絵図や古文書で振り返る「播州赤穂の塩づくり」
2020年11月19日
天明6年(1786)の「赤穂沖付洲新開場絵図」=前川良継氏蔵
同館によると、赤穂では古代から土器を用いた製塩が行われ、平安時代後期には海水を人力で汲み上げてまく汲潮浜塩田が導入、鎌倉時代中期ごろには潮の満ち引きを利用して海水を引き込む古式入浜塩田が始まったと推定される。浅野家時代に東浜(千種川東岸)、森家時代に西浜(同川西岸)の開拓が進み、赤穂の塩田面積は400ヘクタール余りに拡張。幕末期の生産量は35万石で、全国の塩の生産量の約7%を占めた。昭和30年ごろから流下式、同47年からはイオン交換樹脂膜法による工場製塩に移行し、現在も連綿と塩づくりが行われている。昨年5月、「『日本第一』の塩を産したまち 播州赤穂」のストーリーが日本遺産に認定された。
今展では、山陽自動車道赤穂インター近くの堂山遺跡で出土した弥生時代末期〜奈良時代(3〜8世紀)にかけての製塩土器、塩田からの年貢を記した池田家時代の検地帳、昭和20年代前半に作製された赤穂南部の塩田図といった資料や絵図、古文書など85件を▽古代〜中世▽近世(江戸時代)▽近代(明治〜昭和)の時代ごとに展示。主な出来事を年表にまとめ、赤穂の塩田開発や技術革新、流通などのあゆみを回顧する。
貞享元年(1684)に加里屋の大年寄から仙台・本吉郡志津川村の庄屋に宛てた書状は、加里屋から仙台に派遣した浜大工の給金を取り決める内容で、赤穂流の製塩法が仙台に伝えられたことを示す。また、文政4年(1821)の文書には赤穂塩の販路の7割が江戸、2割が大坂、1割がその他地域だったことなどが記されている。
浅野家時代の検地帳には検地役人の中に後年に吉良邸討ち入りに参加する吉田忠左衛門、不破数右衛門の名も見える。「播州赤穂郡坂越浦漂流人外国咄聞書覚」は、安政5年(1860)に鹿島灘(茨城県〜千葉県沖)で遭難して約1か月後にフィリピンに漂着し、1年後にイギリス商船で帰国した赤穂の塩廻船「光塩丸」の見聞記。鎖国下の当時では大変珍しい海外の様子がわかり、興味深い。「赤穂塩田写真帖」は昭和3年から22年まで専売局赤穂出張所の技官だった故山本近蔵氏旧蔵の写真帖で塩田での作業工程写真39枚を収録。写真に書き添えられている解説文とともにパネルにして展示する。
「かつては製塩・流通から俵や叺などの梱包資材の製造まで、赤穂の多くの人々が携わり、生活を支えていた。また、塩田跡の広大な敷地はその後工場用地や宅地として活用され、現在の赤穂に豊かさをもたらしている」と同館学芸員の木曽こころ係長。「赤穂南部の歴史は塩業無しに語れない。塩づくりの歴史を振り返ることは、自分が住んでいる地、先祖の歴史を振り返ることにもなるのでは」と展示の意義を話している。
来年1月19日(火)まで午前9時〜午後5時(入館は4時半まで)。水曜と12月28日〜31日、1月4日は休館。入館料300円(小・中学生150円)。Tel43・4600。
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2020年11月21日号(2393号) 4面 (9,473,567byte)
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