藩主献上の銘酒 昔ながら製法で新商品
2021年05月29日
『乙女』の新商品を手にする奥藤利文社長と益田美穂子さん
酒造りに必要な酒母を手作業で育てる昔ながらの製法で「きもと造り特有の酸味、まろやかで丸い口触り」に仕上がったといい、今月から新発売した。
奥藤家は坂越浦を拠点に廻船業で栄え、塩屋で酒蔵を営んだ豪商柴原家などとともに赤穂藩の蔵元を務めた。酒造りを始めたのは、江戸城松の廊下で刃傷事件が起こるちょうど100年前の慶長6年(1601)。豊穣の女神とされる櫛名田比売(クシナダヒメ)に由来する『乙女』の銘柄がいつ誕生したかは定かではないが、柴原家が書き残した古文書『年中用事控』(市指定文化財)には天明2年(1782)以降、家督を継いだ藩主への祝儀として柴原家の『八千代』とともに『乙女』の酒樽が代々献上された記録が残る。
柴原家は明治期に破産。かつて地元に複数存在した他の造り酒屋も姿を消し、赤穂市内に現存する酒蔵は同社だけとなった。昭和50年代に売り出した銘柄『忠臣蔵』が人気を集める一方、『乙女』の出荷量は減少。一時は廃番も考えたという。
そんな中、杜氏でもある奥藤利文社長(63)は、『年中用事控』の翻刻を進めている小野真一・市史編さん担当課長(59)から「殿様に献上した由緒ある銘柄を大切に」と言われたことがきっかけとなり、従来からある本醸造、原酒の2商品を残した上で新商品の投入を決意した。
「きもと純米」のラベルは同社の商品パンフレットを手掛けた清水町のイラストレーター、益田美穂子さん(59)に依頼し、櫛名田比売と稲穂の絵柄をあしらったデザインを採用した。精米歩合を55%まで高め、上品な香りが特長の「吟醸」も同時発売。こちらは鮮やかな瑠璃色の瓶に「乙女」の文字を赤く箔押ししたラベルを合わせた。
「コロナ禍で大変な時期だが、こんなときだからこそ、前を向いていきたい」と奥藤社長。「先祖が受け継いできた歴史を守りつつ、時代に合った銘柄に育てていくのが自分の務め」と気持ちを新たにしている。
「きもと純米」1287円、「吟醸」1518円(いずれも720ミリリットル入り)で主な酒販店、スーパーなどで販売している。同社Tel48・8005。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2021年5月29日号(2418号) 1面 (5,782,194byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
市小中学校連合音楽会 17日ハーモニーH 国重要無形民俗文化財「坂越の船祭」13日催行 獅子舞4保存会が熱い競演 [ 文化・歴史 ] 2019年10月08日給食センター監修「鶏肉のレモン漬け」たれ新発売 [ 商業・経済 ] 2019年10月05日山鹿素行のお話(10)素行先生の教えを全うした赤穂義士 [ 文化・歴史 ] 2019年10月05日繊細な色の重なり 和紙ちぎり絵展 [ 文化・歴史 ] 2019年10月02日「目指すは金賞」全日本吹奏楽コンクール [ 文化・歴史 ] 2019年10月01日獅子舞集う伝統文化祭 10月6日開催 ル・ポン国際音楽祭 会場変更で当日券販売 古布や古着リメイク 女性作家二人展 [ 文化・歴史 ] 2019年09月28日講座「渡来人の活躍と地域社会」 山鹿素行のお話(9)赤穂での著作と教育(その二) [ 文化・歴史 ] 2019年09月27日子どもたちが書道体験 「新しい発見を」樫本大進さん会見で抱負 樫本大進さんのCD一堂に 視聴も可
コメントを書く