は利益が10億円程度ある。2病院が上手に棲み分ければ、診療機能の削減や縮小の必要性は経済的にはない」
文脈から、赤穂中央病院を運営する医療法人伯鳳会理事長の古城資久氏の発言とみられ、ある委員は「伯鳳会が市民病院の救済に名乗りを上げた」と受け止めた。一方、別の委員は「うちができているんだから、市民病院も頑張ればできる、という叱咤激励」と解釈したといい、議事録には「中央病院との重複を減らすだけで市民病院はやっていけるということか」と現状維持の可能性に含みをもたせる意見が記録されている。
事務局が「次回までに中央病院と市民病院で調整する」とし、この日の会議では経営形態変更の是非についての明確な意思決定には至らなかった。
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公立での存続 もう少し議論
第2回は10月8日に神戸市内で対面で開かれた。追加資料として、市民病院の負債額や経営改善の過去と今後の取り組み、2病院の診療機能の比較表などが示され、事務局が「資金不足比率が10%を超え、理念的には年間10億円の収支不足をゼロにしなければならない。収支改善しても足りなければ、市から援助してもらうか、収入を上げなければ解消できない」と危機感をあらわにした。
委員からも「2つの病院が競争して機能を拡充する時代は人口減少で終わった。競争を打ち切り、協力し合うために最も良い経営形態の議論に入ってほしい」「経営形態をどうするかという議論に移った方がよい」といった提案が出された。委員長は前回と同様、「意見を整理すると、現在の経営形態維持のままでは資金不足の解消は困難ということでよいか」とまとめ、市民に説明するためのデータや資料を次回までに事務局が作成することになった。
少なくとも、経営形態を変更する方向性は決まったかに見えたが、1人の委員が「医師を派遣している大学は、市民病院がこのような経営状態だとほとんど知らない。いきなり、独法や指定管理にするとか、赤穂市はもちませんと言われると皆びっくりする。全適で何ができるか、もう少し議論を深める必要がある」と今一度、公立での存続の検討を要望。この発言が今後の話し合いの行方に影響していく。
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経営形態変更は「将来の可能性」
11月19日に神戸市内で行われた第3回。市民病院の負債額などとともに「さらなる経営改善策」によって2022年度以降、「年間3・5億円〜6・2億円の収支改善が可能」とするシミュレーションが事務局から示された上で議論を再開した。
経営改善策について、「指標や期間を決めたチェックを実施してはどうか」との意見に対し、事務局は「外部も入った検証委員会を立ち上げ、4半期ごとに検証し、指標に達しない状況が2回続けば経営形態移行を視野に踏まえて舵を切るという検討をしてはどうかと考えている」と説明した。
公立での存続を前提とした説明に聞こえる。前回までの意見の大勢からすれば意外だが、委員長の「他にご意見は」との呼び掛けに異論や疑問を唱える声はなかったようだ。議事録には《特に発言なし》と記載されている。
委員長は「まとめますと、診療機能の調整やさらなる経営改善に取り組めば、まだまだ現在の経営形態のまま事業継続は可能。市民の期待に応える観点からも、当面1〜2年は頑張れるのではないか。ただし、絶えず検証し、不測の事態に備えて経営形態について研究・検討しておく何らかの歯止めが必要」と取りまとめた。
さらに、ある委員が「赤穂市と病院が一体となって経営改善に取り組まないと絶対無理。それで難しい場合は、次に独法化、指定管理も含めて議論が出てくる可能性がある。この委員会として将来の経営形態も含めて結論を出すのかは、私はわからなかったが、そういう可能性に触れておく程度であれば構わない」とダメ押し。経営形態の変更は「将来の可能性」に先送られた。【次週へ続く】
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2022年2月5日号(2449号) 1面 (4,115,848byte)
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コメント
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投稿:へんなおじさん 2022年02月07日19 11
投稿:赤穂の市民 2022年02月06日今のうち手を打っておかないと、
火の手が広がり、夕張市状態ですよ。
20 7
投稿:もう終わりましたね 2022年02月06日反発はあるでしょうが、人がやらないこと、嫌がることをやらないと、赤字は解消されないです。どうせ、試行する勇気もないので、ジリ貧でしょうけど…。
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投稿:風の玉三郎 2022年02月05日コメントを書く