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緞通図面の裏打紙に帳簿資料

 2014年06月14日 
裏打紙に帳簿が貼られていることがわかった赤穂緞通の図面
 かつて新浜村(現在の赤穂市御崎)で赤穂緞通の工場を経営していた男性の親族から市へ寄贈された緞通図面の裏打紙に、製造管理や織子の賃金などを記帳した帳簿類が貼り付けられていることが市立歴史博物館(冨永恵一館長)の調査でわかった。
 赤穂緞通関連の帳簿はこれまで一点も確認されておらず、解読を担当した木曽こころ学芸員は「製造現場の一端をうかがえる資料で大変貴重」とし、調査結果をまとめたレポートを『赤穂の文化 研究紀要』第7号に発表した。
 寄贈者は、大正4年に「新船緞通」を創業した新船善平氏の孫、岡崎佳世さん(61)=御崎=。緞通工場だった建物を改修した自宅の納戸で綿糸や染料と一緒に木箱に納めて保管されていた図面を見つけた。「公的に活用してほしい」と、「赤穂緞通を伝承する会」を通して平成21年度と24年度に2回に分けて寄贈した。
 図面は全部で221点あり、約9割に当たる203点が赤穂緞通のものとわかった(残りの18点は堺緞通)。図面を補強するための裏打紙に色名や金額を墨書した文字があるものが20点余りあり、同館が解読を進めた結果、染物業者との間で交わした通い帳、織子の賃金台帳など5種類の帳簿が断片的に貼り付けられていることが判明した。
 通い帳(大正4年〜8年)からは、一回当たり20綛(1綛は60匁=225グラム)程度の注文が多いことが読み取れた。同時に染めなければ同じ色には染め上がらないため、必要な量だけ発注していたと考えられる。注文している色の種類は濃紺、浅葱、水色など藍系ばかり。「粟井」の領収印があり、以前に同館が昭和初期の織子から聞き取った「藍系の染めは尾崎の粟井という紺屋に出していた」との証言を裏付けた。
 賃金台帳には文様名、織り賃、織子の名前などが記入してあった。複雑な文様ほど報酬が高いのはもちろん、同じ文様でも多少の幅があり、出来高払いの賃金制度だったことがうかがえる。「キヌ」という文字の記載があるものは1・8倍の賃金が支払われており、「挟せ糸に通常の木綿ではなく、絹を用いた高級緞通が作られていたのだろう」(木曽学芸員)と推定。また、織り始めと織り終わりの日付を記したとみられる製造管理台帳からは、大半が一枚6〜12日間で織り上げられていることがわかった。
 緞通図面は方眼紙の升目を文様に沿って着色したもの。緞通が盛んに織られていた時期には各工場に多くの図面があったはずだが廃業後に処分され、過去に現存確認した赤穂緞通の図面はわずか2点しかなかった。岡崎さんから寄贈された図面には、これまで知られていなかった文様が35種類含まれ、一部虫食いがあるものの保存状態は比較的良好。木曽学芸員は「図面と帳簿の二重の価値がある。得られた情報を基に、さらに多方向から考察を加えたい」と話している。
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掲載紙面(PDF):
2014年6月14日(2091号) 1面 (8,314,867byte)
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