議会改革度ランキング 赤穂は全国695位
2022年07月09日
全国の地方議会を対象にした「議会改革度調査2021」(調査主体・早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会)の結果がこのほどまとまり、赤穂市議会は調査に回答した1355議会中695位にランクされた。
取り組み状況を数値化したスコアは567点(9550点満点)で全国平均の686点を下回った。
この調査は、議会が果たすべき役割として▽情報共有(本会議などの議事録や交際費・視察結果の公開状況と検証)▽住民参画(傍聴のしやすさ、議会報告会などの実施、住民意見の聴取)▽議会機能強化(議員間討議、当局の反問権、他団体との連携など)を3本柱に挙げ、改革度合いを数値化して順位付けするもの。議会改革の取組状況や傾向を把握する目的で全国の都道府県と市町村の議会を対象に2010年から実施されている。
同研究会が公表した総合と分野別の上位300位ランキングに赤穂市議会の名はなく、議会事務局に確認したところ、総合695位(前回587位)だった。分野別では▽情報共有439位(同408位)▽住民参画430位(同382位)▽機能強化821位(同719位)で、いずれも前回調査よりも順位が下がった。
全国平均点との比較では、「情報共有」は1520点中192点(全国平均158・7点)、「住民参画」は2440点中150点(同135・1点)で全国平均を上回った一方、最も配点の大きい「機能強化」は5590点中225点(同392・3点)で下回った。
今回の調査は1788議会を対象とし回答率は75・8%だった。全国総合1位は3473点の取手市議会(茨城県)で2年連続のトップ。兵庫県内1位は2413点の西脇市議会で、近隣自治体では上郡町議会が1122点で219位、備前市議会が1030点で269位となった。
同研究会は今回の調査から見える傾向を「新型コロナの感染拡大により、住民の意見を集めたり、意見を持ち寄って話し合ったりすることが難しい中、議会報告会のネット配信やオンライン会議を活用した住民対話などデジタル・オンライン化の動きが活発化した」と分析する。スコア分布では「上位層では上昇したものの、下位層では低下している」といい、「議会改革に積極的に取り組んでいる議会と消極的な議会との差が拡がりつつある」と自治体間の格差拡大を懸念している。
* * *
議会事務局の職員数に差も
2年連続で全国1位の取手市議会は、一体どのような取組を実行しているのか。
同市議会ホームページに紹介されている取り組みを見てみると、2020年の時点でオンラインによる委員会出席を可能にする条例と規則を改正。また、例年は対面で行っている中学生との協働事業や市民との意見交換会もオンラインに切り替えた。
デジタル化にも積極的で、2006年に会議録作成業務の業者委託を廃止し、AI音声認識システムを導入。リアルタイムでAIが認識した文字を議会事務局職員が修正し、当日の会議閉会とほぼ同時に議事録の初校が出来上がるという。本会議のライブ配信にはAI音声認識システムを用いて発言内容がほぼ同時に字幕表示される。システム開発企業と協定を結び、使用料は無料。さらに昨年度には新たな試みとしてAIが誤認識した箇所の修正作業に市民が自宅からオンラインで参加する「市民リライター」も実施した。
委員会傍聴の自由度も高く、受付カードに氏名と住所を記入すれば、いつでも入室できる。本会議と同様、委員会の資料も当日朝にはホームページで公開。また、委員会の許可を得て傍聴者が発言できるルールも条例で規定している。委員会の様子は視聴者が見たい方向に画面を動かせる360度カメラでライブ配信し、本会議と同じくそのままアーカイブ映像をユーチューブで視聴できる。
赤穂市議会では、委員会の傍聴は開会10分前までに受付が必要。資料は配付されるが、委員会終了後に返却しなければならない。委員会中の傍聴者の発言は不可。委員会のライブ配信は数年前から提案はあるものの実現に向けた具体的な進展はない。
もっとも、取手市の人口は10万人を超え、赤穂市の2倍以上。議員定数24人、議会事務局職員数8人、議会費2億6183万円は、いずれも赤穂市議会(議員定数18人、議会事務局職員数5人、議会費1億9417万円)より規模が大きい。全国総合2位の登別市議会(北海道)は人口4万5000人台、議員定数19人、議会費1億5062万円で委員会ライブ配信や議会報告会といった取り組みを導入しているが、議会事務局の職員数は7人で赤穂市より正職員が2人多い。
* * *
議長「来年度中に全体的な結論を」
赤穂市議会も議会活性化の協議は継続して行っている。2008年度までは議会活性化検討協議会を設置して政治倫理条例を制定。その後は議会運営委員会で検討を重ねてきた。
過去5年間の協議回数は計35回で、▽政務活動費の領収書公開▽本会議ネット中継をタブレット、スマホでも閲覧可能に▽市議会業務継続計画の策定などが実現した。
昨年度は各会派が5項目を上限にアイデアを持ち寄り、それぞれの会派が最も高い優先順位を付けた課題について協議した。▽議員へのファクス連絡を電子メールへ変更―が決まった(今年度中に導入見通し)が、▽委員会のインターネット中継・録画放映▽議会報告会及び意見交換会の実施▽議会のペーパーレス化―などは「継続して検討(研究)」として持ち越した。
今後は前年度からの申し送りとなっている「議会・議員のあり方」をテーマに話し合う予定。議員定数や議員報酬についても検討が見込まれ、持ち越しとなった課題については関連性のあるものを必要に応じて協議するという。
山田昌弘議長は「結論ありきではなく、どうすれば議会がより活性化していくかという観点で協議を進め、2023年度中には全体的な結論を出せればと考えている。特に委員会討議のあり方については議会活性化の核になると思われるので、今年度中に取りまとめたい」と展望している。
掲載紙面(PDF):
2022年7月9日号(2469号) 1面 (4,834,754byte)
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取り組み状況を数値化したスコアは567点(9550点満点)で全国平均の686点を下回った。
この調査は、議会が果たすべき役割として▽情報共有(本会議などの議事録や交際費・視察結果の公開状況と検証)▽住民参画(傍聴のしやすさ、議会報告会などの実施、住民意見の聴取)▽議会機能強化(議員間討議、当局の反問権、他団体との連携など)を3本柱に挙げ、改革度合いを数値化して順位付けするもの。議会改革の取組状況や傾向を把握する目的で全国の都道府県と市町村の議会を対象に2010年から実施されている。
同研究会が公表した総合と分野別の上位300位ランキングに赤穂市議会の名はなく、議会事務局に確認したところ、総合695位(前回587位)だった。分野別では▽情報共有439位(同408位)▽住民参画430位(同382位)▽機能強化821位(同719位)で、いずれも前回調査よりも順位が下がった。
全国平均点との比較では、「情報共有」は1520点中192点(全国平均158・7点)、「住民参画」は2440点中150点(同135・1点)で全国平均を上回った一方、最も配点の大きい「機能強化」は5590点中225点(同392・3点)で下回った。
今回の調査は1788議会を対象とし回答率は75・8%だった。全国総合1位は3473点の取手市議会(茨城県)で2年連続のトップ。兵庫県内1位は2413点の西脇市議会で、近隣自治体では上郡町議会が1122点で219位、備前市議会が1030点で269位となった。
同研究会は今回の調査から見える傾向を「新型コロナの感染拡大により、住民の意見を集めたり、意見を持ち寄って話し合ったりすることが難しい中、議会報告会のネット配信やオンライン会議を活用した住民対話などデジタル・オンライン化の動きが活発化した」と分析する。スコア分布では「上位層では上昇したものの、下位層では低下している」といい、「議会改革に積極的に取り組んでいる議会と消極的な議会との差が拡がりつつある」と自治体間の格差拡大を懸念している。
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議会事務局の職員数に差も
2年連続で全国1位の取手市議会は、一体どのような取組を実行しているのか。
同市議会ホームページに紹介されている取り組みを見てみると、2020年の時点でオンラインによる委員会出席を可能にする条例と規則を改正。また、例年は対面で行っている中学生との協働事業や市民との意見交換会もオンラインに切り替えた。
デジタル化にも積極的で、2006年に会議録作成業務の業者委託を廃止し、AI音声認識システムを導入。リアルタイムでAIが認識した文字を議会事務局職員が修正し、当日の会議閉会とほぼ同時に議事録の初校が出来上がるという。本会議のライブ配信にはAI音声認識システムを用いて発言内容がほぼ同時に字幕表示される。システム開発企業と協定を結び、使用料は無料。さらに昨年度には新たな試みとしてAIが誤認識した箇所の修正作業に市民が自宅からオンラインで参加する「市民リライター」も実施した。
委員会傍聴の自由度も高く、受付カードに氏名と住所を記入すれば、いつでも入室できる。本会議と同様、委員会の資料も当日朝にはホームページで公開。また、委員会の許可を得て傍聴者が発言できるルールも条例で規定している。委員会の様子は視聴者が見たい方向に画面を動かせる360度カメラでライブ配信し、本会議と同じくそのままアーカイブ映像をユーチューブで視聴できる。
赤穂市議会では、委員会の傍聴は開会10分前までに受付が必要。資料は配付されるが、委員会終了後に返却しなければならない。委員会中の傍聴者の発言は不可。委員会のライブ配信は数年前から提案はあるものの実現に向けた具体的な進展はない。
もっとも、取手市の人口は10万人を超え、赤穂市の2倍以上。議員定数24人、議会事務局職員数8人、議会費2億6183万円は、いずれも赤穂市議会(議員定数18人、議会事務局職員数5人、議会費1億9417万円)より規模が大きい。全国総合2位の登別市議会(北海道)は人口4万5000人台、議員定数19人、議会費1億5062万円で委員会ライブ配信や議会報告会といった取り組みを導入しているが、議会事務局の職員数は7人で赤穂市より正職員が2人多い。
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議長「来年度中に全体的な結論を」
赤穂市議会も議会活性化の協議は継続して行っている。2008年度までは議会活性化検討協議会を設置して政治倫理条例を制定。その後は議会運営委員会で検討を重ねてきた。
過去5年間の協議回数は計35回で、▽政務活動費の領収書公開▽本会議ネット中継をタブレット、スマホでも閲覧可能に▽市議会業務継続計画の策定などが実現した。
昨年度は各会派が5項目を上限にアイデアを持ち寄り、それぞれの会派が最も高い優先順位を付けた課題について協議した。▽議員へのファクス連絡を電子メールへ変更―が決まった(今年度中に導入見通し)が、▽委員会のインターネット中継・録画放映▽議会報告会及び意見交換会の実施▽議会のペーパーレス化―などは「継続して検討(研究)」として持ち越した。
今後は前年度からの申し送りとなっている「議会・議員のあり方」をテーマに話し合う予定。議員定数や議員報酬についても検討が見込まれ、持ち越しとなった課題については関連性のあるものを必要に応じて協議するという。
山田昌弘議長は「結論ありきではなく、どうすれば議会がより活性化していくかという観点で協議を進め、2023年度中には全体的な結論を出せればと考えている。特に委員会討議のあり方については議会活性化の核になると思われるので、今年度中に取りまとめたい」と展望している。
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