赤穂市高野地区で、実際には作付けしていない農地に国の水田活用交付金が支給されていた疑惑で、問題の農地群では現地確認に必要な「確認票」の掲示が複数年にわたって事実上免除されていたことが関係者への取材でわかった。ルールをなおざりにしたことが不正を助長したと言えそうだ。
　「確認票」は交付金申請があった農地一筆ごとに発行されるＡ５判くらいの大きさの紙片。現地確認を担う「赤穂市地域農業再生協議会」から受け取った確認票を各地区の農業総代が申請者へ配布し、定められた期日までに農地に掲示する取り決めになっている。しかし、同地区では牧草（イタリアンライグラス）の転作計画地について目視による確認を行わず、書類確認と農業総代への聞き取りで済ませることが慣例化。確認票の掲出も求めていなかった。
　今年度になって地元住民から「確認票を立てないのはおかしいのでは」と指摘があり、協議会事務局が掲出を徹底。その結果、現況が沼地だったり、砂利を敷き詰めたりした“農地”に確認票が立つという異様な光景が現れ、疑惑が白日の下にさらされた。
　協議会事務局によると、現地確認は市、ＪＡ、赤相農業共済事務組合、地元住民など３〜５人一組で確認対象の農地を一筆ずつ目視するのが原則。手元のリストと確認票を照合し、申請どおりの作付けがなされているかどうかをチェックする。
　別の地区で現地確認に関わったことがある農業男性は、「巻き尺を使って栽培面積を実測するほど厳格だった」と振り返り、「（確認票は）いついつまでに必ず立てろと役所から言われていた。なんで高野のイタリアンだけ特別扱いなのか。不公平で腹が立つ」と不満を口にした。また、「確認票を立てるルールを守らせていれば、あからさまな不正は防げたはず」と当局の確認の甘さを問題視した。
　確認票掲示の免除はいつから、どういう理由や目的で行われていたのか。赤穂民報は歴代の課長、係長、担当者にできるだけ話を聞いたが、「係長以下に任せていた」（元課長）、「自分は高野地区の現地確認を担当したことがないのでわからない」（元係長）といった返答で、理由や目的があいまいなまま“特別扱い”が受け継がれていた無責任な体質が浮き彫りになった。
　▼赤穂市地域農業再生協議会事務局（市農林水産係）の話＝「国、県と引き続き対応を協議している。現地確認の方法に不備がなかったのか検証している」

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掲載紙面（PDF）：
2013年8月24日(2050号) 1面 (9,504,988byte)
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