水難救助研究で消防士に博士号
2014年01月01日
「着衣泳」研究で博士号を取得した木村隆彦さん。右は主指導教員の塩野谷明教授
3年4カ月かけて後期博士課程を修了した木村さんは「研究成果を救助現場に活かせるように、さらに体系整備したい」と意欲に燃えている。
博士論文の題目は「水難時着衣泳の救命効果の工学的検証」。水難状況をプールで再現し、着衣状態で泳ごうとした場合の体への負荷、皮膚と衣服の間の水温変化などを測定。スポーツ工学を専門とする塩野谷明教授(55)の指導でデータ解析した結果、自力で泳いで助かろうとするよりも、「あわてずに、仰向けの状態で浮いて救助を待つ」ほうが溺れにくく、むしろ体温低下も招きにくいことなどを実証した。
中学、高校と水泳部だった木村さんは赤穂高校を卒業後、スイミングスクールのコーチになり、日本赤十字社の「水上安全法指導員」の資格を得た。人命救助の意識が高まり、22歳で消防職員になったが、水難事故で犠牲になったケースを見るたびに「救助隊が到着するまで、あと少し浮いていてくれれば命を救えた」と悔しい思いをしてきた。
着衣泳の有効性に着目し、平成15年に全国の消防職員や海上保安官、医師などと「着衣泳研究会」を発足させたが、人命救助の観点から研究した事例は海外にも皆無だった。「経験則だけでは説得力がない」と感じた木村さんは、ともに研究会を立ち上げた斎藤秀俊教授(51)が副学長を務める長岡技科大で「水難学」を究めることを決意。同大学院の社会人入試に合格し、同22年9月に入学した。
非番日を利用して大学がある新潟県長岡市へ片道8時間かけて通った。「ちょうど息子と同じ世代」の学生たちと同様に研究に精励。リスクを伴う実験は自ら被験者となった。救助ヘリのプロペラによる風波が着衣泳に与える影響を確認する海上実験で太平洋上に浮かんだことも。体力的にも経済的にも負担は重かったが、「協力してくれている同僚や家族のためにも絶対にやり遂げる」と乗り越えた。
現職消防士が博士号を取得した例は全国的にも珍しく、授与式があった12月25日、斎藤教授は「救助の現場と工学が結びつくという新たな学問領域を開いた点でも大変立派」と賛辞。木村さんが「着衣泳」の訳語として国際学会で発表した「uitemate(浮いて待て)」は国際語として定着しつつあり、「研究成果が赤穂市民ばかりでなく、全国、世界で水難死の撲滅に貢献すると確信している」と称えた。
今後の課題は「一般への普及啓発と指導者養成」。木村さんは「着衣泳の正しい知識を広め、『水難事故死ゼロ』を目指したい」と志を高くしている。
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掲載紙面(PDF):
2014年1月1日・第2部(2069号) 1面 (8,697,268byte)
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コメント
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投稿:ランボー 2015年06月14日仕事や家事に追われて?何もしないうちに、先をみてあきらめてしまう言葉をよく聞きますが、
「大丈夫」だと思えました。
御本人の頑張りとともに、支えられた御家族や仲間に敬意を抱きました。
年始に感動させて頂き、ありがとうございます。
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投稿:若葉マークの水難学会着衣泳指導員 2014年01月06日奈良県でも浮いて待て(Uitemate)を広めていきたいです。
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投稿:聖光(KIYOMITSU) 2014年01月06日彼の才能もさることながら、その情熱を支えていた家族や指導教授らに敬意を表します。あらためて、博士号取得おめでとうございます。
そして、まだまだ続く世界への普及啓発のために、その力を遺憾なく発揮してくださいね!
新潟県柏崎市から、祝福と嫉妬をかねて!(笑)
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投稿:新潟県の友人 2014年01月06日0 0
投稿:つぶやき346 2014年01月05日こちらのニュースを見られた方々、一般市民の方々(特殊な身体能力は不要です)、どなたでも木村さんと一緒に活動できます!
水難学会の門を叩いてみてください(ホームペイジがございます)
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投稿:水難学会着衣泳指導員 2014年01月01日教わった様な気がします
新年の目標ができました
ありがとうございました
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投稿:今年の目標 2014年01月01日非番日で新潟の大学に通うなんて大変だったでしょうね。
片道8時間往復だと16時間、そして勉強。
次の日はまた仕事なんでしょ、真似できるものではありませんね。
赤穂市民のため、活躍期待しております。
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投稿:頭文字D 2nd Stage 2014年01月01日コメントを書く