【寄稿】福祉活動に込められた殿下の“想い”
2012年06月23日
柏朋会の発足会での寛仁親王殿下(右)と私=昭和50年ごろ、宮邸で
マスコミは、福祉活動を報道するが、そこに込められた殿下の想いに言及するものはない。
殿下は、柏朋会(*)の会長として、41年間にわたり、常に、陣頭指揮された。その会の代表幹事として、ご指導をいただいたものとしては、殿下の想いを、正しく、伝えなければならない。
殿下にお目にかかったのは、イギリス留学からご帰国後のことであった。スポーツ振興・青少年育成・国際親善にご造詣の深い、“コモンセンス”豊かな、25歳の若き宮様であられた。
ある時、重い言語障害を持つ人が、『自分が最も嬉しいことは、自分の言葉を最後まで聞いてくれること』と訴えるのをお聞きになった。訪問先の福祉施設で、言語障害の人から話しかけられると、つい「あなたの言いたいことは、こうでしょう」と話を引き取っていたそれまでの自分の行動が、相手を傷つけることに気づき、福祉の宮様としての第一歩を踏み出された。
殿下は、いわゆる「弱者救済の福祉」を全面的に否定された。いや、それどころか、これを逆転させようとされた。
「弱者と思われてはいるけれど磨けば光る珠であるならば、積極的に支援の手を差し伸べる」ことをモットーに、「自立のために真摯な努力を積み重ねている人々に対して、ヘルプ&サポートを惜しまない」「圧倒的に多い健常者が構成している社会に、磨くこと・磨かれることによって光り始めた人々が積極的に打って出て、健常者に追いつき追い越すことによって、我が国にとって有用な人になって欲しい」「健常・障害を問わず、一人ひとりが真の意味で強者になってもらうことが、究極の目的」と、その真意を説明された。
殿下は、何事であれ、徹底的に、かつ、真摯に議論を深め、学ぶことを大切にされた。議論を重ね、到達したのが「100%の障害者や100%の健常者は、地球上には存在しない」「一人ひとりが分野ごとに健常な部分を持つと共に、障害の部分をも合わせ持って生きているのが人間社会の現実」という考え方であった。
これは、ご自身が皇族であることと深く係わる。特別視されるが故に、それが、時として、ハンディとなることもあり、「俺も一種の障害者」と、如何にも殿下らしい表現で、その心情を漏らされることもあった。(つづく)
関西福祉大学学長・柏朋会代表幹事 安井秀作氏
(*)柏は、殿下のお印、柏朋とは、殿下を中心として“福祉活動”を行う仲間を意味する。
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掲載紙面(PDF):
2012年6月23日(1995号) 3面 (7,152,618byte)
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