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86歳エッセイストの文集展

 2013年09月21日 
長年書きつづった詩やエッセーを「自分誌」にまとめて10年になる前田かず子さん
 来年に米寿を迎える女性が家族や地域の人々との触れ合いなどをテーマに10年間かけてつづった文集10冊を紹介する「前田かず子 自分誌展〜心に浮かぶままに坂越にて」が9月25日(水)から旧坂越浦会所で始まる。
 秋祭りに躍る気持ちを書いた「祭」、5歳のときに亡くした父を偲ぶ「源やん」など、収録されている詩、エッセーの数は合計約760篇。一部の作品は色とりどりの大判和紙に毛筆して掲示する。上郡町與井から嫁いで65年。「坂越のすべてが好き」と話す前田さんの思いがにじむ展示になりそうだ。
 若いころから身の周りや社会の事柄について日々の感想を家計簿の空きスペースや折り込みちらしの裏面に書き付けることを欠かさない前田さん。「釘が折れたみたいな字でも毎日家計簿をつけとった」という実母の几帳面さを受け継ぎ、「きょうの出来事は明日には歴史」とメモをする。読み返すうちにイメージがふくらんだ文章を原稿用紙に清書する。
 40代のころ、姫路の文集サークルに所属した。仲間の作品と一緒に自分の書いた文章が載った月刊誌を読むことが何よりの楽しみだった。「書くことが好き」なのは年を経ても変わらず、86歳になった今も気が向けばコタツ机に向かってボールペンを握る。「思いついたことをそのまま字にしとるだけや」と言うが、「ひらがな一つで意味や印象が変わるから」と助詞一つにも注意を払う。推敲に没頭して気がつけば深夜、という日もある。
 「自分誌」と呼ぶ冊子が最初に出来たのは平成16年のこと。サークル時代の文集を処分しようとしたところ、家族らが「おばあちゃんが一生懸命書いた文章を捨ててしまうのはもったいない」と、前田さんの作品を抜粋してA4判横に製本した。正月に親戚が集まったときに配ると大好評で、翌年からは近作を集めて年1冊のペースで刊行。今では前田家の新年恒例となった。
 本展は「坂越のまち並みを創る会」(門田守弘会長)が、地元で頑張っている人を紹介する「坂越のお宝展」の第1弾として企画。第1号から次の正月に配る最新号まで一冊ずつ並べ、実際に手に取って読むことができる。赤穂出身のアマチュア写真家、井内尚子さん(50)=西宮市=が撮影した坂越の風景写真約20点も展示する。会期中は前田さん本人も時間の許す限り会場へ足を運ぶつもりで、「読んでくれた人から感想を聞かせてもらえたら一番うれしい」と開催を心待ちにしている。
 10月28日(月)まで午前10時〜午後4時。火曜休館。無料。TEL48・7755。
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掲載紙面(PDF):
2013年9月21日(2054号) 1面 (9,485,998byte)
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