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関西福祉大学リレーコラム・送るときは盛大に、心を心遣いに

 2016年03月26日 
 春は別れの季節でもあり、出会いの季節でもあります。「送るときは盛大に、迎えるときは質素に」これが私が教わってきた、別れと出会いの儀式のもち方です。
 4月の始め、新しく赴任してこられた先生方とは会議室での昼食会で自己紹介をし合うくらいで済ませますが、これまでおられた先生方とのお別れの会は、夜に場所を変え、思い出話に花を咲かせながら盛大にします。もちろんこれには、新しく来られた先生方も参加されます。
 私は、心に残る素敵なお別れの式に参加したことがあります。鹿児島市のY小学校ですが、この学校は退職をされる校長先生の最後の赴任校になる学校です。
 お別れの式は、3月31日の夜の12時前から始まりました。運動場の朝礼台に車のヘッドライトの光を集め、校長先生がされる教師生活最後の話をみんなで聞くのです。みんなとは、現教職員だけでなく、旧教職員、在校生、お母さんやお父さん、さらにこの学校でかって学んだというおじいさんやおばあさん、これから学ぶであろう小さな子もいました。
 この学校に縁のある地域の人が集まり、校長先生にこれまでの教育活動への感謝の気持ちを表すのです。校長先生にとっては、これが最後の話です。感極まっているのは校長先生だけでなく、集まっているみんなも同じです。話が終わったら、みんなで校門の所に並び、校歌を歌いながら拍手とともに送るのです。私は、その年の秋にこの学校で実践研究のお手伝いをした折にこの式のことを聞き、勝手に駆けつけたのですが、本当に感動しました。
 これは、今の感謝の気持ちを伝えるだけなく、これから大人になる子ども達に、お世話になった人にはこのようにして感謝の気持ちを表すんだよ、と身を以て教えているわけです。
 思いは見えないけれど、思いやりは見える。心は見えないけれど、心遣いは見える。このようにして心のなかを表出する仕方を教えていくのです。心の中はまだ十分に育っていなくても、このようにしていっしょに行動することによって、だんだんと心が伝わり、心の中に大切なことが育っていくものです。
 子どもがいけないことをしたら、お母さんといっしょに謝りに行く。お母さんがあんなに謝っている姿を見て、子どもは大好きなお母さんを悲しませてはいけない、謝らせてはいけないと学んでいくのです。このような経験が、道を踏み外しそうになったときに踏み留まるバックボーンになります。そういえば、私も母といっしょに謝りに行ったことがありました。
 是きりでもうないぞよと母は出し。さればとて石碑にふとんも着せられず。もう母は亡くなりましたが、もっと親孝行をしておくべきだったと後悔しています。(学長・加藤明)
 * * *
 ◎お知らせ=本コラムの執筆は次回から看護学部の前川泰子准教授が全5回の予定で担当されます。基礎看護、看護技術、ヘルスケア情報を専門とし、認知症ケアや高齢者見守りなどを研究しておられます。お楽しみに。赤穂民報社
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掲載紙面(PDF):
2016年3月26日(2179号) 3面 (10,784,422byte)
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