他界の作り手悼む篠笛演奏会
2012年08月04日
「播州雄美笛」の作り手だった安本雄美さん
安本さんとともに笛作りに取り組んだ姫路市鍵町の篠笛奏者、城山如水(じょすい)さん(60)をはじめ7人が遺作の笛を奏でる。城山さんは「雄美さんが遺してくれた音色の素晴らしさを伝えたい」と気持ちを口にしている。
安本さんが笛作りを始めたのは仕事を退職した還暦から。平成15年の大河ドラマ「武蔵」でお通が奏でる横笛の音色に魅せられた。作り方を教わろうと訪ねた高野山や京都などの笛作り職人には「秘中の秘」として断られたが、市販の笛を参考にするために向かった姫路市内の楽器店で、たまたま来店していた城山さんと出会った。
「西洋音階が出せて、いろんな曲を演奏できる笛がほしい」(城山さん)「日本の童謡や叙情歌に適した笛を作りたい」(安本さん)と2人はその場で意気投合。「努力、精進、極め」を信条に、試作品を持って毎週のように参じる安本さんの熱意に城山さんも本気で応えた。「お互いに満足できるものが出来上がるまで絶対にあきらめない」と誓い合ってから5年。ついにイメージ通りの音色が出るようになり、安本さんの号を取って「播州雄美笛」と名付けた。
材料は千種川に自生する雌竹。熱であぶって真っ直ぐにし、約3カ月間、自然乾燥させる。一節ごとに切断して表面を研磨。音階や吹きやすさを左右する孔開けは特に神経を使った。仕上げに漆を塗り、割れ止めに絹糸や籐を巻いた完成品は素朴な風合いの中に美術工芸品としての趣きも漂う。
納得の一本を手にした城山さんは播磨地方の歴史や伝承を題材にしたオリジナル曲を次々と発表。これまでに開いたコンサートは100回を超える。播州雄美笛は城山さんの弟子や他の演奏家にも広まり、西日本を中心に少なくとも200人が愛用しているという。
「普段は明るくて陽気。でも、笛作りにかけては頑固で一途な人だった」と城山さん。「雄美さんの笛は心に染み入るような澄んだ音色の一方、太鼓と共演しても引けを取らない力強さがある。すぐれた作り手を失ったことは残念だが、せめてその音を一人でも多くの人に届けるのが私の役目」と思いを語る。
演奏会「播州雄美笛の調べ〜八朔の恋歌、有年」は2階和室で午後2時開演。オリジナル曲「風の音〜有年」をはじめ「浜辺の歌」「ふるさと」などを独奏、合奏で披露する。篠笛を演奏体験できる講座も行う。入場無料。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2012年8月4日(2001号) 1面 (11,003,832byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
国重要無形民俗文化財「坂越の船祭」13日催行 獅子舞4保存会が熱い競演 [ 文化・歴史 ] 2019年10月08日山鹿素行のお話(10)素行先生の教えを全うした赤穂義士 [ 文化・歴史 ] 2019年10月05日繊細な色の重なり 和紙ちぎり絵展 [ 文化・歴史 ] 2019年10月02日「目指すは金賞」全日本吹奏楽コンクール [ 文化・歴史 ] 2019年10月01日獅子舞集う伝統文化祭 10月6日開催 ル・ポン国際音楽祭 会場変更で当日券販売 古布や古着リメイク 女性作家二人展 [ 文化・歴史 ] 2019年09月28日講座「渡来人の活躍と地域社会」 山鹿素行のお話(9)赤穂での著作と教育(その二) [ 文化・歴史 ] 2019年09月27日子どもたちが書道体験 「新しい発見を」樫本大進さん会見で抱負 樫本大進さんのCD一堂に 視聴も可 歴博「義士シアター」映像と設備一新 [ 文化・歴史 ] 2019年09月23日山鹿素行のお話(8)赤穂での著作と教育(その一) [ 文化・歴史 ] 2019年09月21日
コメントを書く