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【寄稿】福祉活動に込められた殿下の“想い”(下)

 2012年06月30日 
柏朋会の会合での寛仁親王殿下=平成20年ごろ、宮邸で
 巷にあふれる「障害者」と「健常者」という二元的な捉え方を、「厚生行政や医療の分野の言葉で、我々の実生活には馴染まない」と否定された。そして、「医学的・精神的・社会的・経済的・学問的な面からみて、さらには、運動能力や事務能力が果たして健常であるのか、障害を特っているのかを再考し、51%の健常部分が発見できれば安心すればよく、49%しか見い出せないのなら、即刻リハビリテーションを始めることが必要」とする「部門別福祉の考え方」を活動の柱とされた。ここには、健常・障害にかかわらず、「一人ひとりが真の意味で強者になって欲しい」との殿下の想いが込められている。
 さらに、「社会福祉というのは、大上段に振りかぶって考えてはならない」とされた。「一人ひとりの身近な日常生活の中で、簡単な手話や点字を学び、車椅子や松葉杖や白杖へのヘルプの方法を覚え、特別視することなくごく普通にお付き合いすること」を基本とし、「思い遣り」の気持ちだけを持って、「共に生きる」ことを考えることが大切だと強調された。
 このような福祉の在り方を、「身の丈にあった」とも、また、「さりげない」とも表現された。特に、「さりげない」という言葉をこよなく愛され、「愛・地球博」においては、『さりげなく、もてなす心』が、国内外のあらゆる人々を迎え入れるにあたってのキーワードともなった。
 第一回目の食道ガンの大手術、その後も、繰り返された手術によって、ついには、声までも失われたが、懸命にボイストレーニングを積まれ、バイブレーター(人工音声器)を利用しながら、会の活動を継続された。
 常に、福祉の現場監督として行動することを信条とされていたことから、話すこと・行動することの両面での大きな制約を口惜しくお思いであったことは、想像に難くない。
 しかし、症状の詳細な説明はされても、それが如何に大変な忍耐と努力を必要とされるかについては、多くを語ることもなく、毅然として、福祉活動に取り組まれるお姿は、今も脳裏に焼き付いている。
 余りにも大きな存在を失い、今は、『ラストサムライ』のあのシーンのように、深く、深く、ひざまずき、ただただ、涙するのみである。
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【関連記事】福祉活動に込められた殿下の“想い”(上)


掲載紙面(PDF):
2012年6月30日(1996号) 3面 (10,233,638byte)
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