無敗王者破り世界チャンピオン
2016年12月31日
世界王者となりチャンピオンベルトを巻いて応援団の声援に応える小國以載選手
小國選手は切れのある左ジャブで相手の出足を止めてリズムをつかむと、第3ラウンドに強烈な左ボディブロー一発でダウンを奪取。その後も巧みに上下へ打ち分けて優位に試合を進めた。中盤に反撃を浴びてよろめく場面もあったがステップワークでかわして決定打を許さなかった。第11ラウンドには「ローブロー」と判定されてダウンを認められなかったものの左の連打をみぞおちに突き刺してひざまずかせ、勝利を近づけた。
* * *
◆挫折からの再起
プロ7戦目の21歳で東洋太平洋タイトルを奪取した小國選手。クレバーなボクシングセンスから繰り出す鋭いカウンターを武器に防衛を重ね、世界挑戦も間近と思われたが、4度目の防衛戦で和気慎吾選手にまさかの敗北を喫した。「一度でも負けたらやめる」と一度は引退を表明したが、世界チャンピオンになる夢を捨てきれず、拠点を関西から東京に移して再起。2年前に日本王座に返り咲き、再び世界への道を切り開いた。
◆あえて選んだ「怪物」への挑戦
グスマン選手は22勝無敗全試合KOの戦歴を誇る「怪物」。関係者によると、当初はグスマン選手よりも与しやすいとみられる別団体のチャンピオンへ挑戦する方向で調整が進んでいた。
しかし、小國選手に唯一の黒星をつけた和気選手が今年7月、グスマン選手に惨敗。「和気さんにリベンジすることだけを心に誓ってやってきた。その和気さんを倒したグスマンに勝たないと本当の意味での『チャンピオン』にはなれない」(小國選手)と、自ら「怪物」への挑戦を志願した。
◆「耐え恥」作戦で「番狂わせ」
下馬評では、チャンピオンの圧倒的有利を予想する声が大勢。小國選手自身も「一言で言うと『怪物』。パワー、スピード、バネ、すべて向こうが上。一人のボクサーとして客観的にみれば、8対2か9対1で『チャンピオン有利』と僕自身も思う」と強さは十分にわかっていた。
それでも、「何が起こるかわからないのがボクシング。みんな僕が負けると思っているけれど、その方が気が楽。見とけよって感じ」と周囲の見方をバネに。人気ドラマの題名になぞらえ、「我慢して、我慢して勝つ。『耐え恥』でいきます」と開き直って試合に臨んだ。
◆絶対王者の死角突いた「秘密兵器」
ダウンを奪った左ボディブロー。「試合終盤だったら(相手をマットに)沈めていたと思う手応え」という会心の一撃だった。「ボディ攻めで(相手の体力を)削る」という狙いどおりで、グスマン選手の動きは格段に鈍った。ボディを警戒したグスマン選手は攻撃に思い切りがなくなり、試合全般で小國選手が試合の主導権を握り続ける要因となった。
ボディ攻撃は、打ち終わりや接近戦の際に脇腹のガードが甘くなる点をグスマン選手の死角と見抜き、タイトル戦に向けて阿部弘幸トレーナーと「ずっと練習してきた」という。磨き上げた「秘密兵器」が試合の流れを変えた一発となった。
◆トレーナーに全幅の信頼
もう一つの勝因が阿部トレーナーとの強固な信頼関係だ。阿部トレーナーは元日本ミニマム級チャンピオン。小國選手が「作戦を自分で考えることはない。すべて阿部さんに任せているから」と話すほど信頼は厚い。
この日もグスマン選手の反撃を浴びた第7ラウンド後のインターバルに「なんでもらったかわかるか。全部動きが一緒になってるからや」と助言。小國選手は小刻みなフェイントと前後左右のステップへの意識を取り戻した。第9ラウンド終了時には、「このままやったら危ない。あと全部取るつもりで行け」とはっぱ。もし、ラスト3ラウンドのポイントをグスマン選手に奪われていれば、判定は逆の結果になっていただけに、的確な指示が小國選手をチャンピオンへ導いた。
◆勝利の代償も大きかった
陣営によると、小國選手は試合中盤に右拳を傷め、それ以降は左手でしか攻撃できない状態だった。しかも、左手も序盤に親指に故障が発生し、パンチを打つたびに痛みが走ったという。「負けたら引退と決めていた。まだいける、と自分に言い聞かせてやりました」(小國選手)と死力を尽くしたことを明かした。
◆果たした恩師との約束
勝ち名乗りを受けた小國選手はリング上で、ある男性の遺影を掲げた。赤穂ボクシングジムでトレーナーだった故西川良一さん。「僕に最初にボクシングの基礎を教えてくれた人」で、プロになってからも不調に陥ると帰郷し、西川さんが構えるミットにパンチを打ち込むことで調子を取り戻した。
東洋太平洋王座から陥落した小國選手が再起を決意したときも、上京前にミットでパンチを受けた。いつもは口数の少ない西川さんが「世界や。何がなんでも世界を獲るんや」としつこいくらいに繰り返したという。
西川さんはその2日後に急逝した。小國選手は「世界を穫れ」という西川さんの言葉を『遺言』と受け取ってトレーニングに励んできたといい、試合後の控え室で「ずっと応援してくれた西川さんとの約束が果たせた」と涙ぐんだ。
◆応援団も大喜び
赤穂出身初の世界王者誕生に、赤穂からバス2台で駆けつけた応援団も歓喜に沸いた。試合中は「小國コール」で励まし、勝利決定がアナウンスされると観客同士で抱き合って喜びを分かち合った。
赤穂中のバスケットボール部で小國選手の先輩にあたる姫路市の会社員、湊宗一郎(しゅういちろう)さん(33)は試合開始から終了まで立ちっぱなしで声援。「最強の王者を倒してのチャンピオンで価値があり、誇らしい。赤穂の星として今後も頑張ってほしい」。息子の快挙に小國選手の父・誉幟範(よしのり)さん(67)は「ほんまにようやってくれた。応援してくれたみなさんのおかげです」と満面の笑顔だった。
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関連サイト:
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故郷で快勝、タイトル防衛(2012年7月)
小國が大差判定で王座奪取(2011年11月)
「プロの洗礼」クリアしてKO勝利(2009年11月)
掲載紙面(PDF):
2017年1月14日(2215号) 1面 (13,262,155byte)
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コメント
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投稿:市民4 2017年01月21日0 0
投稿:赤穂市民 2017年01月03日次は統一チャンピオンを目指してください。
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投稿:市民 2017年01月02日0 0
投稿:上杉謙信 2017年01月01日0 0
投稿:赤穂市民 2017年01月01日0 0
投稿:エェナ〜 2017年01月01日0 0
投稿:赤穂出身千葉在住 2017年01月01日0 0
投稿:ナイス忠臣蔵 2016年12月31日今まで名前は駅前で見ていましたが試合を見て夫婦で熱くなりました!
素敵な年末をありがとうございます!
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投稿:ゆ 2016年12月31日0 0
投稿:片岡源五右衛門 2016年12月31日0 0
投稿:お疲れ 2016年12月31日この歓喜でよい年が迎えられそうです。感動をありがとう!!!
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投稿:ぴろき 2016年12月31日0 0
投稿:グイグイまっちゃん 2016年12月31日これからの防衛線も大変ですが、がんばってください
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投稿:ジヨージ 2016年12月31日おめでとう!
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投稿:ぽぽ 2016年12月31日コメントを書く