瀬戸の風に誘われて〜岩渕徹さん〜前編
2014年04月26日
真剣な眼差しで麹造りに精を出す岩渕徹さん。麹の善し悪しが酒の質を大きく左右する。
2人目は日本酒を醸造する「蔵人」として、一年の半分を坂越で過ごす岩渕徹さん(42)=東京都板橋区=です。
* * *
初めて赤穂に来たときは34歳でした。赤穂に来る前に福岡の久留米の酒蔵にいて、そこは4年やったんですけど、分業制だったんですね。やっぱり、麹も★場(もとば、★は酉に元)も、もろみも全部したかったんです。杜氏になりたかったんで。
酒蔵によく来てくれていたお客さんに、相生で働いていたことのある方がいて、その方の紹介で姫路の酒蔵へ入れてもらえることになったんですが、先方の事情で話がなくなってしまったんです。困ったなと思っていたら、姫路の酒蔵の方から「赤穂の奥藤商事という蔵が若い人を探しているけど、そこの社長に会ってみますか」と話をいただいて。
やっぱり不安でしたよ。どんな蔵なのか、どんな酒造ってるのか。でも、来てみたら、室(むろ)もきれいだし、働きやすそうな環境だなと。ここで働かせてもらえるようにお願いしたいと思いました。それに、近くの「割烹いわもと」さんでお昼にお寿司をごちそうになったんですけど、感動するほどおいしくてですね。
帰りに社長が純米吟醸の四合瓶1本くれて。飲んで、ほっとしました。そのほっとした感じはまだ覚えてますね。緊張しましたね。どうせなら、うまいと思う酒じゃないと造りたくないので。好きなタイプの酒だった。これが、ここにお世話になることになったきっかけです。
酒造りって基本的にやることは同じなんですが、道具や置き場所が違うじゃないですか。1年目はけっこう大変でした。慣れるまで。おやっさん(杜氏)の動きを追っかけて、それを覚えるだけで終わりましたね。2年目は流れがわかっているので、ちょっとは自分が先回りして仕事ができるようになったかなと。
3年目からはおやっさんが引退して、社長と2人で造るようになりました。おやっさんが「二人でやってみたらどうだ。二人なら大丈夫」みたいなことを言ってくれたらしいです。おやっさんがそう思ってくれたのはすごくありがたかったですけど、社長は悩んだと思いますよ(笑)。
実際、二人で造るようになった最初の年は大変でした。福岡も入れて12年間の中で一番。終わったあとの疲労感というんですかね、半端なかったです。うまく発酵しなかったり、止まっちゃうお酒もあったりとか。でも始まっちゃったんでやるしかない。その次の年も大変でした。(つづく)
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掲載紙面(PDF):
2014年4月26日(2085号) 4面 (10,654,336byte)
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投稿:おいしい酒 2014年04月26日コメントを書く