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山鹿素行のお話(3)素行先生、文武両道の研鑽

 2019年07月27日 
 山鹿素行は林羅山の門下生となり、和漢の書を片端から読破し15歳の時には大勢の人の前で儒教の代表的な「大学」を講義するほどに成長します。また、詩や文章を作る能力にも優れ、漢詩や書本の解説書を数多く著作しています。
 それと同時に、素行は文武両道に励むことこそがさむらい侍の務めと考える厳格な父親から剣術を幼少期から教えられていましたが、15歳になると兵法家の小幡景憲と北条氏長などから兵学を本格的に習い、21歳で兵法免許状を取得するまでになったのです。
この頃までに素行は兵学以外にも廣田坦斎から忌部神道と和学を教わり、源氏物語、伊勢物語、枕草子、万葉集などの主要な国文学の古典を読み漁り、注釈書を執筆したり、老荘思想(道教)や禅宗などの仏教までも勉強し、あらゆる学問をマスターしたスーパーコンピューター並みのずば抜けた才能の持ち主となりました。
 そして、素行は結婚すると、父親の口癖だった武士の誇りを重視しこれまで学んだ幅広い知識をベースに、兵学者として身を立てる決心をします。素行の兵学は、過去の大きな決戦における敵味方双方の陣形・陣容を克明に表し、その長短所を論ずる実践的なものですが、素行の講義は、それに儒教と老・荘の道教、並びに仏教も到達する道はみな一つとする三教一致(おのれの心を空しくして、物欲をとれば、天地と我とは一つになり、天下万物の理は高く明らかになり、何事にも通じ、滞ることのない不動智の境地に達する=決戦の勝敗を決断する時の心構え)の学説を交えるので、大名や旗本らの人気を集め、三千人ほどの門下生が集まりました。 
 当時、同じ程の門弟を抱える兵学者に由井正雪がいましたが、正雪は覇権的な革命思想を抱いていて社会の組織や政治機構が悪いとしたのに対し、素行は社会や政治をよくするのには、為政者が自ら天道人倫を正して、世の中を治めるべきと道徳主義を唱えた点が違います。結果的に由井正雪は、武力蜂起しようと計画しましたが事前に密告され計画は頓挫し正雪は自害する羽目になり、多数の浪人が徒党を組んで暴動を引き起こそうとした影響は山鹿素行にも及び、赤穂藩への仕官に繋がって行くのです。由井正雪の乱がなければ素行が赤穂に来ることもなかったかも知れません。世の中、何がどこに影響するか分からず面白いものです。(つづく)
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掲載紙面(PDF):
2019年7月27日号(2334号) 4面 (11,568,091byte)
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