山鹿素行のお話(7)素行先生赤穂への流謫(配流)
2019年09月07日
寛文6年(1666年)、山鹿素行に大きな転機が訪れます。
それは、赤穂藩に仕えてから道徳倫理に基づいた自由な発想での学問を続け、先号で紹介した『山鹿語類』の発刊に至ったのですが、素行自身はそこに心底満足することができず、当時の官学であり師匠の林羅山が推奨する朱子学が難しい理屈の学問であり実践力に欠けるとして、もう一度儒学の原点に立ち返り、孔子の教えを学び直そうとする新学説の「聖教要録」を発表しようとします。
これは、上中下三巻からなる小冊子ですが、これを読んだ門弟たちは他者から批判を受ける事は間違いないから発刊を思いとどまらせようとしました。しかし素行は信念を曲げず出版してしまいます。すると、やはり心配した通り幕府要人であり朱子学の信奉者でもあった保科正之に反対され、罪人として赤穂藩へ流されることとなってしまいました。
素行は事前に周りの気配から察知していたようで、かつての兵術の師である北条氏長から出頭の呼び出しが来ると、すぐ身支度を整えて家族と早めの夕食を済ませた後、死罪になる場合のことを考えて一通の遺書を書き、それを懐中にして氏長の屋敷に出向きました。
遺書の内容は、私は聖人の周公・孔子の道を正しく究めているのであるから、私を罪にすることは聖人の道を罪とすることになり、それは時の為政者の過ちであると。昔から道に秀でた者は禍に合っている例が非常に多く、そんなことで天地がひっくり返り、月日が光を失ってしまう。ただ残念に思うのは、この時代にこの誤りを後世に残すことで、これが素行にとっての一番の不徳の罪である、と述べています。
天地の理に適う行いをして罪に問われてもいささかの迷いもなく侍としてその責めを甘んじて受けるという行為は、素行の薫陶教育を受けた浅野内匠頭が一死を持って吉良に刃傷に及び「風さそう 花よりもなお 我はまた 春の名残を いかにとやせん」と詠んで散っていった死生観に通じるような気がします。
掲載紙面(PDF):
2019年9月7日号(2339号) 3面 (8,770,853byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
それは、赤穂藩に仕えてから道徳倫理に基づいた自由な発想での学問を続け、先号で紹介した『山鹿語類』の発刊に至ったのですが、素行自身はそこに心底満足することができず、当時の官学であり師匠の林羅山が推奨する朱子学が難しい理屈の学問であり実践力に欠けるとして、もう一度儒学の原点に立ち返り、孔子の教えを学び直そうとする新学説の「聖教要録」を発表しようとします。
これは、上中下三巻からなる小冊子ですが、これを読んだ門弟たちは他者から批判を受ける事は間違いないから発刊を思いとどまらせようとしました。しかし素行は信念を曲げず出版してしまいます。すると、やはり心配した通り幕府要人であり朱子学の信奉者でもあった保科正之に反対され、罪人として赤穂藩へ流されることとなってしまいました。
素行は事前に周りの気配から察知していたようで、かつての兵術の師である北条氏長から出頭の呼び出しが来ると、すぐ身支度を整えて家族と早めの夕食を済ませた後、死罪になる場合のことを考えて一通の遺書を書き、それを懐中にして氏長の屋敷に出向きました。
遺書の内容は、私は聖人の周公・孔子の道を正しく究めているのであるから、私を罪にすることは聖人の道を罪とすることになり、それは時の為政者の過ちであると。昔から道に秀でた者は禍に合っている例が非常に多く、そんなことで天地がひっくり返り、月日が光を失ってしまう。ただ残念に思うのは、この時代にこの誤りを後世に残すことで、これが素行にとっての一番の不徳の罪である、と述べています。
天地の理に適う行いをして罪に問われてもいささかの迷いもなく侍としてその責めを甘んじて受けるという行為は、素行の薫陶教育を受けた浅野内匠頭が一死を持って吉良に刃傷に及び「風さそう 花よりもなお 我はまた 春の名残を いかにとやせん」と詠んで散っていった死生観に通じるような気がします。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年9月7日号(2339号) 3面 (8,770,853byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 文化・歴史 ]
木の実や間伐材でクラフト展 [ 文化・歴史 ] 2018年10月03日「忠臣蔵の啓蒙と復興」テーマに月例勉強会 [ 文化・歴史 ] 2018年10月03日「失われた聖都」ペトラ遺跡の写真展 [ 文化・歴史 ] 2018年10月02日川柳赤穂吟社 21日に創立記念大会 義士祭奉賛学童書道展の作品募集 6地区の獅子舞競演に1200人 [ 文化・歴史 ] 2018年09月25日高校生が特大銅鐸復元にチャレンジ [ 文化・歴史 ] 2018年09月22日自筆の花押入り 山鹿素行の書状 [ 文化・歴史 ] 2018年09月22日山鹿素行の思想テーマに講演会 獅子舞6団体出演 24日に伝統文化祭 「坂越の嫁入り」神戸の企業が事業化 7部門66点入賞 16日まで市美術展 [ 文化・歴史 ] 2018年09月12日故粟田哲也さんの遺稿集『鉄弥と文芸作品』 [ 文化・歴史 ] 2018年09月01日ピアノ全国大会で金賞 元塩町の馬場未宙さん 赤穂小金管クラブが金賞 関西代表決定
コメントを書く