美術工芸館図録 同号異人の作品収録か
2017年06月17日
河野東馬と穴吹香邨の作品比較=滝図短冊の画像は「所蔵者が赤穂民報への転載を許可しなかった」(同館)ため、掲載を見合わせました。図録は赤穂市立図書館で閲覧できます
両者の雅号がともに「香邨(こうそん)」だったことから混同したとみられるが、同館は「東馬の作品でないとは断定できない」と錯誤を認めていない。
問題の作品は、同館が個人から借り受けて展示した滝図短冊。「香邨写」と署名があり、河野東馬の作品として図録にも掲載された。しかし、会期終盤の今年1月、鉄兜・東馬兄弟について詳しい個人研究家の前嶋第誓(だいせい)氏(54)=姫路市網干区=が「昭和の時代に飾磨にいた画家の作品であり、東馬の作品ではない」と指摘。同氏の情報を基に赤穂民報が調査取材したところ、穴吹香邨という日本画家の作品である可能性が浮上した。
穴吹香邨(1880−1954)は香川県出身で『香川県史』にその名を残す。21歳のころから竹内栖鳳に7年ほど師事し、「橘香邨」とも名乗った。後に人間国宝となった鎌倉芳太郎(型染絵)、音丸耕堂(彫漆)に日本画を教えたという。主に京都を拠点とし、大正から昭和にかけて、しばしば姫路地方に長期滞在して作品を制作。宇治市内で73歳で死去した。
過去に穴吹香邨の企画展を開き、約80点分の作品画像を保管する宇治市歴史資料館へ滝図短冊の画像を見せたところ、「穴吹香邨の作品と思われる。後援者への配りものといった印象を受ける」と回答があった。また、本紙は姫路、宇治の旧家などに現存する穴吹香邨の作品計約40点を調査。近世絵画史を専門とする木村重圭(しげかず)・赤穂市文化財保護審議会長(元甲南女子大学教授)は一連の作品と滝図短冊の筆遣いや落款を見比べた上で、「画像を客観的に見る限り、同一人物の作品とみてよい。穴吹香邨の作品とみてよいのでは」とした。
木村氏によると、「香邨(香村)」と号する画家は氏名が判明している人物だけで15人いる。前嶋氏は「播磨周辺に『網干の香邨(東馬)』と『飾磨の香邨(穴吹)』の同号異人の画家の作品が残されていることは古美術業界や古書画収集家の間では昔からよく知られていたことであり、南画の系統の香邨(東馬)と京都画壇四条派系の香邨(穴吹)とでは画風が大きく異なり落款もまったく違うので簡単に見分けられる」とする。ある古美術商は図録に載っている滝図短冊の写真を見て、「河野香邨とは100%違う」と即答した。
同館は指摘を受けた当初、「(穴吹香邨という画家が)実在したかどうかすら不明で確かめようがない」としていたが、4月になってようやく存在を認めた。しかし、「その作品や落款と比較して、滝図短冊の作者と同一とは判断できなかった」と取材に回答。同館が比較に使ったのは「収集家の所有する作品1点」だといい、本紙は姫路や高砂にも多数現存する穴吹香邨の作品と比較検証すべきではと伝えたが、「これ以上調べてもきりがない」と調査を続ける必要性を否定した。滝図短冊を東馬の作品と判断した理由については、「所蔵者に出所来歴を確認した。その内容は所蔵者の意向で答えられない」と詳細を伏せた。
同展をめぐっては前嶋氏から、滝図短冊の件のほか、▽鉄兜の遺墨と明記して展示され図録に掲載された中に、贋作もしくは真筆とは断定しがたい物が多数含まれている▽鉄兜の印として図録に掲載された印影は、鉄兜遺印を直接捺印した印譜集に収録されているものと異なる▽東馬の経歴に一次資料で全く確認できず根拠が無いことを事実の如く記載している−と展示及び図録の内容に疑義が寄せられ、同館は「再確認の必要がある」として今年2月から図録の販売を休止している。
同館は10日、本紙の取材に対し、「東馬の経歴については若干の不備が確認されたので訂正など対応したい」としたものの、「その他に訂正や変更を行う予定はない。近日中に図録の販売再開を判断したい」と話した。
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関連サイト:
【社説】目先の面子ではなく美術館の信用守れ
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掲載紙面(PDF):
2017年6月17日(2235号) 3面 (11,615,729byte)
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コメント
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投稿:どうする田淵記念館!? 2017年06月17日ちなみに、昭和3年(1928)は、河野東馬はすでに他界しておりますので、この作品が東馬の作品でないことは確かです。
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投稿:赤穂民報 2017年06月17日0 0
投稿:図録見ました 2017年06月17日そうでなければ、誰がお金を出してわざわざ見に行きます?笑
素直に見えない、お役人の自信タップリな開き直りの様子は見慣れてますが、コレ、流行なのでしょうか。
そういうつもりでないのなら、そう見えてしまってますよ〜!
少なくとも、自分は、こういう美術館には、騙されそうで行く気がしないです。
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投稿:臭いものにフタ 2017年06月17日コメントを書く