関西福祉大学リレーコラム・学びについて考える(4)子どもが育つ言葉かけ
2016年11月19日
今回は、どのような言葉で子どもに声をかければ子どもの「考える力」を伸ばすのかについて考えていきましょう。
マズローという心理学者は「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」といい、自己実現の欲求を5段階で示しました。人はそれぞれ下位の欲求が満たされると、その上の欲求を求める意欲を持つというものです。
第1段階は、生きていくための基本的・本能的な食べたい、寝たいなどの生理的欲求、第2段階は、守られている、健康である、などという安全の欲求です。第3段階は、家庭以外の集団に属し仲間を意識する社会的欲求の段階です。集団に属したいという欲求が満たされると、第4段階の、他者から認められたい、尊敬されたいという承認欲求が生まれます。第5段階は、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという自己実現欲求です。
第2段階までに「こどもが育つ魔法のことば(ドロシー・ローノルト)」にあるような、言葉かけが有効です。例えば、「励ましてあげれば自信を持つようになる」「誉めてあげれば明るい子に育つ」「分かち合うことを教えれば思いやりを学ぶ」「親が正直であれば正直であることの大切さを知る」「子どもに公平であれば正義感のある子に育つ」「認めてあげれば自分が好きになる」「見つめてあげれば頑張り屋になる」などです。指摘や指導だけでは意欲をそぐ、褒めるだけでは慢心してしまいます。親自身が手本となって子どもに暖かい声をかける必要があります。
また、親に時間ができたからといって子どもに向かい合おうとしても、第3段階以降の子どもは仲間を意識していますから、親を必要としないのです。子どものために時間を作るなら、子どもが小さいころから対話を大切にしなくてはなりません。親が、誰かから聞いた話をよく確かめず、そのまま子どもに「・・・だってね。そんなことをしてはダメ」と言ったら子どもはどんなに傷つくでしょうか。まずは、本人の言葉を聞いて一緒に考えましょう。
第4段階の時期には、子どもに何を言うかではなく、どのように子どもの言葉を聞くかなのです。つたなく、脈絡のない話であっても、真実を話しているか、自分の言葉で話しているかを聞き取ってください。友達や、友達の母親や、先生から聞いたことでも鵜呑みにしないで本人の言葉を聞くことが大切です。それが承認の欲求を満たすことになり、子どもは自信を持つでしょう。
第5段階の自己実現欲求は、自分で考えたことが、他者に理解されたときに生まれます。「それはこうしたらいいよ」と親が先回りして指導したりするだけではなく、「前にもあったね」「はじめて聞いたよ」等の声かけが有効です。自信を持ってやりたいことを見付け、アハ!体験(第3回)を繰り返すことから、自分で考える喜びが生まれてくるからです。
親として一番大切なことは子どもに、親の考えを教えるのではなく、子どもの考えを聞き出すことです。「どうしたらいいと思うの」「どんなことからそう考えたの」「それからどうするの」などと、子どもが話したくなるように聞いてあげてください。子どもへの問いかけが、「子どもの考える力」を伸ばす言葉かけなのではないでしょうか。(金沢緑・発達教育学部教授)
掲載紙面(PDF):
2016年11月19日(2207号) 4面 (12,274,224byte)
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マズローという心理学者は「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」といい、自己実現の欲求を5段階で示しました。人はそれぞれ下位の欲求が満たされると、その上の欲求を求める意欲を持つというものです。
第1段階は、生きていくための基本的・本能的な食べたい、寝たいなどの生理的欲求、第2段階は、守られている、健康である、などという安全の欲求です。第3段階は、家庭以外の集団に属し仲間を意識する社会的欲求の段階です。集団に属したいという欲求が満たされると、第4段階の、他者から認められたい、尊敬されたいという承認欲求が生まれます。第5段階は、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという自己実現欲求です。
第2段階までに「こどもが育つ魔法のことば(ドロシー・ローノルト)」にあるような、言葉かけが有効です。例えば、「励ましてあげれば自信を持つようになる」「誉めてあげれば明るい子に育つ」「分かち合うことを教えれば思いやりを学ぶ」「親が正直であれば正直であることの大切さを知る」「子どもに公平であれば正義感のある子に育つ」「認めてあげれば自分が好きになる」「見つめてあげれば頑張り屋になる」などです。指摘や指導だけでは意欲をそぐ、褒めるだけでは慢心してしまいます。親自身が手本となって子どもに暖かい声をかける必要があります。
また、親に時間ができたからといって子どもに向かい合おうとしても、第3段階以降の子どもは仲間を意識していますから、親を必要としないのです。子どものために時間を作るなら、子どもが小さいころから対話を大切にしなくてはなりません。親が、誰かから聞いた話をよく確かめず、そのまま子どもに「・・・だってね。そんなことをしてはダメ」と言ったら子どもはどんなに傷つくでしょうか。まずは、本人の言葉を聞いて一緒に考えましょう。
第4段階の時期には、子どもに何を言うかではなく、どのように子どもの言葉を聞くかなのです。つたなく、脈絡のない話であっても、真実を話しているか、自分の言葉で話しているかを聞き取ってください。友達や、友達の母親や、先生から聞いたことでも鵜呑みにしないで本人の言葉を聞くことが大切です。それが承認の欲求を満たすことになり、子どもは自信を持つでしょう。
第5段階の自己実現欲求は、自分で考えたことが、他者に理解されたときに生まれます。「それはこうしたらいいよ」と親が先回りして指導したりするだけではなく、「前にもあったね」「はじめて聞いたよ」等の声かけが有効です。自信を持ってやりたいことを見付け、アハ!体験(第3回)を繰り返すことから、自分で考える喜びが生まれてくるからです。
親として一番大切なことは子どもに、親の考えを教えるのではなく、子どもの考えを聞き出すことです。「どうしたらいいと思うの」「どんなことからそう考えたの」「それからどうするの」などと、子どもが話したくなるように聞いてあげてください。子どもへの問いかけが、「子どもの考える力」を伸ばす言葉かけなのではないでしょうか。(金沢緑・発達教育学部教授)
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2016年11月19日(2207号) 4面 (12,274,224byte)
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