《市民病院医療事故多発》「患者と家族、市民におわび」
2022年06月28日
赤穂市民病院(高原秀典院長)で6月28日、2019年から20年にかけて当時在籍していた脳神経外科の同一医師による医療事故に関する記者会見があった。
病院は、約5か月半の間に医療過誤を含む8件の医療事故が相次いだことについて「もっと早く事故に気付ければ被害に遭う方が少なかったのは事実」と非を認め、病院開設者の牟礼正稔市長や寺谷進・病院事業管理者など病院幹部が「医療事故に遭われた患者、家族の皆様には大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
会見では、これまで「係争中」や「個人情報」などを理由に明らかにしていなかった医療事故8件のリストを公表。今年2月と3月に開催した「院内医療事故調査委員会」で8件とも医療事故であると正式決定したと説明し、医療事故を食い止められなかった要因として、事故報告の遅れや院内ガバナンスの機能不全、不十分な医療モラルなどを挙げた。一方、3月に一旦公表していた「さらに3件の医療事故」については「検証の結果、いずれも医療事故ではなかった」と撤回した。
事故調が医療事故から2年以上経つまで開かれなかった理由を「医療安全推進室としては(藤井隆)院長に事故調を開くべきと進言していたが、院長の判断で開かれなかった」(高尾雄二郎副院長兼医療安全推進室長)と弁明。それまでは「院長が非公式に検討」を繰り返していたという。2021年3月から6月にかけて「公式的な会議」として「検証会議」を3回開いたと明らかにしたものの、メンバー10人の中に脳神経外科の専門知識を持つ者は一人も「入っていない」とした。
昨年12月に「8件とも実施した」と発表していた外部検証は「専門性が高い脊椎系」の3件のみで、残りの医療事故は院長や同病院の外科医による内部検証だったことを認めた。外部検証の専門医が「損傷の原因は稚拙で荒いドリル操作につきる」「基本的な確認作業ができていない」などと指摘した2019年10月の医療事故(75歳女性患者の手術中、ドリルで頸髄を損傷)について、「ドリルの操作は確かに稚拙だが、間違った手順でオペを行ったわけではない。過誤と言うほどのものではない」と改めて過失を否定した。
医療事故を起こした男性医師(44)=2021年8月で依願退職=が、手術と侵襲的検査を中止するよう院長から指示された2020年3月1日以降も指示に反して手術1例と複数の侵襲的検査を行っていたことを明らかにし、手術室にいたスタッフらが男性医師が手術や侵襲的検査を禁止されていることを知りながら誰も止める者がいなかったと認めた。また、違反して行われた検査について「総数はピックアップしているが、正確な件数はこの場では伝えられない」「正直なところ、どういう考えでやっていたかは把握できていない」と調査の不十分さを露呈した。
男性医師を採用した目的を問われ、「当時は脳神経外科の常勤医が2人で、さらに良い治療、例えば救急対応が可能になると考えた」(喜多晃事務局長)と答弁。採用時に男性医師の実績や経験を調査したかどうかについては「個人情報なので回答を控える」として明らかにしなかった。
医療事故の検証結果報告書をめぐり、男性医師の上司にあたる脳神経外科の科長が「虚偽の公式文書を提出した」として、別の報告書を提出したとされる問題では、「二つの文書が存在することは事実」(高尾氏)と認め、「医療安全から聞いた話によると、当時診療科長と当該医師との人間関係でかなりトラブルがあった」と語った。
医療事故の患者への説明については、「病院としては説明したものと認識している。もし、不十分であれば、改めて説明するし、不十分と言われる批判は甘んじて受けるつもり」と述べた。また、裁判所に医療事故報告書などを資料提出することや記者会見を開くことを患者側に伝えていなかったことがわかり、「改めるべきであれば改める。今思えば伝えるべきだった」(喜多氏)と反省した。
「今後の対応」として、▽リスクマネジメントおよび院内ガバナンスをこれまで以上に機能させるため、医療安全対策実施要項の改訂を行い、全職員への周知と浸透を徹底する▽ガバナンス検証委員会の報告提言を踏まえ、安全安心な医療の提供へ一層の取り組みを行う―と語ったほか、現在係争中となっている医療過誤訴訟について、「すでに過失は認めている。裁判の長期化を回避することで原告の負担の軽減を図ることができるのではないか」などとして和解を申し出る意向を示した。
* * *
追加取材と確認を踏まえて記事を大幅に加筆しました。(2022年6月30日17時00分)
関連サイト:
【関連記事】記者会見の一問一答(赤穂民報まとめ)
【関連記事】嘘や隠し事あるままで信頼回復はありえない
掲載紙面(PDF):
2022年7月2日号(2468号) 1面 (8,006,827byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
赤穂市民病院脳神経外科における医療事故に関する記者会見
病院は、約5か月半の間に医療過誤を含む8件の医療事故が相次いだことについて「もっと早く事故に気付ければ被害に遭う方が少なかったのは事実」と非を認め、病院開設者の牟礼正稔市長や寺谷進・病院事業管理者など病院幹部が「医療事故に遭われた患者、家族の皆様には大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
会見では、これまで「係争中」や「個人情報」などを理由に明らかにしていなかった医療事故8件のリストを公表。今年2月と3月に開催した「院内医療事故調査委員会」で8件とも医療事故であると正式決定したと説明し、医療事故を食い止められなかった要因として、事故報告の遅れや院内ガバナンスの機能不全、不十分な医療モラルなどを挙げた。一方、3月に一旦公表していた「さらに3件の医療事故」については「検証の結果、いずれも医療事故ではなかった」と撤回した。
事故調が医療事故から2年以上経つまで開かれなかった理由を「医療安全推進室としては(藤井隆)院長に事故調を開くべきと進言していたが、院長の判断で開かれなかった」(高尾雄二郎副院長兼医療安全推進室長)と弁明。それまでは「院長が非公式に検討」を繰り返していたという。2021年3月から6月にかけて「公式的な会議」として「検証会議」を3回開いたと明らかにしたものの、メンバー10人の中に脳神経外科の専門知識を持つ者は一人も「入っていない」とした。
昨年12月に「8件とも実施した」と発表していた外部検証は「専門性が高い脊椎系」の3件のみで、残りの医療事故は院長や同病院の外科医による内部検証だったことを認めた。外部検証の専門医が「損傷の原因は稚拙で荒いドリル操作につきる」「基本的な確認作業ができていない」などと指摘した2019年10月の医療事故(75歳女性患者の手術中、ドリルで頸髄を損傷)について、「ドリルの操作は確かに稚拙だが、間違った手順でオペを行ったわけではない。過誤と言うほどのものではない」と改めて過失を否定した。
医療事故を起こした男性医師(44)=2021年8月で依願退職=が、手術と侵襲的検査を中止するよう院長から指示された2020年3月1日以降も指示に反して手術1例と複数の侵襲的検査を行っていたことを明らかにし、手術室にいたスタッフらが男性医師が手術や侵襲的検査を禁止されていることを知りながら誰も止める者がいなかったと認めた。また、違反して行われた検査について「総数はピックアップしているが、正確な件数はこの場では伝えられない」「正直なところ、どういう考えでやっていたかは把握できていない」と調査の不十分さを露呈した。
男性医師を採用した目的を問われ、「当時は脳神経外科の常勤医が2人で、さらに良い治療、例えば救急対応が可能になると考えた」(喜多晃事務局長)と答弁。採用時に男性医師の実績や経験を調査したかどうかについては「個人情報なので回答を控える」として明らかにしなかった。
医療事故の検証結果報告書をめぐり、男性医師の上司にあたる脳神経外科の科長が「虚偽の公式文書を提出した」として、別の報告書を提出したとされる問題では、「二つの文書が存在することは事実」(高尾氏)と認め、「医療安全から聞いた話によると、当時診療科長と当該医師との人間関係でかなりトラブルがあった」と語った。
医療事故の患者への説明については、「病院としては説明したものと認識している。もし、不十分であれば、改めて説明するし、不十分と言われる批判は甘んじて受けるつもり」と述べた。また、裁判所に医療事故報告書などを資料提出することや記者会見を開くことを患者側に伝えていなかったことがわかり、「改めるべきであれば改める。今思えば伝えるべきだった」(喜多氏)と反省した。
「今後の対応」として、▽リスクマネジメントおよび院内ガバナンスをこれまで以上に機能させるため、医療安全対策実施要項の改訂を行い、全職員への周知と浸透を徹底する▽ガバナンス検証委員会の報告提言を踏まえ、安全安心な医療の提供へ一層の取り組みを行う―と語ったほか、現在係争中となっている医療過誤訴訟について、「すでに過失は認めている。裁判の長期化を回避することで原告の負担の軽減を図ることができるのではないか」などとして和解を申し出る意向を示した。
* * *
追加取材と確認を踏まえて記事を大幅に加筆しました。(2022年6月30日17時00分)
医療過誤を含む医療事故8件を正式に認めて謝罪する牟礼正稔市長と病院幹部ら
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2022年7月2日号(2468号) 1面 (8,006,827byte)
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コメント
それと、先のコメントにもありましたが、牟礼市長の態度は酷すぎます!謝罪会見なのに被害者への謝罪より先に黒字になってるとか必要ないです!
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投稿:K 2022年07月02日だから報道というやつは、まるで犯人捜しのように性別や勤務状況、発言内容を特定しようと同じ質問を繰り返す。どこの報道がいち早く病院組織のほころびや怠慢を炙り出せるか、罪を認めさせるかが過熱していき、『責任の所在をあきらかにさせることこそが正義』という考えから自社の報道姿勢を正当化し過大視する傾向が強く伺える。
それに触発されて一般市民も社会的正義を求め病院へ詰め寄るし、ネット上では全く関係のない人まで不公正が行われているのではと直感的、感覚的に否定的な感情を抱き、いつもより攻撃的な反応を起こしていく。
そして赤穂市民は報道から得た情報が一様に正義だと思い込み、公の奉仕者であると信じている市長や市民病院の体制へ公平性を切望し、自分勝手で玉虫色な対応しかしてこなかった者たちへ、つまり市長や病院経営陣に次第に否定的感情を溜めていき、無責任な対応だと思う人たちを罰したいという欲求に駆られているのだ。
そうして、市民の間ではしだいにモラル警察が増え正義感を振りかざすことの後押しとなり、この赤穂の地に育まれてきた寛容さとおおらかさが次第に失われていく。ここに一連の記事が報道され続けることは、市民にとって制裁的報道が正義とだと考える傾向を強めさせることになるのではと危惧している。
これだけは言える。
報道記事を書く者は、犯人捜しに自分が貢献しているという充実感やワクワク感、情報を得てその不正や間違いを公表できたという達成感がいたく心地よいのであろう。
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投稿:人の噂も七十五日 2022年07月01日28 10
投稿:あこう 2022年06月30日全国の国民が観る事が出来るんですよね。
赤穂市長さんの情けなさも全国に流れるのですよね。
出だしの市民病院の収入金がいくらかがこの謝罪会見に必要ですか?
謝罪会見なら、一番に何より被害者へのお詫びの言葉でしょ!
コメントがあがっている様に本当に人事の様で、こんな大事な会見急に決まった訳もないだろうに事前に資料を把握しとけばいいものだろうけど、どの会見みても情けないの一言。何を聞かれても知らぬで、決済文もめくらばんおしてますと言っているのと同じですね。映像観ていても、おどおどしている姿が情けない感じです。
来年の市長選には,救世主の出現を願います。
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投稿:赤穂市民 2022年06月30日自治体独自で先手の対応をしてほしいなとコロナ禍で他の自治体等をみて、更に強く感じる日々です。
24 11
投稿:市民 2022年06月30日市長なんか私は関係ないと言わんばかりの態度に思えた。動画を観て正直、腹が立った!
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投稿:喝 2022年06月29日動画を見ました。
ほんとにね。
病院事業管理者も雇ったし、いよいよ「自分は関係ない」と言い張るのでしょう。
この会見中にどんな重要なメールが入ったのでしょうね。
子供が授業中にスマホ見ていたら、取り上げられるのに、
年がいっただけの子供は、取り上げられないのです。
72 5
投稿:赤穂の老人 2022年06月29日元執刀医の徹底的な責任追及と、病院ぐるみの隠蔽体質の改善、遺族への保証、医師確保の際の履歴の確認、等を明確にしないと、このままでは市民の信頼の失墜は免れないと私は思います。
22 19
投稿:赤穂君 2022年06月29日その現場で今も必死に頑張ってる
医療従事者がたくさんいるんです。
謝罪会見にはその当時の医者は必要ないんですか?
当の本人がどこまで反省してるかですね。
39 17
投稿:🫡 2022年06月29日31 30
投稿:Run 2022年06月29日75 6
投稿:一市民 2022年06月29日31 18
投稿:taka 2022年06月29日コメントを書く