300年語り継がれる「打ち首の三義人」
2020年12月12日
地蔵堂の改修完成法要に集まった「塩屋三義人地蔵保存会」のみなさん
『幕末赤穂の一断面』(浜田稔也著)などによると、事件の舞台となった湯ノ内山は有年庄をはじめ8か村が生活に必要な薪や木材などを共同採取する入会山で、塩屋村には「山札3枚」(一日につき柴3荷相当)の権利が与えられていた。享保5年2月、山札なしで柴を持ち帰ろうとした塩屋村民が有年の山番に見つかって柴や鎌などを取り上げられたのをきっかけに紛争に発展した。
奉行所から仲介役を委任された大庄屋は、「山が少なく住民の多い塩屋村の実情を察して、なんとか山札を50枚に増やしてやってほしい」と持ちかけ、有年庄側は「過去にも不法入山は度々あったので許せない」などとして譲らなかった。春以降、日々の炊事用の柴にも事欠く事態となっていた塩屋の村人たちは10月、組頭など数十人で加里屋の奉行所へ強訴。徒党の首謀格として村の有力者ら計14人が逮捕された。塩屋村の全世帯主656人が連印で赦免願いを提出したが、大半が領外追放となり、中心人物とされた五郎太夫、仁兵衛、権左衛門の3人が12月21日に打ち首となった。翌日には喧嘩両成敗として有年側の大庄屋ら5人に8日間の閉門が申し渡され、26日に塩屋村の山札を30枚とする誓約書が双方の間で交わされた。
その後、塩屋村の人たちは、処刑された3人の遺徳を永く後世に伝えようと3体の地蔵菩薩を建立。「山公事の地蔵さん」「打ち首の三義人」と呼んで供養した。地蔵堂は「塩屋交番前」交差点近くの阿弥陀堂の境内にあり、毎年12月20日に「果ての二十日」と呼ぶ慰霊法要を欠かさず執り行っている。
昨年8月には、地元住民による「塩屋三義人地蔵保存会」(眞殿二充会長)が発足。地蔵堂の基礎を補修し、9日に完成法要を行った。また、「『塩のまち』塩屋の歴史を学ぶ会」(木村音彦会長)は事件を再検証する調査報告書をこのほどまとめた。
同報告書によれば、事件から159年後の明治12年(1879)、塩屋村民が要望していた山札50枚が公認された。同42年(1909)には有年庄と塩屋庄の入会権が57対43に改訂。昭和12年(1937)の町村合併に伴って塩屋荒神社、大津八幡神社、新田日吉神社の共有林となり、現在も地元に恩恵をもたらしている。
今年も12月20日(日)午後6時から慰霊法要が行われる。報告書をまとめた地元史に詳しい八木洋造さん(87)と大西平八郎さん(87)は「三地蔵は語り継ぐべき地元の歴史的文化財。末永く大切にしてほしい」と語った。
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2020年12月12日号(2396号) 1面 (4,312,314byte)
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