医療事故公表基準を改訂 半年ごとHPに概要
2022年05月21日
赤穂市民病院は、医療事故が発生した場合の対応手順などを定めた医療安全対策実施要項を今年3月に改訂。市への報告や市民への公表に関する基準を見直していたことがわかった。
「病院への信用回復につなげるため、公表基準を見直した」(医療課)としており、改訂した実施要項を今月中にも病院ホームページで公表する予定だ。
同病院は患者に何らかの有害やリスクが生じた事案を患者への影響度に応じて8段階に区分(別表参照)。このうち、影響の大きい4区分を「医療事故(アクシデント)」に分類している。また、転倒や転落については損傷のレベルで6つに区分し、中程度以上の事案を医療事故としている。
改訂された実施要項では、レベル4bまたは5の医療事故について「赤穂市への報告後、市の承諾を得て、市議会へも報告を行う」とし、従来は取り決めがなかった議会への報告が追加された。
また、「医療過誤が明らかな場合」のレベル4b・5の事例は「事故発生後速やか」に発生の年月日や状況、今後の対策などを公表。レベル4a以下の事例については「医療上の義務に違反」して発生したケースを対象に年に2回、ホームページに包括公表する。
公表は、顧問弁護士の意見を踏まえ、市長の承諾を得た上で院長・医療安全推進室長(または副室長)などが行う。事前に患者家族の同意を得ることを前提としつつ、同意が得られない場合でも患者の特定・識別につながらないように個人情報を保護した上で原則公表する。
同課によれば、レベル4b・5の事例については過失の有無を問わず事故後速やかに公表するよう、さらに実施要項を改訂する予定という。4月に病院事業管理者を配置したことに伴う文言の追加、変更を含めて改訂作業が終わり次第、「実施要項を病院ホームページに公表する」としている。
同病院では2020年1月に脳神経外科の手術で患者の両足に麻痺が残るなどの医療事故が発生(損害賠償の民事訴訟が係争中)。藤井隆院長(当時)は同年5月に医療過誤を認めたにも関わらず議会や市民に事故の概要を公表せず、医療安全のあり方をめぐる不信がぬぐえていない。
今回の改訂について、病院は「兵庫県のマニュアルを参考に、県並みの公表基準とした」(同課)とする。しかし、県は公表対象とする医療事故を「原則として医療過誤が確認された事例」(県病院局企画課)と範囲を制限。「医療上の義務に違反」の定義も、市民病院が「病院の監督責任下で医療事故が起きた場合」と解釈しているのに対し、県は「医療過誤と同義」と位置付けており、市民病院の方が県よりも公表対象を幅広く設定していると言える。
とはいえ、公表のベースとなる医療事故報告書の提出や事故レベルの分類が適正に行われなければ、新たな基準も絵に描いた餅になる。改訂の主旨を踏まえた運用をどのように担保していくかが信用回復の鍵になりそうだ。
関連サイト:
【関連記事】医療過誤で重度障害 同一医師で事故8件(2021年09月18日)
掲載紙面(PDF):
2022年5月21日号(2462号) 1面 (8,115,688byte)
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「病院への信用回復につなげるため、公表基準を見直した」(医療課)としており、改訂した実施要項を今月中にも病院ホームページで公表する予定だ。
同病院は患者に何らかの有害やリスクが生じた事案を患者への影響度に応じて8段階に区分(別表参照)。このうち、影響の大きい4区分を「医療事故(アクシデント)」に分類している。また、転倒や転落については損傷のレベルで6つに区分し、中程度以上の事案を医療事故としている。
改訂された実施要項では、レベル4bまたは5の医療事故について「赤穂市への報告後、市の承諾を得て、市議会へも報告を行う」とし、従来は取り決めがなかった議会への報告が追加された。
また、「医療過誤が明らかな場合」のレベル4b・5の事例は「事故発生後速やか」に発生の年月日や状況、今後の対策などを公表。レベル4a以下の事例については「医療上の義務に違反」して発生したケースを対象に年に2回、ホームページに包括公表する。
公表は、顧問弁護士の意見を踏まえ、市長の承諾を得た上で院長・医療安全推進室長(または副室長)などが行う。事前に患者家族の同意を得ることを前提としつつ、同意が得られない場合でも患者の特定・識別につながらないように個人情報を保護した上で原則公表する。
同課によれば、レベル4b・5の事例については過失の有無を問わず事故後速やかに公表するよう、さらに実施要項を改訂する予定という。4月に病院事業管理者を配置したことに伴う文言の追加、変更を含めて改訂作業が終わり次第、「実施要項を病院ホームページに公表する」としている。
同病院では2020年1月に脳神経外科の手術で患者の両足に麻痺が残るなどの医療事故が発生(損害賠償の民事訴訟が係争中)。藤井隆院長(当時)は同年5月に医療過誤を認めたにも関わらず議会や市民に事故の概要を公表せず、医療安全のあり方をめぐる不信がぬぐえていない。
今回の改訂について、病院は「兵庫県のマニュアルを参考に、県並みの公表基準とした」(同課)とする。しかし、県は公表対象とする医療事故を「原則として医療過誤が確認された事例」(県病院局企画課)と範囲を制限。「医療上の義務に違反」の定義も、市民病院が「病院の監督責任下で医療事故が起きた場合」と解釈しているのに対し、県は「医療過誤と同義」と位置付けており、市民病院の方が県よりも公表対象を幅広く設定していると言える。
とはいえ、公表のベースとなる医療事故報告書の提出や事故レベルの分類が適正に行われなければ、新たな基準も絵に描いた餅になる。改訂の主旨を踏まえた運用をどのように担保していくかが信用回復の鍵になりそうだ。
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