「改正でなく改悪」業界関係者が語る郵便入札の問題点
2008年08月09日
公共工事の入札機会の公平性を確保しようと、赤穂市が平成18年10月から導入している「郵便応募型条件付き一般競争入札制度」(以下郵便入札)について、業界から不満の声が上がっている。「コスト削減にもつながり、工事の品質も従来通りのレベルを確保できる」(市)と“いいことづくめ”だったはずの郵便入札。匿名を条件に、その実状と問題点を業界関係者が語った。
* * *
市は業者を選べない
―今の郵便入札にどんな不満があるのか
業者A「原油高などの影響で物価が急上昇しているのに、工事に充てる予算は財政難でどんどんカット。設計価格と実勢価格のギャップが大きすぎる」
業者B「郵便入札で落札した工事で『儲かった』という業者はいない。まともな工事をしていないところは別だが」
―「まともな工事をしていない業者」とは?
業者C「例えば、技術者も設備も持たないペーパーカンパニー。マージンだけ取って、下請けに丸投げしている」
A「下請け業者はどだい無理な金額でやらされているから、まともな工事はとうていできない」
B「背中に模様が入っているような人間が現場で働いていると聞いた」
C「そういう下請けはほとんど市外の業者。赤穂市の税金がそれだけ市外に流れてしまっているということでもある」
A「業者は入札する工事を選べるが、市は業者を選べない。そこが大きな問題点の一つだ」
* * *
検査体制も万全でない
―市は「検査によって工事の品質は確保できている」としている
A「赤穂市の検査係は2人。その人員ですべての工事をチェックするのは無理がある」
C「検査のやり方に不公平を感じる。旧来からの業者には厳しくチェックするのに、いわゆる“ややこしい”業者が相手だと口をつぐんでいるのでは」
B「従来は市と業者の間に『いいものを作ろう』という共通の思いがあった。適正な利潤もあったから、手抜きするどころか、設計書にない部分もサービスで工事していたぐらい。でも今はそんな気になれない」
C「土木はともかく、建築については知識を持たない職員が検査している。使った材料の数量をチェックするぐらいで、検査とは名ばかりだ」
* * *
変えてほしい上層部の意識
―手抜き工事があった場合、なぜその業者にやり直しを命じないのか。
C「ややこしい業者にかかわりたくない―とびびっているのだろう」
B「その責任を現場担当者だけに負わせるのは酷。一番大事なのはその上司、ひいては市長ら上層部が厳しく姿勢を打ち出すかどうかだ」
A「最低制限価格が低過ぎる。行革に積極的といわれる長野県や宮崎県でも予定価格の8割以上なのに、赤穂市は7割を切っている場合もある」
―それでも入札するのは利益が出るからなのでは?
A「さっきも言ったように郵便入札で利益が出る工事なんてない。会社の経費だけでも、従業員の給料だけでも、いや、給料の半分だけでも確保しなければ―との思いで札を入れている」
C「どの業者も“自転車操業”。漕ぐのを止めたら倒れる」
* * *
見切り発車のひずみ随所に
―ルールに問題点はないか
B「最低制限価格の設定が不透明。市は『工事の難易度などを勘案して決定している』と言っているようだが、そのようには見えない」
A「不良業者を排除できない点も含めて、郵便入札を先行実施している自治体ですでに表面化していた問題についての対策がまったくないままに導入してしまったのがよくなかった」
C「郵便入札は、当初は平成19年春から導入する予定だった。しかし、例の汚職事件で警察の捜査が始まり、無策を追及されるのを怖れた市があわてて半年前倒して導入したと聞いている」
B「結局は役所の“責任逃れ”だったということか」
* * *
今のままではむしろ「改悪」
C「談合防止の目的もあったはずだが、入札参加させないように他の業者に圧力をかけている輩がいるのが実態。愛知県瀬戸市では類似の事案で逮捕者が出ている。赤穂でも問題にすべきだ」
B「郵便入札が始まり、公共土木を専門にやっていた業者は市内から残らず消えた。今のままの制度が続くと、善良な業者が先につぶれて、後に残るのは粗悪な不良業者だけになるだろう。それが赤穂のためになるとは思えない」
A「ちゃんと技術者を置き、従業員も雇用し、適正な工事をこなす業者同士が切磋琢磨できる入札制度を実現してほしい」
C「落札率など表面上の数字だけでの判断は無意味。粗悪な工事で修繕が必要になるほうがよほど高くつく。その上、まっとうな業者がつぶれて雇用機会が失われる。市は『何が市民のためになるのか』ということをよく考えるべきだ」
A「こういった話を一般市民のみなさんがどのように感じるかわからないが、今の制度が万事うまくいっているとは決して言えないことを知ってほしい」
掲載紙面(PDF):
2008年8月9日(1807号) 1面 (7,668,174byte)
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市は業者を選べない
―今の郵便入札にどんな不満があるのか
業者A「原油高などの影響で物価が急上昇しているのに、工事に充てる予算は財政難でどんどんカット。設計価格と実勢価格のギャップが大きすぎる」
業者B「郵便入札で落札した工事で『儲かった』という業者はいない。まともな工事をしていないところは別だが」
―「まともな工事をしていない業者」とは?
業者C「例えば、技術者も設備も持たないペーパーカンパニー。マージンだけ取って、下請けに丸投げしている」
A「下請け業者はどだい無理な金額でやらされているから、まともな工事はとうていできない」
B「背中に模様が入っているような人間が現場で働いていると聞いた」
C「そういう下請けはほとんど市外の業者。赤穂市の税金がそれだけ市外に流れてしまっているということでもある」
A「業者は入札する工事を選べるが、市は業者を選べない。そこが大きな問題点の一つだ」
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検査体制も万全でない
―市は「検査によって工事の品質は確保できている」としている
A「赤穂市の検査係は2人。その人員ですべての工事をチェックするのは無理がある」
C「検査のやり方に不公平を感じる。旧来からの業者には厳しくチェックするのに、いわゆる“ややこしい”業者が相手だと口をつぐんでいるのでは」
B「従来は市と業者の間に『いいものを作ろう』という共通の思いがあった。適正な利潤もあったから、手抜きするどころか、設計書にない部分もサービスで工事していたぐらい。でも今はそんな気になれない」
C「土木はともかく、建築については知識を持たない職員が検査している。使った材料の数量をチェックするぐらいで、検査とは名ばかりだ」
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変えてほしい上層部の意識
―手抜き工事があった場合、なぜその業者にやり直しを命じないのか。
C「ややこしい業者にかかわりたくない―とびびっているのだろう」
B「その責任を現場担当者だけに負わせるのは酷。一番大事なのはその上司、ひいては市長ら上層部が厳しく姿勢を打ち出すかどうかだ」
A「最低制限価格が低過ぎる。行革に積極的といわれる長野県や宮崎県でも予定価格の8割以上なのに、赤穂市は7割を切っている場合もある」
―それでも入札するのは利益が出るからなのでは?
A「さっきも言ったように郵便入札で利益が出る工事なんてない。会社の経費だけでも、従業員の給料だけでも、いや、給料の半分だけでも確保しなければ―との思いで札を入れている」
C「どの業者も“自転車操業”。漕ぐのを止めたら倒れる」
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見切り発車のひずみ随所に
―ルールに問題点はないか
B「最低制限価格の設定が不透明。市は『工事の難易度などを勘案して決定している』と言っているようだが、そのようには見えない」
A「不良業者を排除できない点も含めて、郵便入札を先行実施している自治体ですでに表面化していた問題についての対策がまったくないままに導入してしまったのがよくなかった」
C「郵便入札は、当初は平成19年春から導入する予定だった。しかし、例の汚職事件で警察の捜査が始まり、無策を追及されるのを怖れた市があわてて半年前倒して導入したと聞いている」
B「結局は役所の“責任逃れ”だったということか」
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今のままではむしろ「改悪」
C「談合防止の目的もあったはずだが、入札参加させないように他の業者に圧力をかけている輩がいるのが実態。愛知県瀬戸市では類似の事案で逮捕者が出ている。赤穂でも問題にすべきだ」
B「郵便入札が始まり、公共土木を専門にやっていた業者は市内から残らず消えた。今のままの制度が続くと、善良な業者が先につぶれて、後に残るのは粗悪な不良業者だけになるだろう。それが赤穂のためになるとは思えない」
A「ちゃんと技術者を置き、従業員も雇用し、適正な工事をこなす業者同士が切磋琢磨できる入札制度を実現してほしい」
C「落札率など表面上の数字だけでの判断は無意味。粗悪な工事で修繕が必要になるほうがよほど高くつく。その上、まっとうな業者がつぶれて雇用機会が失われる。市は『何が市民のためになるのか』ということをよく考えるべきだ」
A「こういった話を一般市民のみなさんがどのように感じるかわからないが、今の制度が万事うまくいっているとは決して言えないことを知ってほしい」
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