「坂越の船だんじり」60年ぶり復活へ
2009年07月11日
60年ぶりに蔵から出された船だんじり
半世紀以上の時を超えて日の目を見たのは、本町自治会が所有する組み立て式のだんじりで、間口約6・8メートル、奥行約6・7メートル。大避神社1300年祭だった昭和23年に当時の青年団が中心となって設営したのを最後に奥藤商事の蔵に保管されていた。
市教委によると、坂越地区ではかつて各町がだんじりや地車を所有。宮の年忌にあたるときには、こぞって繰り出して祭礼に花を添えた。2隻並べた網船の上にだんじりを組み、地域住民らが漫才、にわか芝居などを上演。観客は陸や桟敷船から海に浮かぶ舞台を見て楽しんだという。
市教委によると、最も古い記録では享保11年(1726)の古文書に「船壇尻一組」との記述がある。大正10年(1921)の「聖徳太子1300年祭」では地車などを出した7町のうち本町、東之町、潮見町の3町が船だんじりだったとの記録が残るが、土台となる網船が姿を消したことや部材の保管場所に困るなどの理由で、その後失われた。地元住民らが昭和44年に発足した「坂越船壇尻囃子保存会」(粟井鉄芳会長、9人)が囃子の伝承に努めている。
唯一残された本町の船だんじりは、その存在は知られていたが、最後の上演以来一度も蔵から出されることはなかった。「坂越の船祭り」を対象に平成19年度から3年計画で行っている総合調査の一環で市教委が今年4月に部材を搬出。建築士らでつくる「赤穂まちづくり研究会」(山本建志代表、16人)が仮組みしたところ、全体の9割近い部材が現存していることがわかった。天幕、ふすまなど装飾品も一緒に見つかり、地元住民が持っていた古い写真でそれらの配置も判明。欠損している部材を補修すれば、ほぼ往時の状態を復原できる見通しが立った。
6日の会合では上演日程や会場についても意見交換。台船の確保が難しいため、今回は海上ではなく、陸上での開催とする方向で話が進んだ。今後、芸能団体などに出演を呼びかけ、秋祭りの日程に合わせた上演を目指す。
60年前に青年団の主力メンバーとして、だんじりの設営に携わった坂越の会社役員、入潮益夫さん(82)は「もう見ることはできないのではと思っていたがありがたい。ぜひ復活させてほしい」とエールを送る。市教委は「郷土の貴重な伝統行事として保存継承を支援していきたい」と話している。
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掲載紙面(PDF):
2009年7月11日(1855号) 1面 (8,707,226byte)
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