専門医不在でPET―CT休止 赤穂市民病院
2021年10月09日
6月から運用を休止している赤穂市民病院のPET―CT=病院提供
同病院は装置のメンテナンス費を削減するため9月末で保守契約を打ち切り、多額の予算を投じて整備した設備が塩漬けとなっている。
PET―CTは、がん細胞に集まる性質の薬剤を体内に注入して分布を確かめるPET(ポジトロン断層撮影)と体内臓器を画像化するCT(コンピューター断層撮影)を一体化した装置。悪性腫瘍の有無を全身の臓器で高精度に診断でき、治療効果判定や転移、再発のチェックに効果を発揮するとされる。ただし、核医学診断の経験が3年以上で所定の研修を修了した常勤の専門医が1名以上いなければ診療報酬を算定できない。
同病院には二期構想による新棟建設に伴い2017年8月に導入された。当初の事業収支シミュレーションでは、「1日当たり3件」の検査実施によって年間730件前後の稼働を想定。しかし、実際は最も多かった18年度で307件で、昨年度は211件にとどまった。収入から検査に必要な薬品費を差し引いた収益は1件当たり「2万円程度」だといい、人件費や年間2600万円かかる保守委託料の負担が重くのしかかっていたという。
稼働率向上を図ろうと、今年4月からは検診費を9万3500円から7万5000円に値下げしたが、5月末で専門医が退職。同病院の話では、後任の採用もかなわず、専門医が勤務する他院と連携した遠隔診断も「設備の整備に多額の費用と時間がかかる」(医療課)として断念した。別の医師が資格を取得することも考えたが、「年1回の資格申請が5月で終わっていた」という。現在はPET―CT検査が必要な患者には他院での検査を紹介している。
同病院は2007年、全国どこでも質の高いがん医療を提供するための「地域がん診療連携拠点病院」に指定。PET―CTをめぐっては、「市民に質の高い医療を提供するために必要。先端的な医療環境で働きたいと考える医師の呼び込みにもつながる」などとして、採算面の不安に目をつぶって配備した経緯がある。しかし、市内の民間病院が2005年に先行して導入していたこともあって検査件数は伸び悩んだ。
専門医の退職による運用休止は、先月30日の決算特別委員会で土遠孝昌議員の「PET―CTの稼働率が低い」との指摘に対する病院の答弁で明らかになった。
同病院は「PET―CTが地域医療に必要であるとの認識に変わりはない。保守点検を再開すれば稼働できる」(同課)とする一方、「経営検討委員会で経営見直しを検討していただいている現在の経営状況を考えると、経費を捻出することは難しい」とも話している。
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2021年10月9日号(2434号) 2面 (4,176,368byte)
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投稿:あのー 2021年10月09日コメントを書く