藤井隆院長が陳謝 責任の取り方「市の判断に委ねる」
2022年03月27日
医療事故の被害者に対し陳謝した藤井隆院長=中央
藤井隆院長(65)は院長在任中に脳神経外科の同一医師によって多発した医療事故と悪化が進んだ病院財政について、「医療事故に遭われた方には大変申し訳ない気持ち」「このような経営状況になり、病院のトップとして申し訳ない」と陳謝した。
一連の医療事故から2年以上が経過した中、藤井院長が公の場で謝ったのは今回が初めて。医療事故と経営悪化の責任の取り方を問う記者の質問に「市の判断に委ねたい」と答え、自発的な引責の考えは示さなかった。
会見には病院の顧問弁護士を同席。医療事故発生後の対応、医療事故に関わった医師の採用経緯や服務不履行に関する質問の多くに「係争中」「個人情報」を理由に回答しなかった。藤井院長の説明を事務局長が否定して修正する場面もみられ、情報把握が不完全であることを露呈した。
新年度から院長に就任する高原秀典副院長(63)は「責任の重さに身の引き締まる思い。当院の経営状況は大きく悪化し、地域の皆様にはご心配をおかけしている。医療事故問題で当院への信頼を損ね、大変深く反省している。病院組織のガバナンスを強化し、再起を図りたい」と述べた。
記者会見での主なやり取りは次のとおり。
■医療事故への対応について
ー事故調査委員会の開催を院長が指示しなかったのはなぜか。
藤井隆院長「係争中の事例(医療事故8件のうち5件目とみられる2020年1月22日の手術)が医療安全部門が事故として初めて知った最初の患者だった。その患者の調査の過程で、過去にも手術後の経過が思わしくない、すぐれない症例が数例あることを確認した。それらをリストアップした時点で当該医師の手術をまず止め、研修を行った。外部調査等も行い、時間を要したために検証会議という形をとった。後日、8例に数例の追加を加えて、院内事故調査委員会を開催した」
ー訴訟になっている案件よりも早い段階で起こっていた医療事故について、院長は把握していなかったのか。
藤井院長「院長というか、医療安全が把握できてなかった。ということは、私も把握できてなかったのは事実」
ー事故調査委員会がルール通り行われていれば、その後の医療事故を防げたのではないか。
藤井院長「係争中の事案でもあり、コメントは差し控える」
ー事故調査委員会がルール通り行われなかったことについて市民に対して謝罪する気持ちはないか。
藤井院長「裁判の中で真実を明らかにして、その後にまた対応を考えたい」
ー事故調査委員会に準ずる検証会議を開いたとのことだが、それはいつ、何回、どういったメンバーで行われたか。
藤井院長「係争中の事案に関係するのでコメントは差し控える」
ー検証会議に脳神経外科の専門知識を持ったメンバーはいたのか。
藤井院長「いずれ明らかになると思うが、今は係争中で答えられない」
ー医療事故8件すべてで外部有識者による検証を受けたことは間違いないか。
藤井院長「係争中のことなので答えられない」
ー昨年12月に市民病院から発表されたニュースレポートで(すべてで外部有識者の検証を受けたと)書かれている。
藤井院長「回答できない」
ー外部検証をお願いした有識者は1人か。
藤井院長「裁判等で事実を説明するので、ここでは差し控える」
ー議会では、市長が「事故調査委員会は開かれていなかった」との答弁だったが、藤井院長は「開かれた」と言われた。食い違っている。
藤井院長「検証会議を開き、後日に8例に追加の数例を加えて事故調査委員会を開催した。市長がそれに触れなかっただけで、開いたのは事実だ」
ー議会の後に事故調査委員会を開いたということか。
喜多晃事務局長「2月24日と3月11日に開いた。議会答弁の時点では完結していなかった」
ー2回の会議で、8件プラス3件、計11件の事故について検証したということか。
藤井院長「8件はすでにやっているが、改めて正規のメンバーを揃えてやったということ」
ーこのタイミングで事故調査委員会を開いた理由は。
藤井院長「検証会議と整理をするという意味があった」
ー医療過誤1件、医療事故7件に変わりなかった。
藤井院長「そうだ」
ー新たに検証された3件については。
藤井院長「手術後に経過が思わしくなかった。明らかなミスではない。過誤ではない」
ー医療事故調査委員会の検証結果は市長に報告したか。
藤井院長「まだ報告できていない」
ー「係争中であるから回答できない」というのは、何か法的根拠があるのか。
浅田修宏弁護士「法的に禁じられているということはない。病院の現時点の判断として、裁判の中で事実を解明していきたいというスタンスだ」
ー一連の病院の説明で、市民の理解を得られると考えているか。
藤井院長「それは何とも答えられない。個人情報のことがあるし、守秘義務もあるので、答えられない」
ー退職後も一連の医療事故問題について調査協力を求められれば協力するつもりか。
藤井院長「もちろん協力を求められたら、協力しようと思っているが、既に資料は全部揃えており、一連の原因究明、再発防止、マニュアルの改定とある程度できたので、一区切りにはできたかなと思っている。係争中なので今後どういう展開になるか見ていきたい」
ー高原次期院長に伺う。4月以降、医療事故問題について、「藤井院長が退職されているので、今となってはわからない」というようなことはないと約束できるか。
高原新院長「係争が終結した暁には、会見を考えている」
■医療事故に関わった医師について
ー医療事故に関わった医師を採用した状況を説明してほしい。
藤井院長「個人情報に関することなので答えられない。採用のプロセスは通常通り。特殊な採用をしたわけではない」
ー医局の派遣ではなかった。
藤井院長「個人情報に関することなので回答を控える」
ー問題の医師について、副業違反など服務不履行の証言がある。把握していたか。
藤井院長「個人情報に関することになりますので、回答できない」
ー公務員の服務不履行は個人情報とは別の話だと思うが。
藤井院長「個人情報に該当すると市の弁護士に確認している」
ー副業違反があったのかなかったのか。
藤井院長「そのような噂があったということは聞いている。病院としては承知していない」
ー噂があったのであれば、事実確認しないのか。
藤井院長「個人情報に関するので回答できない」
■今後の取り組みについて
ー4月以降の体制について市長、事業管理者、院長の役割分担はどうなるのか。
藤井院長「病院を開設しているのは市長で、基本的には病院は別組織になる。全てを指揮命令する事業管理者が長期計画や予算、基本方針を決め、それを実行するのが院長。経営改善は事業管理者の指示を受けて院長が行う。2人に上下関係はあるが、協力することになる」
ー経営検討委員会が示した経営改善案の通り実行していくのか。
高原秀典新院長「数値ばかり先走ると職員のモチベーションが上がらない。セクションごとにやる気をもっていろんな意見が出るよう、気持ちをまず大事にしたい」
ー医療安全に関して開かれる外部有識者委員会は何について話し合うのか。
藤井院長「事故等の検証、医療安全システムの改善点を検証する。医療事故が過誤かどうかの判断も、ある程度していただけると考えている。現在その作業を進めているが、現時点ではこれ以上のことは申し上げることはできない。当院では(すでに認めている8件の医療事故の他に)あと3例ほどリストアップしている」
ー医療過誤、医療事故によって失墜した市民病院の信頼、低下した医療従事者のモチベーションをどのように回復するのか。
高原新院長「確かに市民の信頼は失墜しているように感じている。病院のガバナンス、セーフティマネジメントも含めてコンプライアンスをしっかり発揮できるような組織を作り上げる。職員のモチベーションに関しては、いろんな職場に行って前向きな姿勢を示そうと思っている。どんな小さなことでも改善できるよう職員から提案があればどんどん採択して実行していきたい」
■責任の取り方
ー藤井院長は退職後は。
藤井院長「臨床医を続けたいと思っている。内定段階で、契約はしていない」
ー退職金の返納など、何かけじめをつける気持ちはないか。
藤井院長「経営責任とか管理監督責任、医療安全を含めて責任は感じている。公務員なので、市の判断に委ねたい」
ーそういう気持ちがあれば、自ら明らかにすべきだと思うが。
藤井院長「市の判断に委ねたいと思っている」
ー自主的な返納はするつもりはないということか。
藤井院長「あくまで市の判断に委ねたいと思っている」
* * *
「今後の取り組みについて」のやり取りに、4月以降の体制の役割分担に関する質問と回答を追記しました。(2022年3月29日7時45分)
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関連サイト:
【関連記事】会見有無「僕から答えるべきでない」
掲載紙面(PDF):
2022年4月2日号(2457号) 1面 (9,501,397byte)
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コメント
58 1
投稿:無作為さん 2022年03月30日そんな論法が通用すると思っておられるのか、市長さん。
事業管理者を任命するのは、市長さんですよね。
65 3
投稿:使用者責任 2022年03月29日59 3
投稿:市民のひとり 2022年03月29日「病院を開設しているのは市長で、基本的には病院は別組織になる。全てを指揮命令する事業管理者が長期計画や予算、基本方針を決め、それを実行するのが院長。経営改善は事業管理者の指示を受けて院長が行う。2人に上下関係はあるが、協力することになる」
赤穂市民病院では1991年以降、事業管理者を置かず、市長がその権限を代行していますので、上記の病院の回答にあてはめれば、「事業管理者の権限を代行する市長が長期計画や予算、基本方針を決め、それを実行するのが院長」ということになろうかと思います。
したがって、元々の長期計画や予算、基本方針がまずくて経営が悪化したのであれば市長の責任でしょうし、計画や予算に問題はなかったけれど、それを実行できなかったというのであれば院長の責任となるのではないでしょうか。
15 53
投稿:赤穂民報 2022年03月29日56 4
投稿:教えて民法さん 2022年03月28日地域医療を支えているという立場で、どれほど病院に医療サービスについて裁量があるのか存じませんが、医療従事者にそれを問うのは酷に感じます。
結局は、地域医療をどうしたいか、どれだけの予算をかけるのか、という行政の問題に感じるのですが…我々市民の感覚も問われている気がします
57 10
投稿:一市民 2022年03月28日もっと聞くべきは経営問題にしろ医療事故問題にしろ、責任の所在についての認識と今後の対応についての展望を聞き出すことが記者として最重要でしょう。せっかくの記者会見が一人の暴走した質問の連発で雰囲気も時間も台無しです。
86 5
投稿:聞き苦しい 2022年03月27日記事だけ見れば医療事故に関する記者会見ですが、院長の交代がメインの会見なので事務方が同じように座るのは違和感がありますが。
10 27
投稿:ナースX 2022年03月27日ただ、事務長?なんで、司会進行役なんでしょうか?あなたも、院長に横に並んで座って、報道陣に説明責任を果たす立場ではないでしょうか?何様なんですか?人事ですか?
大津市民病院のパワハラ問題でも明らかなように、、事務長始め事務方の無責任で、ずさんな運営が、この劣悪な医療事故を引き起こしたとはいえないでしょうか。じっくりと追求していく必要がある問題です。
追記 藤井先生、長年、地域医療に従事していただき、ご苦労様でした。高橋先生、最先が大変ですが、頑張ってください。
28 20
投稿:ドクターZ 2022年03月27日22 66
投稿:大久保彦左衛門 2022年03月27日16 20
投稿:市民 2022年03月27日市が何も処分できない事を見越した発言ですね。
「経営責任とか管理監督責任、医療安全を含めて責任は感じている」とおっしゃるのなら、その責任を目に見える形で自ら取って下さいますか。
通常は引責辞任すべきなんでしょうがどっちみち定年退職されるということですので、退職金の返納が最も適した責任の取り方と思います。
35 73
投稿:最後の最後まで無責任過ぎる 2022年03月27日83 31
投稿:赤穂在住 2022年03月27日コメントを書く