「赤穂緞通を伝承する会」3人が講習修了
2025年04月12日
兵庫県伝統的工芸品に指定されている手織り敷物の製作技法を習得しようと、「赤穂緞通を伝承する会」(井関響子会長)の織り方技法講習会を受講した研修生3人が卒業検定に合格。井関会長と牟礼正稔市長の連名の修了証書が授与された。

3人は2018年に入門した同期生。今後はそれぞれ自宅などに工房を構えて緞通作家としての第一歩を踏み出す。
明治初期に商品化された赤穂緞通は佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通とともに「日本三緞通」と称される。落ち着きのある色柄で高級織物として人気を博し、明治時代には皇后の御召列車や枢密院玉座の敷物にも使われたが、戦時の綿花輸入制限や昭和の高度経済成長による機械化のあおりを受け、平成になる頃には緞通場はわずか1軒に減少した。1991年に赤穂市教育委員会が技術継承を目的に講習会を主催。赤穂市選定保存技術保持者だった阪口キリヱさん(故人)から直接指導を受けた修了生たちによって99年に「赤穂緞通を伝承する会」が設立された。
修了証書を授与されたのは、▽宮前町の平井恵理佳さん(33)▽元禄橋町の小島由美子さん(53)▽尾崎の冨田瑶子さん(40)。同会が市の委託を受けて運営する加里屋の技術研修工房「つむぐ」を主な拠点に1人1台ずつ貸与された織機で機の準備から作品の仕上げまで一連の工程を緞通作家の井関会長や山下眞理子さん、廣畑冨美子さんらから教わった。まずは練習課題として小さめの玄関マットを手掛け、続いて卒業課題として一畳敷に挑戦。織り上がった作品のサイズや文様の正確さ、全体的な出来映えなどを指導者が検品。さらに京都の織物会社がチェックし、3人とも「正反(商品として販売できる品質)」と判定された。
入門後に子ども2人を出産し、仕事と子育てを両立しながら研修を続けてきた冨田さんは「絶対にやり切る、と決意して頑張ってきたので、合格の知らせを聞いて、ほっとしました」と修了証書に感慨ひとしお。中学生のときの「トライやる・ウィーク」で緞通工房で職業体験したのをきっかけに入門した平井さんは「何度もつまづいて苦労したけれど、夢だった織り手になるスタートに立てた」と笑顔を見せた。
3人は作家として製作活動に励みつつ、引き続き同会の工房運営にも協力するという。小島さんは「まだまだ作家として『ひよっこ』の自分ですが、一緒に学びながら研修がスムーズに進むように手助けしていきたい」と話す。
井関会長は「阪口先生、廣門マツヱ先生(赤穂緞通の伝統技法の保持に尽力した元織り子で赤穂市文化振興者賞を受賞)から受け継いだ技術を次の世代につなぐことができました。頑張って引き継いでくれた研修生のみなさんに感謝の気持ちでいっぱい。これからも赤穂緞通の灯を守って」と願いを語った。
研修生は、赤穂緞通の技術を習得・伝承する意思がある、おおむね45歳までを対象に募集。受講料無料(工房共益費として月3000円)。TEL45・0606。
掲載紙面(PDF):
2025年4月12日号(2594号) 1面 (6,027,156byte)
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修了生と関係者のみなさん
3人は2018年に入門した同期生。今後はそれぞれ自宅などに工房を構えて緞通作家としての第一歩を踏み出す。
明治初期に商品化された赤穂緞通は佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通とともに「日本三緞通」と称される。落ち着きのある色柄で高級織物として人気を博し、明治時代には皇后の御召列車や枢密院玉座の敷物にも使われたが、戦時の綿花輸入制限や昭和の高度経済成長による機械化のあおりを受け、平成になる頃には緞通場はわずか1軒に減少した。1991年に赤穂市教育委員会が技術継承を目的に講習会を主催。赤穂市選定保存技術保持者だった阪口キリヱさん(故人)から直接指導を受けた修了生たちによって99年に「赤穂緞通を伝承する会」が設立された。
修了証書を授与されたのは、▽宮前町の平井恵理佳さん(33)▽元禄橋町の小島由美子さん(53)▽尾崎の冨田瑶子さん(40)。同会が市の委託を受けて運営する加里屋の技術研修工房「つむぐ」を主な拠点に1人1台ずつ貸与された織機で機の準備から作品の仕上げまで一連の工程を緞通作家の井関会長や山下眞理子さん、廣畑冨美子さんらから教わった。まずは練習課題として小さめの玄関マットを手掛け、続いて卒業課題として一畳敷に挑戦。織り上がった作品のサイズや文様の正確さ、全体的な出来映えなどを指導者が検品。さらに京都の織物会社がチェックし、3人とも「正反(商品として販売できる品質)」と判定された。
入門後に子ども2人を出産し、仕事と子育てを両立しながら研修を続けてきた冨田さんは「絶対にやり切る、と決意して頑張ってきたので、合格の知らせを聞いて、ほっとしました」と修了証書に感慨ひとしお。中学生のときの「トライやる・ウィーク」で緞通工房で職業体験したのをきっかけに入門した平井さんは「何度もつまづいて苦労したけれど、夢だった織り手になるスタートに立てた」と笑顔を見せた。
3人は作家として製作活動に励みつつ、引き続き同会の工房運営にも協力するという。小島さんは「まだまだ作家として『ひよっこ』の自分ですが、一緒に学びながら研修がスムーズに進むように手助けしていきたい」と話す。
井関会長は「阪口先生、廣門マツヱ先生(赤穂緞通の伝統技法の保持に尽力した元織り子で赤穂市文化振興者賞を受賞)から受け継いだ技術を次の世代につなぐことができました。頑張って引き継いでくれた研修生のみなさんに感謝の気持ちでいっぱい。これからも赤穂緞通の灯を守って」と願いを語った。
研修生は、赤穂緞通の技術を習得・伝承する意思がある、おおむね45歳までを対象に募集。受講料無料(工房共益費として月3000円)。TEL45・0606。
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