瀬戸の風に誘われて〜オカモトヨシコさん〜前編
2014年06月07日
第3回は今年2月に「御崎ガラス舎」をオープンした神戸生まれのガラス工芸作家、オカモトヨシコさん(30)です。
* * *
ガラスに出会ったのは就職も決まり大学も卒業間近のこと。21歳の秋のことでした。社会人になってから家と会社の往復だけになってしまうのではないかと危惧して“何か趣味を見つけておこう”と、ピアノや絵手紙などいろいろな教室に行ってみました。その中のひとつがガラスだったんです。
当時住んでいた高砂市が美化センターでリサイクル啓発を目的にガラス教室を500円〜3000円で行っていたのです。今思えば、瓶を砕いたガラスを電子レンジ用の焼成ボックスにいれてチンするという簡易なものだったのですが、やってみたら面白くて。ガラスと言えば危ないし、壊れやすいし、自分で出来るような物ではないと思っていたのですが、簡単に出来てしまってビックリというか。すごくおもしろくて500円握りしめて毎週通いました。
毎週、毎週飽きもせず通うので先生が「そんなに面白いんやったら、これもやってみたら」と別の技法も教えてくれて。一通り高砂市の講座で出来ることをし尽くしたところで「次は吹きガラスもやってみ」って勧めてもらって、紹介してもらった播磨町の里彩来館(りさいくるかん)へ行くことになりました。
その時点で「私はガラスができる!」と勘違いしてしまっていて(笑)。意気揚々と門戸をたたいたわけですが、約1200度で溶けたトロトロのガラスはそんな単純明快なものではなく……まったく思い通りに運ばなかったんです。でも、それがまた面白くて、「次こそは!」と毎週通うようになっていました。
熱々のガラスはどんどん形が変わって行ってしまいます。頭では、こういう形にして、こうしてって言う理想があるんですけどガラスは待ってくれない。形がグシャっと崩れたり、ポンテ(本体ガラスを支える小さなガラス)が取れてしまってガシャンと落ちて割れてしまったり…。運動神経とリズム感のいい人はとっても上達が早いんですけど私はどっちもダメで。向いてないかもって始めのうちは思っていました。
ただ、焼けたガラスは夕日のようなオレンジ色に輝いていて。その時には、やわらかいガラスの感触とその色にすっかり魅了されてしまっていました。
里彩来館のガラス講座でも飽きもせず同じことを繰り返し練習していたので、そこの先生が気にかけてくれて、あるとき「姫路にガラスの作家さんがアシスタント募集しているから行ってみたら」とプロの仕事を見る機会を与えてくださいました。平日はOLとして働いて、休みの日に先生のところへ手伝いにいく生活が始まりました。先生のアシスタントをしたことでガラスの世界への足がかりになり、社会人になって3年半くらいのころに西宮のガラス工房のスタッフ募集があることを知り、「チャレンジするなら今だな」と会社を辞めてガラスの世界へ飛び込んだのです。(つづく)
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掲載紙面(PDF):
2014年6月7日(2090号) 3面 (9,911,310byte)
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