創作きりえ昔話・潮吹き穴と赤穂の塩(四)
2016年04月23日
それから毎日、その洞窟に行って、崩れ落ちた岩や石を運び出すことを始めた。大きな岩は、砕いて、小さくしてから運び出すのだ。一人の力で運び出せる大きさにして、背中に背負ったカゴにいれ、一つ一つ、運び出していったのだ。それでも、他の男よりも、力持ちだったので、倍くらいの大きさのものを運んで行けたのだ。
夜明けとともに、まずは、千種川に行き、鯉やフナ、鮎や川エビを捕って村で売って歩いた。時には、ウナギも捕りに出かけた。
昼間は、毎日のように、潮吹き穴のある海岸に行き、石や土を運んでいった。なにしろ、海岸は石がゴロゴロしていて、歩くのもままならない。そんな場所で、重い石
を運ぶのは、大変な作業だった。
だから、大きな石は、小さく砕かなければならない。この作業に時間がかかったのだ。大きな石は、なかなか砕けるものではない。毎日毎日、来る日も来る日も、大きな石と戦っていった。
運び出す石は、近くの海岸には置けない。なぜなら、せっかく捨てた石が、潮吹き穴の洞窟に転がって来たら困るので、少し離れた海岸まで運ぶしかないのだ。その海岸は、遠浅だったので、少し沖に出て、運んできた石を積み上げていった。潮が引いているときには、簡単に運び込めたが、潮が満ちてくると海の中まで入って行かなければならなかった。
毎日毎日、雨の日も、風の日も、夏の日照りの中でも、寒い冬の日でも、こつこつと運び続けた。(作・切り絵 村杉創夢)
* * *
▽村杉創夢=30歳ごろから趣味の切り絵を始め、歳時記や風景を題材に通算40回の個展を開催。自宅に「村杉きりえギャラリー」を開設し、オリジナルの物語に切り絵を組み合わせた「創作むかしばなし」の制作にも取り組む。東京都町田市在住(赤穂市出身)、71歳。
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掲載紙面(PDF):
2016年4月23日(2182号) 4面 (10,729,577byte)
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