特別展「上方の忠臣蔵浮世絵」貴重な190点
2022年12月10日
忠臣蔵を題材に江戸後期から明治にかけて大坂や京都で出版された浮世絵の特別展「上方の忠臣蔵浮世絵」が上仮屋の赤穂市立歴史博物館で開かれている。
大坂では寛政3年(1791)から明治20年(1887)にかけて一枚摺の錦絵(木版多色摺の浮世絵)が版行され、京都では墨摺りや図柄を切り抜いた紙の上から刷毛で彩色する技法の「合羽摺」の作品が多くつくられた。これらは江戸で出版された浮世絵を「江戸絵」と呼ぶのに対し「上方絵」と称されている。風景画や美人画は極めて少なく、大半は歌舞伎役者を描いた役者絵だった。
当時、上方には複数の芝居小屋があったほか、寺社の境内でも盛んに歌舞伎が上演されていた。とりわけ元禄赤穂事件をテーマにした「仮名手本忠臣蔵」や義士の銘々伝を取り入れた演目が人気を集め、忠臣蔵物の役者絵が多く描かれたという。江戸の役者絵が演者や舞台を美化して表現する傾向があったのに対し、上方では顔のしわや舞台装置も描くなど写実性を重んじた特徴がみられる。
本展では、赤穂市と京阪神の文化施設・大学が所蔵する上方の忠臣蔵浮世絵約190点を収集して展示。合羽摺や天保の改革以後に従来の半分の大きさで出版された「中判」の浮世絵など上方ならではの作品を紹介している。同じ役者や場面を描いた江戸絵と上方絵を並べ、描き方や場面取りの違いを見比べる展示もある。
江戸絵が専業の絵師によって描かれた一方、上方絵のほとんどは芝居に通じた町人の手で描かれた。同館学芸員の木曽こころ係長は「江戸では参勤交代で国元へ帰る武士が土産として軽くて持ち運びやすい浮世絵を買い求めるケースが多かったこともあり市場規模が大きかった。上方では江戸ほどの規模ではなかったが、商人のまちらしく経済的にも時間的にも余裕のあるセレブな芝居好きたちによって生み出され、芝居好きの町人や往来する商人たちによって求められたのだろう」と推測する。
「上方絵は彫りも摺りも精緻で、決して江戸絵に劣るものではない」と木曽係長。早くからその独自性を高く評価した海外に多くの作品が流出したこともあり、江戸絵に比べると国内に現存する点数は圧倒的に少ないといい、「希少な上方絵を通して忠臣蔵の世界を味わってもらえれば」と話している。
12月19日(月)まで午前9時〜午後5時(入館は4時半まで)。水曜休館(12月14日は開館)。入館料300円(小・中学生150円)。図録(A4判98ページ)は1部1400円。TEL43・4600。
掲載紙面(PDF):
2022年12月10日号(2487号) 1面 (4,557,615byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
歴史博物館で開催中の特別展「上方の忠臣蔵浮世絵」
大坂では寛政3年(1791)から明治20年(1887)にかけて一枚摺の錦絵(木版多色摺の浮世絵)が版行され、京都では墨摺りや図柄を切り抜いた紙の上から刷毛で彩色する技法の「合羽摺」の作品が多くつくられた。これらは江戸で出版された浮世絵を「江戸絵」と呼ぶのに対し「上方絵」と称されている。風景画や美人画は極めて少なく、大半は歌舞伎役者を描いた役者絵だった。
当時、上方には複数の芝居小屋があったほか、寺社の境内でも盛んに歌舞伎が上演されていた。とりわけ元禄赤穂事件をテーマにした「仮名手本忠臣蔵」や義士の銘々伝を取り入れた演目が人気を集め、忠臣蔵物の役者絵が多く描かれたという。江戸の役者絵が演者や舞台を美化して表現する傾向があったのに対し、上方では顔のしわや舞台装置も描くなど写実性を重んじた特徴がみられる。
本展では、赤穂市と京阪神の文化施設・大学が所蔵する上方の忠臣蔵浮世絵約190点を収集して展示。合羽摺や天保の改革以後に従来の半分の大きさで出版された「中判」の浮世絵など上方ならではの作品を紹介している。同じ役者や場面を描いた江戸絵と上方絵を並べ、描き方や場面取りの違いを見比べる展示もある。
上方絵(右)と江戸絵。どちらも三代目中村歌右衛門が演じる大星由良之助を描いた作品で、描写の違いがみられる。
江戸絵が専業の絵師によって描かれた一方、上方絵のほとんどは芝居に通じた町人の手で描かれた。同館学芸員の木曽こころ係長は「江戸では参勤交代で国元へ帰る武士が土産として軽くて持ち運びやすい浮世絵を買い求めるケースが多かったこともあり市場規模が大きかった。上方では江戸ほどの規模ではなかったが、商人のまちらしく経済的にも時間的にも余裕のあるセレブな芝居好きたちによって生み出され、芝居好きの町人や往来する商人たちによって求められたのだろう」と推測する。
「上方絵は彫りも摺りも精緻で、決して江戸絵に劣るものではない」と木曽係長。早くからその独自性を高く評価した海外に多くの作品が流出したこともあり、江戸絵に比べると国内に現存する点数は圧倒的に少ないといい、「希少な上方絵を通して忠臣蔵の世界を味わってもらえれば」と話している。
12月19日(月)まで午前9時〜午後5時(入館は4時半まで)。水曜休館(12月14日は開館)。入館料300円(小・中学生150円)。図録(A4判98ページ)は1部1400円。TEL43・4600。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2022年12月10日号(2487号) 1面 (4,557,615byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
日本書芸院の審査会で最高の「史邑賞」 [ 文化・歴史 ] 2018年04月10日赤穂書道会展 13日から図書館で [ 文化・歴史 ] 2018年04月07日「女・女・女展」30回記念展 31日まで [ 文化・歴史 ] 2018年03月29日随想100本 米寿の健筆に脱帽 [ 文化・歴史 ] 2018年03月27日還暦バンド 晴れのステージで熱唱 [ 文化・歴史 ] 2018年03月26日30回目の「女・女・女」展 29日から [ 文化・歴史 ] 2018年03月24日ヴァイオリン教室 第16回発表会 「影」をテーマに写真グループ展 [ 文化・歴史 ] 2018年03月19日歩いて巡る高雄の歴史 [ 文化・歴史 ] 2018年03月17日写真で振り返る「懐かしの赤穂線」 [ 文化・歴史 ] 2018年03月16日「絵画を楽しむ会」第9回作品展 [ 文化・歴史 ] 2018年03月16日地場産業復活へ赤穂緞通展 上郡町書道会が第19回会員展 [ 文化・歴史 ] 2018年03月10日フォトクラブ赤穂 15日から作品展 [ 文化・歴史 ] 2018年03月10日赤穂初の前方後円墳 3日に現地説明会 [ 文化・歴史 ] 2018年02月28日
コメントを書く