《市民病院医療事故多発》「科長に急かされた」被告医師が主張 自身の技量不足認めるメッセージも【加筆修正あり】
2024年09月04日
赤穂市民病院の脳神経外科手術で医療過誤に遭った被害患者と家族が赤穂市などを相手取り損害賠償を求めている民事訴訟の口頭弁論が4日、神戸地裁姫路支部であり、被告に対する尋問が行われた。
主治医として手術を執刀した40代男性医師は医療過誤が起きた要因について、「(科長に)急かされた」などと手術で助手を務めた上級医の責任を主張した一方、過誤が起きた手術の翌日に「今回の件、先生のせいではありません」などと自身の技量不足が原因と認めるメッセージを科長に送っていたことが明らかになった。
この裁判は2020年1月、腰部脊柱管狭窄の手術で腰の骨をドリルで削った際、誤って神経を切断され、両足のまひや膀胱、直腸の重度障害が生じた70代女性患者と家族が慰謝料など約1億3000万円の支払いを求め、主治医として手術を執刀した40代男性医師と病院を開設する市を訴えているもの。
訴状などによれば、手術部位は2か所で、上司の科長が執刀して男性医師が助手を務めた1つ目は難なく済んだが、ポジションを交代した2つ目でドリルが硬膜を損傷し、神経の一部を巻き込んだ。ミスが起きたときは手術部位の止血が十分になされず、よく見えない状況だったにもかかわらず、男性医師が使用していたドリルの刃先は、繊細な場所に用いるダイヤモンドバーではなく、掘削力の高いスチールバーだった。
男性医師は尋問で、十分な止血を行わなかったことやリスクの高いスチールバーを用いた理由について、「(科長に)急かされた」「スチールバーで削れ、と指示された」などと助手の科長の責任を強調した一方、手術翌日に科長に「今回の件、先生のせいではありません。根本的に解剖の理解が甘かったこと、止血が甘かったこと、焦っていたこと、ドリリングが荒かったことが原因です」とLINEでメッセージを送っていたことを認めた。
証言によれば、男性医師は2009年に医師免許を取得。2019年7月に赤穂市民病院に中途採用されるまでの約10年間は滋賀、京都などの病院で脳外科医として勤務した。その間、脊椎の手術には助手として参加したのみで、「執刀は一度もなかった」という。19年9月から翌年2月までの間に、裁判になっている医療過誤症例を含めて計8件の医療事故に関与。医療過誤の被害患者と家族から21年8月に提訴され、同月末で依願退職した。現在は大阪府吹田市内の医療機関で救急医として勤務している。
約6か月半の間に8件の医療事故が起きたことについては、「在任中に執刀した症例は50例。50例中8件というのは救急患者を中心に診ている脳外科医なら、それほど悪い成績とは思っていない」と述べた。訴訟になっている以外の医療事故7件については「偶発症や合併症、誰が執刀しても起こり得るもの、そもそも私が重要な部分をやっていないものも含まれている。すべて私の原因とされるのは違うと思う」と責任を否定。また、赤穂市民病院に着任する以前に頭部の手術でドリルを使った経験があったことを挙げ、「技量不足は否めないが、(脊椎手術を)やってはいけないほどではない」と語った。
今後の医師としての身の振り方を問われると、「外科医としてはメスを置いたつもり」と外科的手術からの「引退」を宣言。自身がモデルと噂されるウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』について自ら触れ、「殺人鬼とか、とんでもない医者とかの風評を立てられているが、まったくの事実無根。客観的事実により公正公平な判断をお願いしたい」と裁判所に要望した。
* * *
裁判の証拠資料を精査するなどした結果、記事を加筆修正しました。(2024年9月5日12時30分)
掲載紙面(PDF):
2024年9月7日号(2566号) 1面 (6,058,114byte)
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主治医として手術を執刀した40代男性医師は医療過誤が起きた要因について、「(科長に)急かされた」などと手術で助手を務めた上級医の責任を主張した一方、過誤が起きた手術の翌日に「今回の件、先生のせいではありません」などと自身の技量不足が原因と認めるメッセージを科長に送っていたことが明らかになった。
この裁判は2020年1月、腰部脊柱管狭窄の手術で腰の骨をドリルで削った際、誤って神経を切断され、両足のまひや膀胱、直腸の重度障害が生じた70代女性患者と家族が慰謝料など約1億3000万円の支払いを求め、主治医として手術を執刀した40代男性医師と病院を開設する市を訴えているもの。
訴状などによれば、手術部位は2か所で、上司の科長が執刀して男性医師が助手を務めた1つ目は難なく済んだが、ポジションを交代した2つ目でドリルが硬膜を損傷し、神経の一部を巻き込んだ。ミスが起きたときは手術部位の止血が十分になされず、よく見えない状況だったにもかかわらず、男性医師が使用していたドリルの刃先は、繊細な場所に用いるダイヤモンドバーではなく、掘削力の高いスチールバーだった。
男性医師は尋問で、十分な止血を行わなかったことやリスクの高いスチールバーを用いた理由について、「(科長に)急かされた」「スチールバーで削れ、と指示された」などと助手の科長の責任を強調した一方、手術翌日に科長に「今回の件、先生のせいではありません。根本的に解剖の理解が甘かったこと、止血が甘かったこと、焦っていたこと、ドリリングが荒かったことが原因です」とLINEでメッセージを送っていたことを認めた。
証言によれば、男性医師は2009年に医師免許を取得。2019年7月に赤穂市民病院に中途採用されるまでの約10年間は滋賀、京都などの病院で脳外科医として勤務した。その間、脊椎の手術には助手として参加したのみで、「執刀は一度もなかった」という。19年9月から翌年2月までの間に、裁判になっている医療過誤症例を含めて計8件の医療事故に関与。医療過誤の被害患者と家族から21年8月に提訴され、同月末で依願退職した。現在は大阪府吹田市内の医療機関で救急医として勤務している。
約6か月半の間に8件の医療事故が起きたことについては、「在任中に執刀した症例は50例。50例中8件というのは救急患者を中心に診ている脳外科医なら、それほど悪い成績とは思っていない」と述べた。訴訟になっている以外の医療事故7件については「偶発症や合併症、誰が執刀しても起こり得るもの、そもそも私が重要な部分をやっていないものも含まれている。すべて私の原因とされるのは違うと思う」と責任を否定。また、赤穂市民病院に着任する以前に頭部の手術でドリルを使った経験があったことを挙げ、「技量不足は否めないが、(脊椎手術を)やってはいけないほどではない」と語った。
今後の医師としての身の振り方を問われると、「外科医としてはメスを置いたつもり」と外科的手術からの「引退」を宣言。自身がモデルと噂されるウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』について自ら触れ、「殺人鬼とか、とんでもない医者とかの風評を立てられているが、まったくの事実無根。客観的事実により公正公平な判断をお願いしたい」と裁判所に要望した。
* * *
裁判の証拠資料を精査するなどした結果、記事を加筆修正しました。(2024年9月5日12時30分)
医療過誤訴訟の口頭弁論が行われた神戸地方裁判所姫路支部
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2024年9月7日号(2566号) 1面 (6,058,114byte)
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コメント
8 0
投稿:@ 2024年11月19日調べ直すべきでは?
11 3
投稿:低須くん 2024年09月14日救急と言えば、なんでもできるというよくあるご都合主義な
考え方はありえない。
医師以前の態度とおもいます。
赤穂民報さんがずっと世の中が忘れないよう報道お願いしたい
ですね。
次回の裁判日程も書いてもらえれば
と思います
40 2
投稿:同業者 2024年09月08日66 5
投稿:市民46歳 2024年09月06日コメントを書く