市長選立候補予定者の主張を比較
2015年01月01日
赤穂市長選(1月11日告示、18日投開票)への立候補を表明している各氏
* * *
これまでに出馬を正式表明したのは表明順に、▽元会社社長の矢野英樹氏(44)=加里屋中洲▽元兵庫県職員の牟礼正稔氏(60)=坂越▽元赤穂市副市長の明石元秀氏(64)=加里屋−の3人。
【各氏の略歴】
矢野氏は昭和45年生まれ。赤穂高、仏教大社会学部を卒業。28歳で防水工事会社を創業した。赤穂青年会議所理事長を経て、忠臣蔵ウイーク実行委員会の立ち上げを主導するなど「常に赤穂のために自分が出来ることを発想し、実行してきた」と行動力を自負する。好きな言葉は「見義不為 無勇也(義を見て為さざるは勇無きなり)」。趣味は「仕事」。
牟礼氏は昭和29年生まれ。赤穂高、大阪大学法学部を卒業し、同53年に県入庁。都市計画から障害福祉、震災対応など約36年間にわたる行政経験の幅広さを押し出す。「赤穂を外から見た経験、県とのパイプ、地方から国に物申して制度を変える発想がある」とアピールする。好きな言葉は「努力」。趣味はコーラス、尺八、囲碁、ジョギング。
明石氏は昭和25年生まれ。赤穂高、桃山学院大学経済学部卒。昭和48年に赤穂市入庁。企画部長、教育次長、安全管理監などを歴任し、副市長を7年半務めた。「赤穂市行政の現場を熟知しているのが自分の強み。一つ一つの施策に対する認識の深さが違う」と主張する。好きな言葉は「謙虚」。趣味は野菜づくり。
【立候補表明以降の動き】
「生まれ育った大好きな赤穂のために率先して行動する」と昨年5月に立候補を表明した矢野氏。「退路を断つ」と会社を退職し、市内全域で精力的に市民との対話を重ねてきた。10月からは後援会事務所前で週1回の街頭演説。インターネットによる情報発信も活発で、商工業者や同世代を中心に「力強い支援を感じている」と手応えを口にする。
定年まで8カ月を残した昨年7月末で県庁を退職した牟礼氏は8月に出馬会見を開き、「残された人生を赤穂のために命を懸ける」と決意。あいさつ回りとミニ集会で知名度向上、支持拡大に努めてきた。坂越地区と赤穂地区の自治会連合会、市体育協会などが推薦。先月23日に開催した集会で約350人を集め、「一気に盛り上がった」と自信を見せる。
豆田市長の退任発表を待ち、昨年9月のタイミングで副市長を辞して出馬表明した明石氏。「経験と実績を生かして、市民に恩返ししたい」と動機を語った。連合兵庫、複数の福祉団体から推薦を取り付けるなど組織的な支持拡大を図るのに加え、先月22日から市内の辻々で街頭演説を開始。幅広い層への施策と人柄の浸透を目指している。
【柱とする政治ビジョン】
矢野氏「20年後の赤穂を見据え、市民のための市政運営で未来につなげる」
牟礼氏「情報公開を推し進め、市民目線で市政運営を行う。国、県とのパイプを活用する」
明石氏「効率的でスピード感のある行政を推進し、バランスのとれたまちづくりを目指す」
【行政の役割】
矢野氏「まち全体を『株式会社赤穂市』と考え、経済効果を生み出すように税金を活用し、市財政を黒字化できる仕組みをつくる」
牟礼氏「弱者や困っている人に光を当て、公共の福祉を追求するのが行政の役割。借金してでもやらなければならないこともある」
明石氏「行政しかできないこと、行政だからできることがある。民間だと手離すことでも市民福祉向上のため実行する責任がある」
【新市長がまず取り組むべきこと】
矢野氏「赤穂市専属のセールスマンとして全国に赤穂の魅力を発信する営業活動。民間と行政の良好な関係づくり」
牟礼氏「市民本位の行政のための情報公開、教育先進市を目指す教育改革、高取峠トンネルの早期実現」
明石氏「折り返し点を迎える赤穂市総合計画を見直す。変化する世の中や時代の流れに対応したい」
【人口減対策】
矢野氏「新規転入者への補助、空き家バンクの充実、婚活事業の拡充など。日本中がそうだから仕方がないという考えを捨て、プラス思考で取り組む」
牟礼氏「教育改革と医療充実、雇用確保を中心に『誰もが住みたいと思うまち』の実現を目指すべき」
明石氏「子育て支援をはじめ総合的な対策を講じる。新規定住者への住宅取得費の一部助成、空き家改修費補助など定住促進制度をさらに拡充」
【地域活性化策】
矢野氏「光ケーブルさえあれば仕事ができるソフトウェア産業、情報通信産業といった第4次産業の企業を誘致し、雇用を確保する」
牟礼氏「山陽道赤穂インター周辺に道の駅を整備。また、企業誘致に必要な用地を確保する。国や県の補助を活用すれば実現性は高い」
明石氏「御崎東浜地区に道の駅整備。文化芸術活動の推進、歴史資源の利活用、スポーツ活動などスポーツツーリズムの推進を図る」
【産廃処分場計画への対応】
矢野氏「産廃最終処分場は安全性が確認できない限り反対。市民のみなさんの声を最重視する。将来同じような問題を繰り返さないために独自の条例を作らなければならない」
牟礼氏「管理型処分場については市民が反対しており、先頭を切って運動していきたい。高野の安定型処分場の計画地は不適地だと思う。計画地の変更など再検討すべき。情報公開と第三者の意見を聴く制度整備も必要」
明石氏「福浦と西有年の管理型については反対。高野については安全性を確認できない限り反対。環境行政を強化するために決裁区分、情報公開、人材の育成など役所の中のシステムを見直す」
【市民病院のあり方】
矢野氏「病院を増築してベッドを増やせば患者が増えるという単純な理屈ではない。医師確保に全力で取り組み、患者満足度を上げるソフト面の対策も考えるべき」
牟礼氏「2期構想を進め、医療レベルを向上させ、市民に対するサービスを高めたい」
明石氏「市民の健康を守る最後の砦。第2期構想の推進によって医師、患者に選ばれる病院として、また、地域医療体制の充実を図る」
【学校給食費無償化】
矢野氏「無償化にすることが良い子が育つこととは直接つながらないが、実現のために継続して検討していくことが必要」
牟礼氏「地元産食材の給食は郷土への愛着、市内生産者への経済効果が期待できる。財源を工夫して幼稚園から中学生まで無償化を実施したい」
明石氏「それよりも先に、5歳児健診や幼稚園3歳児保育などの子育て支援策に力を注ぐべき。今後の財政負担を考えると難しい」
【高取峠トンネル化】
矢野氏「交通事故防止、災害時の避難ルート確保などのため、早期実現に向け、継続した働きかけを」
牟礼氏「三方を囲まれた赤穂の交通アクセスを強化するため、相生市と連携して早期実現に取り組む」
明石氏「赤穂市民の永年の悲願。県の社会基盤整備プログラム記載へ向け、県や相生市との連携を密にする」
【市役所改革】
矢野氏「市職員が明るく働ける環境づくり。民間企業への出向でスキルアップ、民間と行政の相互理解を深めることが大切」
牟礼氏「企業誘致など、担当が複数にわたっている部署を一本化する機構改革に取り組み、業務の効率化と責任の明確化を図るべき」
明石氏「職員は市民の方を向いて仕事をする。教育や福祉などワンストップで対応できる仕組みをつくる」
【豆田市政の評価】
矢野氏「財政健全化への取り組みは評価できる。外部への発信力、動きが欠けていた」
牟礼氏「きめ細やかな福祉行政は先進的。情報公開が不十分だったと感じる。区画整理など、まちづくりのビジョンの見直しが必要」
明石氏「健全な財政運営、そして内部管理にすぐれている。メリハリをつけるべきだった」
【理想の市長像】
矢野氏「市民全体のリーダーとして、外へ向かって発信して行動できる人物。行政出身者では『市役所職員の長』という殻を破れない」
牟礼氏「パフォーマンスも発揮して積極的に情報発信でき、市民のために気遣いできる人。多額の予算を執行するには行政経験がなければ立ち行かない」
明石氏「信念を持って、ぶれずに方針を決定できること。複雑な行政手続きの仕組みを知り尽くしていればスピード感を持って市政を推進できる」
* * *
紙面に掲載したほかにも、▽「赤穂市内で最大484人の死者が出る」(県想定)とされる南海トラフ巨大地震への防災対策▽「年間観光客数200万人」を目標とする観光振興▽「スポーツ先進都市」の推進▽文化振興−など市政テーマは多岐にわたる。
過去の市長選に比べて正月明けから告示までの期間が短い今回の選挙。限られた時間の中、いかにして有権者の関心を引きつけ、理解と賛同を得られるかが勝敗の分かれ目になりそうだ。
立候補の届け出は11日午前8時半から市役所2階で受け付けが始まり、午後5時で締め切られる。投票は1月18日(日)、市内22カ所の投票所で午前7時〜午後8時に行われる。期日前投票は12日(月)〜17日(土)に市役所2階で午前8時30分〜午後8時に受け付けるほか、一部公民館でも次の日程で午前10時〜午後6時に投票できる。
▽13日(火)=有年公民館
▽14日(水)=坂越公民館
▽15日(木)=尾崎公民館
▽16日(金)=塩屋公民館
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掲載紙面(PDF):
2015年1月1日・第2部(2118号) 1面 (10,626,594byte)
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[ 社会 ]
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