専門家に聞くインフル撃退法
2018年02月10日
「ウイルスをもらわない、まき散らさない、という一人一人の心掛けが大切」と語る勝田吉彰教授
* * *
「簡単に言えば、『ウイルスをもらわない、まき散らさない』ということです」
インフルエンザの主な感染経路は、感染している人のくしゃみや咳で出たしぶきを吸い込むことによる飛沫感染と、ウイルスが付いたドアノブやつり革などに触れた手で目や鼻などを触ることによる接触感染がある。
「飛沫感染を防ぐには、咳エチケットが有効です」
咳やくしゃみをした場合、しぶきは2〜3メートル先まで飛ぶとされる。マスクやハンカチ、ティッシュペーパーで口元を覆う「咳エチケット」でウイルスの拡散をできるだけ防ぐことができる。
「マスクやハンカチがないときは、自分の服の袖を口元に当てることでも拡散を防ぐことができます。お子さんの場合は口で言ってもわかりにくいでしょうから、家庭や学校で練習しておくとよいと思います」
* * *
次に接触感染を防ぐにはどうすればよいのか。インフルエンザウイルスは消毒薬で撃退できるが、ありとあらゆる場所を消毒するのは大変な労力を伴う。
「接触感染は自分の手を介してウイルスが侵入することがほとんどなので、手洗いが有効です。ただ、手洗いの回数を増やすだけでなく、よく石けんを泡立てて、ウイルスが残りやすい指の股の部分や手首までしっかりと洗うことが重要。お子さんの場合は、何か歌を一曲歌い終わるまで手洗いを続けるように教えるとよいでしょう」
赤穂健康福祉事務所は、固形石けんよりも泡立ちやすい液体石けんの使用を推奨している。
消毒薬を手につけてこすり合わせるのも、もちろん効果がある。
* * *
手洗いと並ぶ防衛策が「うがい」だ。京都大学の研究グループによる検証実験では、水でうがいを続けた場合、うがいをしなかった場合に比べて風邪の発症率が40%抑えられたという結果が出た。
しかし、電車に乗っていて、隣の人が「ゴホン」と咳をしたときなど、すぐにうがいできないときもある。
「私はいつもかばんに喉用の殺菌スプレーを入れています」と勝田教授。消毒用ジェルも携帯しており、気になったときはすぐに喉と手指を消毒できる体制をとっているという。
* * *
これまでの研究によれば、インフルエンザウイルスは湿度によって生存率が変わる。例えば、気温20・5度〜24度の環境下でインフルエンザウイルスが6時間生存する割合を調べた研究では、湿度40%未満で半数以上が生き残ったが、50%を超えると生存率は5%程度に下がったという。
また、最近の研究では、ウイルスを含んだ飛沫の水分が蒸発して乾燥し、小さな粒子(0・005ミリ以下)となって、空気中を漂い、それを吸い込んだ人が感染する可能性が報告されている。厚生労働省は、こうした空気感染について、「科学的根拠がない」としつつも、「可能性は否定できない」としている。
「いずれにせよ、部屋の湿度を適切に調節することは、ウイルスのまん延を防ぐのに役立ちます。ただし、湿度が70%以上になるとカビが発生しやすくなるので、高ければよいというものではありません」
* * *
感染してしまった場合はどうすればよいのだろうか。
「まずは休むことです」
インフルエンザウイルスの排出期間は、おおよそ発熱の1日前に始まって症状出てから5〜7日までと考えられており、解熱(37度以下)してから2日後には体内からほぼ消失することがわかっている。
そのため、文科省はインフルエンザによる出席停止期間を「発熱後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼稚園・保育所は3日)を経過するまで」と定めている。
「熱があるのに会社や学校へ行くというのは、ウイルスをまき散らしに行っているようなもので、『歩くバイオテロリスト』です」
なお、インフルエンザは肺炎や脳症を引き起こす場合がある。
「呼吸が苦しくなったり、意味不明な言葉を話したりしたときは、一刻も早く治療を受ける必要があるので、迷わず救急車を呼んでください」
* * *
家庭内での感染を防止するためにできることを尋ねた。
「家族の誰かが感染してしまった場合、患者に個別の部屋を用意し、できるだけ隔離することが望ましいです」
個室を用意できない場合はどうすればよいのか。
「その場合はビニールや布などを天井から吊して仕切りを作ることで感染リスクを減らすことができます」
その他にも、▽看病する人をできるだけ少なくする▽ごみ箱にふたをする▽こまめに換気する−といったことも対策につながる。
「盲点なのが、携帯電話です。口元に近づけて使う携帯電話の表面は、実は最もハイリスクです」
親子でスマホを共用している場合は要注意だ。
* * *
勝田教授は、「どんなに対策をとって気を付けていても、感染してしまうことはある」と話す。また、インフルエンザの型によっては予防接種が効きにくいものもある。
「大切なのは感染するリスクを少しでも減らすこと。十分な睡眠と休養、栄養をとって過労を避ける。まん延させないように一人一人が心掛けることが大切だと思います」
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2018年2月10日(2266号) 1面 (6,072,640byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 社会 ]
赤穂市人事異動は30日発表 [ 社会 ] 2023年03月28日「海のゆりかご」海洋科学館に寄贈 [ 社会 ] 2023年03月28日副市長に溝田康人・健康福祉部長 寺谷病院事業管理者が辞職 牟礼市長「申し訳ない」 [ 社会 ] 2023年03月27日市民総合体育館の愛称「品川リフラ」に 《市民病院医療事故多発》議事録に個別検証の記載なし [ 社会 ] 2023年03月18日相生有年道路の整備完了「令和10年代前半を念頭」 [ 社会 ] 2023年03月16日尾崎小を核に地域づくり 文科大臣表彰 高取峠の早かご像改修へ資金募集 [ 社会 ] 2023年03月04日消防団詰所で飲酒 分団長ら「厳重注意」へ [ 社会 ] 2023年03月04日相生有年道路 土地収用備え説明会 [ 社会 ] 2023年03月04日「光るホタル楽しみ」加里屋川にホタル幼虫放流 故障の加里屋中継ポンプ場 3度目の工期延長 [ 社会 ] 2023年02月25日引き揚げ者住宅 最後の1棟解体 [ 社会 ] 2023年02月25日「持続可能な地域公共交通網を」近畿運輸局から提案書 [ 社会 ] 2023年02月22日
コメント
0 0
投稿:赤穂民報 2019年12月17日0 0
投稿:匿名 2019年01月15日コメントを書く