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内蔵助自筆の暇乞い状 60年ぶり公開

 2018年12月01日 
60年ぶりに公開されている大石内蔵助自筆の暇乞い状
 元禄15年12月14日の討ち入りを翌日に控えた大石内蔵助が、仇討ちを決意した経緯や心境を徳島藩の親類に伝えた暇乞い状が現存していることが徳島市の市立徳島城博物館(根津寿夫館長)の調査で判明。同館で開催中の特別展「討入りとその周辺 赤穂義士と徳島藩」で公開されている。
 同館によると、書状(縦17・1センチ、横75・5センチ)は徳島藩家老池田由英の実子で、内蔵助の母・熊子の従弟にあたる三尾轄悟(1654〜1713)宛てで、討ち入りの前日にあたる「十二月十三日」の日付がある。昭和25年から32年にかけて東京、大阪、福岡などで行われた展覧会以降に展示されたことはないという。
 主君の刃傷について「勅使の馳走役に関して吉良上野介に遺恨を持ち、討ち果たそうとしましたが、留められ無念」とし、「家臣としては耐えられなく、亡き主君の鬱憤を晴らすつもりで必死の覚悟」と討ち入りを決意した経緯を説明。「家中の内、志の薄い者は参加せず、志の厚い四十八人が妻子や親類の後難を顧みず、仇討ちを行う所存」と記している。さらに、「(討ち入った後、どのように世間に言われるか心配」「(討ち入りの意図を記した)口上書をお目にかけます。ご覧になられたら処分してください」あり、討ち入りの趣意が正しく伝えられるよう願っていたことがうかがえる。
 轄悟は母方の実家がある近江国大津で暮らし、内蔵助が赤穂退去後に住んだ山科とは2里ほどの距離だった。池田家に残る古文書には内蔵助が轄悟宅をよく訪ねて仲良く語り合ったこと、討ち入りへ向けて江戸へ下る際には主税とともに来訪して絵画一幅と古手籠を贈ったことが伝えられている。根津館長は「轄悟は内蔵助の5歳年上で年齢が近く、互いに気が合ったのでは」と推測する。
 同館によると、内蔵助の自筆書状はこれまでに20通ほどが確認されているが、討ち入り前日の日付のものは、この書状以外には花岳寺と正福寺、神護寺に連名で宛てた暇乞い状があるだけ。池田家では書状を「門外不出」の家宝として大切に保管し、昨年3月に同館へ他の史料約60点とともに寄託を申し出た。書状の内容は中央義士会が昭和6年に刊行した『赤穂義士史料下巻』に所収されているが、実物の公開は60年ぶりとなる。
 書状には、「あなたとは懇意なので、心底を残さずお伝えしました」「阿州(徳島藩)にもよろしくお伝えください」といった記述もあり、内蔵助と轄悟、徳島藩とのつながりが見てとれる。
 また、花岳寺宛ての暇乞い状には「この書状を家来に届けさせようと思ったが、もし道中で滞るといけないので、私の死後、大津から届くように頼んでおいた」との記述がある。根津館長は「『大津』が三尾轄悟を指すことは間違いなく、それだけ内蔵助が轄悟を信頼していたといえる」と二人の人間関係に思いを馳せた。
 特別展は12月24日(月・振休)まで。暇乞い状に添えた口上書、内蔵助が轄悟へ贈った絵画「波にたつ鳥図」と手籠も展示している。12月9日(日)には根津館長が「討入前日の大石内蔵助暇乞い状―赤穂義士と徳島―」と題して講演。12月15日(土)には山本博文・東京大学史料編纂所教授の記念講演会「『忠臣蔵の真実―赤穂浪士はなぜ討入りをしたのか―」がある。TEL088・656・2525。
 ▼小野真一・赤穂市教育委員会市史編さん担当課長の話=「一見して内蔵助の筆跡。花岳寺などに宛てた暇乞い状と同様、慌ただしい書きぶりで、討ち入りが目前に迫った緊迫感が伝わってくるようだ。実物の現存が確認できたことで今後の赤穂事件研究の広がりも期待できる」
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掲載紙面(PDF):
2018年12月1日(2303号) 3面 (9,390,988byte)
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