坂越出身の日本画家が絵本
2013年03月16日
日本画画業30年で初めて絵本作画を手掛けた赤穂出身の日本画家、後藤仁さん
創刊50年以上の歴史を持つ月刊絵本『こどものとも』の3月号。水不足に悩む貧村で暮らす主人公の少女・チャンファメイが自らの犠牲をいとわず村に水をもたらすストーリーで、中国文学・民話研究の第一人者である君島久子氏=国立民族学博物館名誉教授=が再話した。
作画に当たり、後藤さんは民話のモデルとされるトン族が暮らす貴州省と広西チワン族自治区の集落を10日間かけて巡り、家屋や衣服など生活様式を詳しく観察した。君島氏、編集者と何度も打ち合わせながら進めた下絵作りに3年かけた。岩絵具、箔、にかわなどを画材に伝統的な日本画技法で原画約20枚を仕上げ、君島氏から「髪の毛のひと筋ひと筋に描きこまれた絵師の魂が躍動している」と評された。
小1の夏まで坂越で生まれ育ち、13歳で画家を志した後藤さんは大阪市立工芸高校を首席で卒業し、東京藝大へ。大学3年の写生旅行で訪れたインドネシアで伝統舞踊を舞う女性の神秘性に強いインスピレーションを受け、アジア各地の少数民族の女性を描くようになった。
初めて手掛けた絵本の仕事は「協力して作品を仕上げる面白さ、個々の絵が絵物語にまとまるやりがい」があり、これまで経験したことがなかった子どもたちからの反響に新鮮な刺激を受けた。現在制作中のチベット民話の絵本は今秋に岩波書店から出版されることが決定。「ゆくゆくは日本の民話を描きたい」と抱負を語る。
日本画の道を歩み始めてから今年で30年。転居後も度々帰省した赤穂の豊かな自然が「子供時代の私の感性を大いに刺激した」と振り返る。「その記憶は今も鮮明に残り、制作の最も大きな原動力になっている。いずれは故郷でも個展を開きたい」と話している。
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掲載紙面(PDF):
2013年3月16日(2030号) 1面 (9,625,450byte)
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