若狭野浅野家の旧札座で保存運動
2016年06月03日
市民グループが保存活用を目指して動き出した若狭野浅野家の旧札座
建物は老朽化が進んでおり、活動を進める相生市出身の高校教諭、松本恵司さん(63)は「相生にとって有力な歴史的資産の一つ。取り壊しだけは回避したい」と協力を求めている。
若狭野浅野家は、初代赤穂藩主・長直が養子の長恒(大石良雄の父の従弟)に赤穂郡内3000石を分け与えた分家。元禄赤穂事件で改易になった本家の事後処理を担い、明治維新後は浅野長矩と赤穂義士の復権を嘆願した。
文献によれば、7代長発が、それまで長屋程度だった陣屋を内庭のある本邸に建て替え、倉庫や馬屋、武器庫なども整備した。明治33年ごろに売り払われ、敷地の大半は更地になったが、旗本札(旗本が発行する紙幣)を作る「札座」だったとされる建物(木造瓦葺き2階建て、建築面積約218平方メートル)は浄土真宗の道場や地区の集会所として再利用され、取り壊しを免れた。
旧札座の建築年代は不詳だが、松本さんは「窓や瓦に江戸後期の武家建築の様式がみられる」と評価する。旗本の知行所だった建物が現存するのは全国でも数少なく、「相生の歴史的ブランドを構成する重要なコンテンツになる」と保存の意義を強調する。
相生市教委によれば、文化財保護審議会で文化財指定の可否について過去に何度か検討されたことがあり、「内部が著しく改修されている」などの理由で指定に至らなかったという。昨年12月には旧札座と土地を所有する子孫から寄贈の申し出があったが、審議会の経緯を踏まえ、「受けられない」と回答した。
松本さんは今年3月、市民グループ「浅野陣屋・札座保存ネットワーク」を仲間と結成。若狭野浅野家や陣屋の歴史などをまとめた書籍を発行して週一回の学習会を開き、所有者の許可を得て現地見学会も開いている。専門家による旧札座の文化財的価値の見極めや修繕・復元にかかる費用見積もりも予定しているという。
「浅野陣屋記念館として、まちづくりや観光の拠点とするのが理想。『浅野』の名に恥じない活用を目指したい」と松本さん。11代目に当たる浅野長彦さん(64)=西宮市=は「個人では維持管理は困難で、このままだと解体撤去するしかない。もし、保存して活用していただけるならありがたい」と話している。
現地見学会は6月4日(土)にも午後2時から行われる。無料。問い合わせはTel25・1750。
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掲載紙面(PDF):
2016年6月4日(2187号) 3面 (11,083,470byte)
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