「ボートピア姫路」をはじめ、兵庫県内と東北地方で競艇の場外舟券売り場を運営している業者が、赤穂市が土地と建物を所有する商業施設「プラット赤穂」へ売り場を開設する計画を進めている。
　それを知った市民の間では、「市の建物にギャンブル施設を誘致するのはいかがなものか」「治安や雰囲気が悪くなりそう」などと批判的な意見がある一方、「手放しで歓迎はできないが、経済効果があるのなら」とする声から「駅周辺活性化の起爆剤になる」と積極的に誘致すべきとの主張までさまざまな反応がある。設置には市長、地元自治会の同意がそれぞれ必要。また、議会が「設置反対」の決議をした場合も国の許可が下りない取り決めになっており、それぞれの判断が注目される。
　計画を進めているのは、東京都中央区に本社がある「富士レックス」（小泉治雄社長）。もともとのホテル業に加え、昭和６２年からボートピア事業に乗り出し、姫路のほかに滝野（兵庫県加東市）、黒石（青森県黒石市）など５施設を直営または運営協力している。
　同社が場外舟券売り場の設置を計画しているのは、プラット赤穂の１階部分。面積約５９０平方メートルで、平成１９年７月に書店が退去してから２年間空きテナントとなっている。電車通学の高校生、大学生がすぐそばを通り、国道をはさんだ南東約３００メートルに赤穂小学校がある。
　計画概要では、１０口程度の舟券発売窓口を備えた小規模場外発売場（ミニボートピア）を開設。午前１０時から午後８時半ごろまで年間３６０日営業し、１日平均４００人の来場と年間約２０億円の売上げを見込む。
　同社によると、計画は２年前からあり、平成１９年１１月にプラット赤穂を運営する第三セクター「赤穂駅周辺整備事業」の社長を務める豆田正明市長と面談。「にぎわいを創出でき、市にも一定の収入が見込める。検討したい」との市長の言葉を“ゴーサイン”と受け止めたが、翌年３月に三セク側から「取締役会に諮ったが、風紀上好ましくなく、不適切と判断した」と断られたという。
　市長及び会社の同意が得られそうにないと感じた業者は計画推進を一旦中断したが、「市長から前向きな意向を受けたため、役員会で推進を決議し、中央団体からも了承を得た。こちらとしては断念できない」と今年４月の市議選後あたりから推進活動を再開。来場者の飲食などによる経済効果、年間売上の１％を上限として市に払われる「環境整備協力費」などのメリットを前面に押し出し、「近隣商店の活性化、雇用拡大などで年間約２億４０００万円程度の効果がある。このような好条件の話は二度とない」と地元自治会の役員らを説得にかかっている。
　同社は当初、「プラット赤穂商店会」を同意の対象としていたが、現在は橋本町自治会まで範囲を拡大。さらに「駅前町自治会まで広げるかどうか検討中」という。「法的には求められていないが、議会の同意も必要と考えている」と話しており、自治会と議会の同意で外堀を埋めた上で市長に決断を迫る戦略とみられる。
　豆田正明市長は「こちらから積極的に開設をお願いしたことはない。断った以降、業者からはまったく接触がなく、コメントのしようがない」といい、「行政が是非を主導すべきものではないと思う。市民のみなさんの意見をよく聞いた上で判断したい」と話している。また、三セクの経営状態については、「借入金はなく、単年度で黒字が出ている。二次破たんは危惧していない」とした。
　富士レックスは赤穂と並行して備前市内でも誘致計画を持っており、同社は「そちらが先に出来てしまうと、赤穂での開業は困難になる」と意思決定を急かしている。
　▼橋本町自治会・高田耕吉会長の話＝「近いうちに自治会員に内容を知らせ、賛否を聞いた上で自治会としての判断を決めたい」
　【市民の声】
　▽「義士のまち」にそぐわない。反対。（４０代男性）
　▽ぜひ誘致してほしい。市中心部の商工業の落ち込みは深刻。ギャンブルだから嫌だと言っていられる状況ではない。（加里屋の６０代商店主）
　▽経済効果があるといっても、周辺の飲食店と警備会社ぐらいなのでは。割に合わない。（加里屋の５０代自営男性）
　▽ガラの悪い人が出入りするイメージがある。子どもたちに悪影響がないのか心配。（小学生の子を持つ２０代女性）
　▽もともとパチンコ店があったエリア。さほど、支障はないと思う。（加里屋の６０代男性）
　▽備前でも計画があるのなら、どうぞそっちでやってください。（３０代男性）

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関連サイト：
【社説】税金で支えた施設に賭博迎えるむなしさ
【あこうリサーチ】 プラット赤穂に場外舟券売り場は賛成？　反対？


掲載紙面（PDF）：
2009年7月18日(1856号) 1面 (7,009,000byte)
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