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時重ねた魅力 築古物件を店舗に再生

 2020年08月29日 
落ち着いた雰囲気が人気の古民家カフェ「ふっくらざっぱ」
 古い空き家や空き店舗を改修して再利用する取り組みが赤穂市内で増えている。
 昨年5月には加里屋で明治大正期の日本家屋がホテルに再生。さらに、今年6月には福浦で古民家カフェ、7月には坂越で古い空き店舗を改修したテイクアウト飲食店がオープンした。使われずに解体撤去される可能性もあった建物が、人が集まるスポットとして生まれ変わっている。
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■時間ゆったり古民家ならでは
 築100年以上の古民家を改修して今年6月に福浦にオープンしたカフェと洋服・雑貨の店「ふっくらざっぱ」。落ち着いた雰囲気の中、ランチやお茶が楽しめる。
 オーナーは「zappa(ざっぱ)」のブランド名で姫路、神戸でカフェや洋服・雑貨販売を手掛ける野阪愛由(あゆ)さん(35)=姫路市石倉=。昨年12月、福浦在住の常連客女性から紹介された木造瓦葺き2階建て空き家をリノベーションした。
 傷んでいた壁や床は張り替えたが、梁や柱はそのまま活かし、土間や縁側などがある間取りも旧来のまま。アンティークなソファーのテーブル席や個室の庭座敷、外を眺められる縁側席など25席ほどあり、モーニングセット(500円+税)、旬の地元食材を調理したランチ(1000円+税)などを提供している。二間続きの和室では、元々古民家にあった長持にオリジナルの洋服やアクセサリーなどを並べて販売しており、女性客に人気だという。
 野阪さんは「古民家ならではの、ゆったりした雰囲気とスタッフとの交流を楽しんでもらえれば」と話している。
 国道250号「福浦橋」交差点を北へ約150メートル入り左折した右手。木・金・土曜の午前9時〜午後5時営業。Tel080・7690・5972。
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■手をかけるほどに愛着
 坂越の旧坂越浦会所近くに7月にオープンした「ノンキピクニック」は大正時代に建築された店舗をリニューアル。サンドイッチ、おにぎりなどをテイクアウト中心に提供する店だ。
 2年前まで理髪店だった木造2階建て店舗を、家具職人でもある店主の橋本正人さん(60)=真殿=が妻の愛さん(44)と相談しながら1年がかりで改修。時代を感じさせる「BARBAR」の文字看板、天井クロスなどレトロなトーンを残しつつ再生した。
 店がある一帯は漆喰塗りの白壁や格子のある古民家が残り、1992年に市街地景観形成地区に指定。近年は町並み散策の観光客が増え、平日に観光バスが訪れるようになっていたという。
 橋本さん夫妻は同じ通り沿いで、いずれも古民家を改修したカフェ「暖木(のんき)」と雑貨店「紡木(つむぎ)」を営む。3店舗目のコンセプトは「手ぶらでピクニックできるお店」(愛さん)といい、赤穂の塩で味付けした「赤穂の塩むすび」(160円)、出汁巻卵のわさびマヨサンド(380円)など。「こうじスムージー」(750円)は自家米の麹からつくった甘酒をベースに砂糖を使わずにつくったこだわりのメニューだ。
 「手をかければかけるほど愛着がわく」と古い建物を再生する魅力を語る正人さん。愛さんも「建物自体に新築にはない味わいがある」と話す。同じ通りで、もう1軒の古民家を店舗に改修するプランもあるといい、町並み景観を活かした地域活性化につながりそうだ。
 当面は土日祝のみ午前11時〜午後5時に営業。Tel25・5444。
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■まずは保全して活用の道探って
 兵庫県のまとめでは、県内の古民家(昭和25年以前に建てられた木造家屋)は2008年時点で約7万7500戸あり、大阪府に次いで全国で2番目に多い。しかし、5年後の調査では約1割が減少していた。
 県は古民家を有効活用して町並み景観を維持・継承することが地域の活性化につながるとして、地元市町が同額を補助することを条件に古民家改修費を助成する制度を2007年に創設。赤穂市も昨年10月から同制度を導入した。築50年以上の古民家を耐震化して地域交流施設や賃貸住宅として活用する場合、条件を満たせば最大666万円(歴史的建築物は1000万円)の助成が受けられる。
 加里屋の古民家ホテル改修を手掛けたNPOまちなみ活用支援ネットの酒井宏一理事長=たつの市=は「活用方法が見い出される前に老朽化が進み、価値ある古民家が失われていくのは、まちにとって損失」と惜しむ。「簡単な応急処置で建物を長持ちさせて活用の道を検討できるケースもある。所有者には解体撤去を決める前に再生を選択肢に考えてほしいし、行政は修繕費の補助制度も導入すべきではないか」と指摘している。
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掲載紙面(PDF):
2020年8月29日号(2383号) 1面 (7,907,227byte)
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