山鹿素行のお話(6)素行先生による武士道等の教え(その二)
2019年08月24日
万治3年(1660年)、39歳になった山鹿素行は、ますます学問への探求心が旺盛になり、とうとう赤穂藩に仕えることを窮屈に感じ、禄を辞することにします。この頃までに『陣中諸法度』『家訓条目』『或問図説』『古今戦略考』『五万石人数積』『懐中便覧』等を著作しています。
素行が赤穂藩を辞職したことを知った江戸住みの津軽、松浦、山口、本多、大村、土屋、戸田、岡野らの大名や旗本は大喜びし、素行に兵学の講義を受けたいと要請が殺到します。こうして、再び門人が増え講義内容の質と量が高まってくると、門人らに講義内容を編纂しようとする動きが現れ、素行44歳の時『山鹿語類』という全45巻の立派な本が完成しました。
その内容は、君臣の行うべき正しいすじみちや武士道ばかりではなく、人生全般の条理を多くの実例によって教えたものであり、例えば「人は永遠の時の流れの中で、限られた生命として生きていますが、それは一秒一分から一時を努め励み充実することによって成り立つもので、その瞬間瞬間の積み重ねが一日となり、百日となり、何年何十年と経ていく人の命だから、人としての覚悟は(一日だけの命)と思い切り真剣に学び働くことが大切であって、そうすることが真に人がよく生きることだ」という文があります。
また、「人の生死は天命によるものであるが、常に死すべきの義がある時は従容として死につき、生きて義の効用があるならば、一時の恥を忍んでも生きるという死生を越えた道を守って生きなさい」とあります。これはすなわち、叡智によって修養を積み、生と死は一つのものと観じて正しく生きることの真理を説いているのです。『収容所群島』でソビエト連邦の体制批判をし、国外追放処分を受けたロシアのノーベル文学賞作家のソルジェニーツィンは、この素行の武士道哲学に非常に共鳴し絶賛しています。
こうして素行の学問は完成されつつありますが、その裏側ではひたひたと暗雲が渦巻きだし、風雲急を告げる事態となっていたのです。素行危うし!
掲載紙面(PDF):
2019年8月24日号(2337号) 3面 (11,489,880byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
素行が赤穂藩を辞職したことを知った江戸住みの津軽、松浦、山口、本多、大村、土屋、戸田、岡野らの大名や旗本は大喜びし、素行に兵学の講義を受けたいと要請が殺到します。こうして、再び門人が増え講義内容の質と量が高まってくると、門人らに講義内容を編纂しようとする動きが現れ、素行44歳の時『山鹿語類』という全45巻の立派な本が完成しました。
その内容は、君臣の行うべき正しいすじみちや武士道ばかりではなく、人生全般の条理を多くの実例によって教えたものであり、例えば「人は永遠の時の流れの中で、限られた生命として生きていますが、それは一秒一分から一時を努め励み充実することによって成り立つもので、その瞬間瞬間の積み重ねが一日となり、百日となり、何年何十年と経ていく人の命だから、人としての覚悟は(一日だけの命)と思い切り真剣に学び働くことが大切であって、そうすることが真に人がよく生きることだ」という文があります。
また、「人の生死は天命によるものであるが、常に死すべきの義がある時は従容として死につき、生きて義の効用があるならば、一時の恥を忍んでも生きるという死生を越えた道を守って生きなさい」とあります。これはすなわち、叡智によって修養を積み、生と死は一つのものと観じて正しく生きることの真理を説いているのです。『収容所群島』でソビエト連邦の体制批判をし、国外追放処分を受けたロシアのノーベル文学賞作家のソルジェニーツィンは、この素行の武士道哲学に非常に共鳴し絶賛しています。
こうして素行の学問は完成されつつありますが、その裏側ではひたひたと暗雲が渦巻きだし、風雲急を告げる事態となっていたのです。素行危うし!
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年8月24日号(2337号) 3面 (11,489,880byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 文化・歴史 ]
リニューアル中の枝条架を見学 [ 文化・歴史 ] 2017年08月20日画塾「雨聲会」有志が日本画展 [ 文化・歴史 ] 2017年08月18日粟田哲也遺作展「古代文明からのいざない」 [ 文化・歴史 ] 2017年08月12日「赤穂コールドロン」研究者が解説 「京版画の大御所」が描いた古都の四季 [ 文化・歴史 ] 2017年07月31日宇宙探査の歩みテーマに特別展 [ 文化・歴史 ] 2017年07月29日第55回県展 赤穂から入選4人 [ 文化・歴史 ] 2017年07月29日市民文化祭 短歌と俳句募集 天神祭で書道パフォーマンス [ 文化・歴史 ] 2017年07月26日赤穂の碁会所で腕磨きプロに [ 文化・歴史 ] 2017年07月22日「くぼっち先生」2冊目のコラム本 [ 文化・歴史 ] 2017年07月22日市美術展5部門で作品募集 早世の箏曲演奏家 仲間が追悼公演 [ 文化・歴史 ] 2017年07月08日「生命の樹」テーマ 現代アート展 [ 文化・歴史 ] 2017年07月07日塩屋荒神社 奉献俳句の特選句 [ 文化・歴史 ] 2017年07月07日
コメントを書く