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赤穂の昔話・第12話「狐の頭巾」

 2020年03月14日 
 
 むかし、回船問屋で大地主だった尾崎の柳田家では、広い屋敷内にお稲荷さんをおまつりしておりました。
 いつからとなく、一匹、また一匹と大勢の狐が住みつき、次々と子供を生みました。やがて冬が訪れ、元気に跳び回っていた子狐たちも寒さにふるえて遊ばなくなりました。
 これを見たお母さん狐は人間に化けて尾崎から千種川の橋を渡り、加里屋の呉服屋に出掛け、子供用の頭巾を子狐の数だけ買いました。
 「尾崎の柳田や。つけといてっか」
 呉服屋の主人は、たくさん買ってもらえたので大喜びです。
 お母さん狐は頭巾を大切に抱え、とんで帰りました。そして、ふるえている子狐たち一人一人に頭巾をかぶせてやりました。
 「さあさあ、これで寒くないやろ。はよう遊べ、はよう遊べ」
 子狐たちは元気に跳び回りました。
 それから何日かが過ぎ、呉服屋の主人が柳田家に集金に来ました。
 「おかみさん、この間はぎょうはんの頭巾を買うてもらいまして、ほんまにありがたいことだした。きょうはお代をもらいに来ましたんや」
 ところが、柳田家では誰も頭巾を買った心当たりがありません。呉服屋の主人は困ってしまいました。
 「たしかに、尾崎の柳田だすと、女の人が持って帰られましたんや。わしは、うそを言わしまへん。ほんまだす」
 柳田の主人が「加里屋で頭巾を買うたものは出てこい」と叫ぶと、なんと赤い頭巾をかぶった子狐たちがぞろぞろと出てきました。呉服屋の主人は驚きました。
 柳田の主人は呉服屋の主人と顔を見合わせ、「動物でも、子供を思う親の愛情は人間と同じ」と感心し、快く代金を支払いました。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第二集』・「狐の頭巾」より)
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掲載紙面(PDF):
2020年3月14日号(2363号) 3面 (6,109,476byte)
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