細密な絵付け魅力「横浜陶磁器」
2019年03月30日
細密な絵付けが特徴の横浜陶磁器
図録を出版したのは米カリフォルニア州在住の近藤裕美さん(68)。日系アメリカ人の夫と結婚して22歳で渡米してから25年ほど経ったある日、ロサンゼルス郊外の骨董品店で忠臣蔵の絵付けが施されたカップを見つけた。製造元を示す裏印が漢字で書かれており、調べると横浜から海外に輸出された品だとわかった。
近藤さんによると、明治に入り海外貿易の拠点となった開港地・横浜には外国向け陶磁器を輸出販売するために多くの画工・陶器商が集まり、一大産地となった。当時の欧米での流行に合わせ、卵の殻のように薄い「エッグシェル」と呼ばれる生地に日本の風景や花鳥図などを細密に絵付けしたカップとソーサーが輸出の主流となり、最盛期の明治30年ごろには画工の数は800人に達したという。しかし、1923年(大正12)の関東大震災が大きな打撃となり衰退。昭和初期にはほぼ作られなくなったという。
明治時代に海外の万博で受賞したこともある横浜陶磁器。職人の手で一つ一つ丁寧に描かれた繊細な絵付けと色合いに魅せられた近藤さんはこれまでに少なくとも1000種類を収集。「当時の日本中から集まった陶工や画工の技の集大成ともいえる逸品。忘れ去られている日本文化に光を当てたい」と図録の出版を思い立った。
図録(B5判変形256ページ、里文出版、3700円+税)は、これまでに集めた少なくとも1000種類のコレクションの中から代表的な約180種類を豊富な写真で紹介。関係者の子孫への聞き取りや文献で調べた横浜陶磁器の歴史や関連資料も収録した。
「時間をかけて丹念に絵を描いた職人さん達の技や思いがずっと、ずっと残るように願って本にまとめました」と近藤さん。記念展では、色とりどりの花びらを細やかな筆遣いで描いたティーセット、和服姿の女性が描かれたカップとソーサーなど58種類を展示。「職人さん達が絵付けしている様子を思い浮かべながら一つ一つじっくり鑑賞してほしい」と話している。
出版記念展は5月27日(月)まで午前10時〜午後4時。鑑賞料300円。火曜休館。4月7日(日)と5月12日(日)のいずれも午後2時から近藤さんを囲む茶話会(鑑賞料、飲み物代を含んで500円)を催す。TEL56・9933。(写真右は近藤裕美さんが出版した『近代 横浜の輸出陶磁器』。同左は展示品の一例)
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年3月30日号(2319号) 1面 (5,787,234byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
第32回赤穂民報習字紙上展の入賞者 世界中からアートマイル 五輪前夜祭で展示へ 卵の殻が美しいアート作品に [ 文化・歴史 ] 2020年03月05日女性たちによる絵画展 [ 文化・歴史 ] 2020年03月02日メイプル写友会 28日からグループ展 [ 文化・歴史 ] 2020年02月26日新宮町で「西播磨のやきもの」展 [ 文化・歴史 ] 2020年02月23日歴史探訪の会 新入会員を募集 赤穂緞通の工房ギャラリー開設 [ 文化・歴史 ] 2020年02月21日美術家連合会展 5部門26人出品 [ 文化・歴史 ] 2020年02月19日赤穂美術協会 21日から小品展 [ 文化・歴史 ] 2020年02月19日樫本大進さん4月赤穂公演中止に [ 文化・歴史 ] 2020年02月18日北前船寄港地7市町 日本遺産シンポ22日 市ジュニアバンド 16日に第1回定演 特別支援学級のふれあい作品展 坂越出身の久保さん 赤穂ハイツで水彩画展 [ 文化・歴史 ] 2020年02月12日
コメントを書く