【社説】それぞれの立場で今できることを
2020年04月18日
新型コロナウイルスの感染拡大が未だ衰えない東京都では、感染疑いの救急患者を受け入れる医療機関がなかなか見つからず、たらい回しにされる事態が起こっている。また、各地で院内感染の発生もある。
兵庫県が4月7日に発表した対処(13日改定)では、「入院体制の強化」として、県立加古川医療センターを県内全域の患者に対応する「拠点病院」に、神戸市立医療センター中央市民病院及び県立尼崎総合医療センターを重症患者等に対応する「特定病院」にそれぞれ位置付け、100床程度の増床を図る。その他の感染症指定医療機関及び公的・公立医療機関等に病床確保を要請し、4月末までにさらに150床程度を確保。すでに確保済みの病床259床と合わせてトータルで500床を確保するという。
また、ホテルや宿泊施設を合計500室程度貸し切って医師・看護師などの医療体制を整備し、入院後の無症状者や軽症者の療養を行うとしている。
県の発表資料などによると、新型コロナウイルス感染者の情報は県対策本部内の「入院コーディネートセンター」で集約。症状に応じてセンターが入院先・療養先を調整する。基本的には、地元の医療圏域にある感染症指定医療機関(赤穂市の場合は姫路赤十字病院、赤穂市民病院)が受け入れ先となり、満床の場合は拠点病院が受け皿となる。重症者は特定病院へ搬送し、入院後の無症状者や軽症者は県が用意したホテル・宿泊施設へ収容―という流れになる。
医療崩壊を招いて多くの死者を出したイタリアを見ると、患者が集中した一部の医療機関で感染防護やゾーニング(非清潔区域と清潔区域の分類)が甘くなり、院内感染を引き起こした―との課題が見えてくる。一方、集団感染が広がったクルーズ船での船内活動に延べ2700人を投入した自衛隊は▽消毒▽ゾーニング▽手袋・マスクの正しい脱ぎ方などの基本を徹底したことで、隊員に一人の感染者も出さなかったという。
赤穂市内の医療機関も、▽施設内の消毒の徹底▽発熱待合を設けて他の患者との接触を回避▽防護服の着脱訓練などを実行し、感染予防に努めている。赤穂中央病院では入り口に発熱を自動検知するサーモグラフィーを設置し、37度5分以上の熱が感知された人はスタッフが別室に誘導する仕組みにしている。
また、慢性疾患の再診患者であれば来院せずに電話での診療で薬を処方する方式を導入した医療機関もある。さらに院内感染のリスクを減らすために、自家用車で来院した患者には診察順が近づくまで車内で待機してもらう「自車待合」を検討してはどうか。
感染者が急増したときに一部の医療機関へ負担が集中しないようにするために、臨時の発熱外来が必要になる場合がある。臨時外来の運営には地元医師会の協力は不可欠だ。県の対処方針でも、「各圏域における外来等受診状況を踏まえ、関係市町及び医師会等関係団体と協力して対応する」となっている。赤穂保健所によれば、「地元医師会と情報交換はしている」という。感染がまん延してからではなく、管内で感染者が出ていないうちに準備を進め、臨時外来が必要となった場合にすぐさま開設できるまで詰めておいてほしい。
医療関係者への取材の中では、「医療機関同士の情報共有が乏しい」「たまたま赤穂で感染者が確認されていないだけで、現場のスタッフはすでに相当なプレッシャーを抱えて従事している」といった声が聞かれた。こうした不安を少しでも取り除く態勢は取れないものか。
感染症指定医療機関である赤穂市民病院には特に負担がかかる可能性がある。医師や看護師でなくてもできる業務は別のスタッフに分担すべきで、そのための人手が足りないならば、緊急的措置として別の部署から職員をシフトすることも実行すべきではないか。余裕があるうちにレクチャーや研修を済ませておく必要がある。海外では一定の看護教育を受けた学生ボランティアに電話対応など感染リスクのない業務に限定して協力をお願いした病院もあるようだ。
市民一人ひとりには不要不急の外出自粛、手洗いと咳エチケットなどの予防対策が求められる。自分が感染しないこと、また、人に感染させないことが医療従事者の負担を減らすことに直結する。
それぞれの立場で今やるべきことに取り組むことが、新型コロナウイルスから地域を守ることにつながる。
掲載紙面(PDF):
2020年4月18日号(2368号) 1面 (3,938,178byte)
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兵庫県が4月7日に発表した対処(13日改定)では、「入院体制の強化」として、県立加古川医療センターを県内全域の患者に対応する「拠点病院」に、神戸市立医療センター中央市民病院及び県立尼崎総合医療センターを重症患者等に対応する「特定病院」にそれぞれ位置付け、100床程度の増床を図る。その他の感染症指定医療機関及び公的・公立医療機関等に病床確保を要請し、4月末までにさらに150床程度を確保。すでに確保済みの病床259床と合わせてトータルで500床を確保するという。
また、ホテルや宿泊施設を合計500室程度貸し切って医師・看護師などの医療体制を整備し、入院後の無症状者や軽症者の療養を行うとしている。
県の発表資料などによると、新型コロナウイルス感染者の情報は県対策本部内の「入院コーディネートセンター」で集約。症状に応じてセンターが入院先・療養先を調整する。基本的には、地元の医療圏域にある感染症指定医療機関(赤穂市の場合は姫路赤十字病院、赤穂市民病院)が受け入れ先となり、満床の場合は拠点病院が受け皿となる。重症者は特定病院へ搬送し、入院後の無症状者や軽症者は県が用意したホテル・宿泊施設へ収容―という流れになる。
医療崩壊を招いて多くの死者を出したイタリアを見ると、患者が集中した一部の医療機関で感染防護やゾーニング(非清潔区域と清潔区域の分類)が甘くなり、院内感染を引き起こした―との課題が見えてくる。一方、集団感染が広がったクルーズ船での船内活動に延べ2700人を投入した自衛隊は▽消毒▽ゾーニング▽手袋・マスクの正しい脱ぎ方などの基本を徹底したことで、隊員に一人の感染者も出さなかったという。
赤穂市内の医療機関も、▽施設内の消毒の徹底▽発熱待合を設けて他の患者との接触を回避▽防護服の着脱訓練などを実行し、感染予防に努めている。赤穂中央病院では入り口に発熱を自動検知するサーモグラフィーを設置し、37度5分以上の熱が感知された人はスタッフが別室に誘導する仕組みにしている。
また、慢性疾患の再診患者であれば来院せずに電話での診療で薬を処方する方式を導入した医療機関もある。さらに院内感染のリスクを減らすために、自家用車で来院した患者には診察順が近づくまで車内で待機してもらう「自車待合」を検討してはどうか。
感染者が急増したときに一部の医療機関へ負担が集中しないようにするために、臨時の発熱外来が必要になる場合がある。臨時外来の運営には地元医師会の協力は不可欠だ。県の対処方針でも、「各圏域における外来等受診状況を踏まえ、関係市町及び医師会等関係団体と協力して対応する」となっている。赤穂保健所によれば、「地元医師会と情報交換はしている」という。感染がまん延してからではなく、管内で感染者が出ていないうちに準備を進め、臨時外来が必要となった場合にすぐさま開設できるまで詰めておいてほしい。
医療関係者への取材の中では、「医療機関同士の情報共有が乏しい」「たまたま赤穂で感染者が確認されていないだけで、現場のスタッフはすでに相当なプレッシャーを抱えて従事している」といった声が聞かれた。こうした不安を少しでも取り除く態勢は取れないものか。
感染症指定医療機関である赤穂市民病院には特に負担がかかる可能性がある。医師や看護師でなくてもできる業務は別のスタッフに分担すべきで、そのための人手が足りないならば、緊急的措置として別の部署から職員をシフトすることも実行すべきではないか。余裕があるうちにレクチャーや研修を済ませておく必要がある。海外では一定の看護教育を受けた学生ボランティアに電話対応など感染リスクのない業務に限定して協力をお願いした病院もあるようだ。
市民一人ひとりには不要不急の外出自粛、手洗いと咳エチケットなどの予防対策が求められる。自分が感染しないこと、また、人に感染させないことが医療従事者の負担を減らすことに直結する。
それぞれの立場で今やるべきことに取り組むことが、新型コロナウイルスから地域を守ることにつながる。
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投稿:あこう 2020年04月27日コメントを書く